第9話 偶然の当り

-Evan-



「まず君の部屋へ案内するよ」


 ということで広場を出て城の奥へと足を進めている。

エドワードは竜共に炎属性らしく、その橙色の瞳がよく似合う男だ。


「騎士団本部は講堂奥の左右の扉から繋がっていて、どちらから通っても行きつく先はさっきの大広場。講堂をまっすぐ進んで階段を昇るとワイアット城の王室ね。

まぁ普通は上級以上しか城に入ることは許されていないけど、これから一カ月は俺と一緒なら入れるから、覚えておいてね」


 だだっ広い大広場の一番奥の扉を通り進むとまた大きい部屋に辿り着いた。


「ここは君たち仮入団の人たちや下級の団員が使ってる大部屋が壁に沿って区切られてる。君は入って右手の一番奥ね。ベッドは空いているところを使うといいよ」


 エドワードの言う通り、左右の壁に沿って部屋が区切られているようで、4つの扉が確認できた。大部屋ということだが、間仕切りで3つの部屋には分けられていた。

人の気配がないことから、この部屋を使用するのは俺一人らしい。


「で、1階の中央には全団員が使用する食堂がある。まぁ、城下町で済ませる人もいるけどね。君も自由に利用してくれていいよ」


「あとはまた追々説明するよ。今日はもう疲れただろうし、休むといいよ。

あ、そういえばあの大きい竜、また小さくしてるみたいだけど、城の裏側の森に連れていくかい?」


 確かにあの後移動するのに大きすぎるために掌サイズに縮めたが、元の大きさとまではいかなくとも外に放てるならルイスにとっても楽だろうか。


『ここのドラゴンの顔を知っておく良い機会ですので私は外にいますね。

もしなにかあればいつものようにお知らせします』


 ルイスが上級であることは知られてもいいが、今は黙っておくべきかと思い、魔族同士で使えるテレパシーのようなもので意思疎通を行う。


「そうですね、いつまでも小さいとルイスにもストレスになりますしね。

ご案内いただけますか?」


「よし、じゃあ食堂横の扉から外に出るぞ」


 1階には大勢の団員が居たが、エドワードは慣れたように人込みをかき分け外へ出た。



「ここから先が騎士団の所有する森だ。このまま奥へ進むとさっきまで君たちが試験で飛んでいた山に辿り着く。

君は〈地〉と〈風〉属性だから自己鍛錬なんかはその山でするといいよ。

至る所にある洞窟もあるからいくらでも魔力の訓練ができるんだ」


「〈炎〉や〈水〉属性の方はどこで訓練されているんです?」


 こっち、と案内をしてもらいながら追々にと言われた説明を受ける。

城の裏側はこの広大な森林で、その奥の山もこの騎士団の土地とは…、偶々見つけたからこの街に来たが、どうやらアタリだったみたいだ。


「騎士団の2,3階は訓練室があってね。そこに耐熱仕様の防火室や防水室、剣道場なんかがあってね、みんな任務の時間以外に個々で訓練したり、偶に部隊合同でやったり、そんな感じかな」


 あ、ここね。と山の麓のあたりに到着した。

周りの木々に紛れてわかりにくくなっているが、麓の拓けた大樹の近くに他のドラゴン達はいるようだ。



「ここにいるのは騎士団に所属している団員と契約を結んでいるドラゴン達ばかりだ。ここなら騎士団の結界の中だから魔物は入ってこれないし、放していても大丈夫だよ」


「なるほど、結界ですか。(特に感じなかったけど)」



 大広場よりも広く、天井のないここなら元のサイズでも十分だな。


先程と同じように元の大きさに戻し、大きすぎて頭には届かないので躰の一部を一撫でし、俺とエドワードは塔へと戻った。







 




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