第7話 瞳は語る

-?-


 一斉に飛び立ったドラゴンの群れ。先陣を切っているのはあの規格外の大きさのドラゴンを連れていた男だ。

俺はこれまで様々な竜を見てきたが大男が4人でも周りを囲めないほど躰の大きいのは初めて見た。この世界にこんな大きい竜がいるなんて…。


そもそもそのドラゴンを引き連れていたあの男も何者だ…?

見るからに弱そうな白く細い四肢に竜の3分の1程度の身長。どこかの兵団に入っているようにも見えない男が、あのサイズのドラゴンを掌ほどのサイズに小さくし、尚且つ己の魔術でのみ解除できるようにと強力な術を掛けられるほどの魔力の持ち主にはどう頑張っても見えない。



 後続する他の受験者は何とか先頭の男を足止めしようとそれぞれ炎や雷など術を仕掛けるも、大きな尾はそれらを物ともせず、山の山頂に建てられた団旗の周りを旋回。この大広場上空へ向かって更にスピードを上げたようだ。


カレンが先日受付をした中で最も小さいドラゴンを連れた奴の目が「面白そうだ」と珍しく他の団員と談義しているところを見たが、成程。確かに面白い目をしている。何か大きな野望でも抱いているかのような、そんな瞳だ。

さて、今年の入団者は面白そうなのが多くて楽しみではあるかな…?




-Evan-



 ふむ、流石にルイスについてこれるような奴はいても抜かせはしない、か。

しかしこれでもまだ大人になったばかりだからな、あと50年もすればまた一回りは大きくなっていくはずだ。


現に、ルイスの親父さんは父上直属の飛行部隊の隊長で、今のルイスの二回りは大きいからな。普段は地下の洞窟を住処にはしているが、外に出るなら頭をぶつけぬように動かねばそれだけで魔界は大地震を起こしかねない。そしてルイスもいずれそのサイズにまで成長し、森へと、土へと返っていく。そういう種類のものだ。


『エヴァン様、後ろの輩が鬱陶しいですね。…蹴散らしますか?』


 ドラゴンは体表に鱗を持ち、それが尾にまで続いている。

鱗は空気摩擦にも負けぬほど硬質化しており、術者の風除けにすることもできる。

その尾を一振りもすれば後ろを飛んでいる者にはひとたまりもないだろう。



「いや、蹴散らさずこのまま突っ込め。下手に動けばヒトでないのがバレる。

そうなると勇者を倒すまでの俺の計画が飛ぶ」

『わかりました。ではこのままゴールへと突っ込みますね』


 言うが早いか、飛び込むのが早いか。大広場上空に引かれたゴールラインに突っ込んだ。



「トップは先ほどの規格外竜ドラゴン!2番手は…」


 団員らしき人物らが2名ほど上空で先着の5名をジャッジしていたようだ。

1番で帰還したルイスと共に地上へと降りたち、最も位の高そうな白いローブを纏った男が目の前に立った。


「おめでとう。君がトップだ。私はこの騎士団の副団長をしているドレットと言う者だ。ドラゴンを連れて壇上に上がってくれ」


 目の前の男はドレットという名で、この騎士団の中で2番目に強い奴だそうだ。

外見だけで言うなら俺は18歳の青年に過ぎない。目の前の40ほどの男の言葉を無視する訳にもいかぬので、そのまま後ろに続いた。


 そのご5分程待ってようやく2番目、3番目と帰還し、5名全ての仮入団者が決定した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る