第6話 相棒


-Evan-


「大変長らくお待たせいたしました!只今より、ワイアット騎士団の入団試験を決行致します!」



 陽がちょうど真上に上がり切った頃、ようやく試験は開始された。

講堂には多くのヒトとドラゴンが集結していた。

ドラゴンの大きさは様々で、ヒトと対して体長の変わらないものもいれば、大男2人分くらいの幅をとるドラゴンも見受けられるが、ルイスの比ではない。おそらくこの中では縦にも横にも最も大きいのがルイスだろう。


 そして先程挑発に来た女は進行を取り仕切る、同じくローブを纏った少女の隣に立ち、卑しい笑みを浮かべていた。



「申し遅れましたがわたしは当騎士団最年少のリグと申します!どうぞお見知りおきを!」


 陽気な少女は歳を14といい、外見からしても最年少クラスであるというのは間違いではなさそうであるが、この騎士団では力があるなら齢は関係のないみたいだな。

 まぁヒトについて興味があるのは現在の勇者といえる人物だけだから、特に興味もないけど。


「さて、今回の入団試験内容は先ほど公表いたしました、”飛行レース”となっています。ルールは簡単!このワイアット城の大広場から西に位置する山のポイントを目指して飛んでいき、ポイントを旋回して、また大広場へともどり、空中に設置されたゴールへ早くたどり着いた先着5名が合格となり、仮入団を許可されます!」


「因みに、ノックアウトまでの妨害なら受験生同士では許可され、魔術の使用も許可されますが、万が一外部からの妨害があった場合には、応戦を許可いたします!」


 と、言うことらしく、一同は群を成して講堂の奥、大広場へと移った。



 今回は飛行レース、という俺にとっても相棒ルイスにとっても得意中の得意分野だ。全力を出さない訳がない。

というわけで、


「ルイス、≪元の大きさに戻れ≫」


 ルイスに今までかけていた魔術を解いた。

先ほどまで掌サイズだったルイスがムクムクと紫色に光を放ちながら元の姿へと戻っていく。周りに立っていた他の受験者も、ヒトの2倍の体長であろうルイスを目に、腰が引けている。


「うわわわ!とっても大きいドラゴンがいますね~!獣の類は基本的に小さくすることはできても大きくする魔術はかけられませんからね~…!は、初めて見たサイズです…」


 司会の少女、リグも小さい口をあんぐりと開けている。

あの女はというと、こちらも何とも形容しがたい顔をしている。

ふん、滑稽だな。


『エヴァン様、やはり元の大きさが一番楽ですね』

「そりゃあな、どうだ、力は戻ったか?」


 藍色の竜鱗に身を包んだルイスは翼を一度広げ、力を抜くように伸びをし、山へと向き合った。


「き、規格外の大きさのドラゴンもいるようですが、それを乗りこなせないようであれば術者と共に落第です!

ではみなさん!3カウントで飛び立っていただきますのでご準備を!


ではいきます。3・2・1、GO!」



 青い大空に一斉にドラゴンは飛び立った。

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