第4話 ヒトも獣も


「そういえばまだ名乗ってなかったね。わたしはこの宿屋兼酒場主のマーガレット。よろしくね、おチビドラゴン君とお兄さん。

あ、おチビドラゴン君って長いからちびドラ君って呼んでいい?」


 どうもこの宿屋と酒場の主らしいエルフの娘は名をマーガレットというらしい。

ちびドラと呼ばれている本人は満腹のようで既に夢の中だ。もちろんこっちの話なんか聞いちゃいないだろう。


「俺はエヴァン。ここよりずっと東の方から修行の旅をしている。

この寝てるのが飛行用竜ドラゴンのルイス。理由ワケあって今は小さいけど」


 テーブルの上のレッドブロックももう食べ終わり、空になった器をそのままに、更に話しは進む。


「飛行用ってことはちびドラ君の属性は風なの?」

「あぁ。風属性の父と炎属性の母から生まれたドラゴンでね。基本的に父方の属性が優先されるから飛行用竜ドラゴンとして育ててはいるけど、炎属性の力が全く無いわけでもないんだ」


 そもそも属性とは獣もヒトも魔族も変わらず〈炎〉・〈水〉・〈地〉・〈風〉の4つの属性に分類されるが、俺たち魔族はその4属性の内のどれかともう1つの属性、〈闇〉を持っている。これは魔王であろうと下級の魔族であろうと同じだ。


俺の場合は〈地〉と〈風〉を持つ。

父上も〈地〉を持ち、母上は〈風〉属性だったはずだ。だから俺は基本的には〈地〉の魔力を持つが、〈風〉の魔力を持つためルイスとの相性がいい。


「わたしは〈風〉のエルフ一族出身だからエヴァンと半分は一緒ね!

因みに、〈風〉の能力はウェイター仕事にはもってこいよ!」


 というだけあって、本人が動かなくとも店中の空の器や料理の盛られた器が行き来している。


「実はこの方が楽なんだろ?」


 茶化すように尋ねるとマーガレットは「まぁね!」と小さい笑みを零す。

しかし器の中身を一切零さず運ぶところを見ると中々の実力であると思われる。

何故なら中途半端な力の使い方では中身は零れるし、そもそも物は水平を保つことすらできないからだ。


「このお店を始めた頃は物を水平に運ぶことすら全然だったんだけど、今じゃ人も運べるくらいには上達したつもりよ」

「へぇ、そりゃ凄いね。また今度見せてもらおうかな」

「じゃあまた泊まりに来てもらわないとね!」


 話すうちに夜も更け、宿屋の客だけがその場に残った。

ルイスはとっくの前に夢の中だし、俺も色々と話も聞けたしということで今日はお開きに。

酒場の2階にある宿屋で一番大きいベッドの部屋を一つ借り、明日に備え真っ白いシーツに身を潜り込ませた。








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