02-3 国光父ちゃん、彼女候補の話に暴走(かわいい)
「それで、いよいよ見つかったって? 俺の嫁」
「三升焼酎・大九郎」の水割りをぐっと空けると、国光くんが食いついてきたわ。
――あらー。なんか「嫁」とか暴走してる。どうしよこれ。
ここは国光くんの――つまり伊羅将くんの家。ボロ家だけど、貧乏だから仕方ないよね。今、ふたりで晩酌してるところだよ。伊羅将くんは寮母室に泊まるらしいから、内緒話にちょうどいいよね。
「嫁じゃないよね」
まず釘を刺しとこ。
「一度くらいデートしてもいいかなあって娘」
「それでいいし。千里の道も初体験から」
「違うし」
食い気味の国光くんを落ち着かせてから、私は説明したわ。学園で働いてる女子が、優しいおじさまなら、一度くらいデートしてもいいかなあって考えてるって。……まあ国光くん、「巨乳」と「若い」ってとこしか頭に入ってなさそうだったけど。
デートさせたら絶対これ、事故……というか下手したら犯罪起こるよね。てか失敗は少なくとも見えてる。「一秒でも早く揉みたいおっさん」と「優しくおしめ替えてほしい女子」が、うまくいくはずないもん。
私は決心した。もう「夢デート」しかないじゃん。夢なら私が全部監視できる。なにかアブない展開になったら、介入すればいいんだし。
それに夢っていっても、国光くんの夢は危険ね。ギトついてそうだし。かえでちゃんのほんわかドリームに国光くん連れてくわ。そっちなら、かえでちゃんペースで環境が構築できるから、彼女の「特殊性癖」を実現させてあげやすい。彼女がそれで満足すれば、リアル世界でも、きっとデートできるでしょ。プレイは当面ないとしてもさ。
それに夢世界で「かえでワールド」を知れば、国光くんだって、付き合い方うまく修正できるだろうしさ。なんたって大人じゃん。なんだかんだ言って。奥さんに逃げられてから女子日照りだったから、必要以上にギトついちゃってるだけだもんね。そこはかわいそうだよね、国光くん。伊羅将くん育てるのに必死だったからさ。
それは私が知ってる。だから幸せになってほしいんだ。それになにより、奥さんが逃げたの、私が根付の中から国光くんの生命力、ちゅーちゅー吸ってたからじゃん。罪滅ぼししてあげたいしさ。
……あとはリンちゃんだね。夢世界コンダクターとして、いっしょに助けてもらわないと。今回国光くんもかえでちゃんも暴走しそうだから、助手必須だもんね。
うれしさに舞い上がった国光くんは、ぐいぐい飲みすぎて、あっさり酔い潰れた。お布団まで運んであげて、ほっぺだけどキスしてあげた。ちょっとした仙狸のお詫びとごほうびだよ。エッチは無理だけどね、私の契約者は伊羅将くんだから。
その晩私は、居間で大九郎をひとりで全部空けながら、じっくり戦略を考えたんだ、夢劇場の。
それは――。
お知らせ:ネット環境のないところに島流しになるため、来週は掲載ありません
次回更新は3/16金曜19時11分予定です。
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