あとがき
あとがき
「ネオネースト」を読んで頂き、まことにありがとうございました。いかがだったでしょうか?
本格派SFを好まれる方にとっては、物足りない出来だったかもしれません。逃げるような言い方をすれば、割とライトなSFに仕上がったと思っています。
「アンドロイドとの共生」という重いテーマを扱うには、まだまだ私の腕が足りなかった面は否めません。
しかし、連載中は数多くの励ましを頂き、ホッとしているのも事実です。応援、ありがとうございました。
さて、今作は作中にも出てくるとおり、フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」「ブレードランナー」を大いにリスペクトした作品です。
あまりにも有名なSF小説・映画なので、今作を読まれた方のほとんどは、その存在を知っているのではないでしょうか。
高校生時代、SF映画にハマっていた私は、「ブレードランナー」を見てあまりのカッコよさに痺れ、「電気羊」を手に取ったという経緯があります。
以下、両作品のネタバレがありますので、避けたい方はお読みにならないでくださいね。
ディックの描いた「アンドロイドとの未来」は、ディストピアだったと言って差し支えがないと思います。
アンドロイドは強制労働をさせられ、差別され、逃げ出せば殺される。とても可哀相ではありませんか?
実際、「ブレードランナー」の評価では、真の主役はデッカードではなく、アンドロイドのロイ・バッティだったとも言われています(出典は忘れてしまいました……)。
ロイの最期を見て、彼に感情移入してしまった人は多いことでしょう。私もその内の一人です。
そこから私は、ぼんやりと考えるようになりました。アンドロイドをただの機械、労働をさせるためのものではなく、共生できる未来が来ないかどうかと夢見ました。
しかし、想像すればするほど、それは困難なことだと判りました。それは、「ネオネースト」でも描いた通り。
特に、クレマチスのセクサロイドたちがそうです。完全に言うことを聞く、人に近しい存在が、性のはけ口として利用されることは容易に想像がつきます。
結局、人間が造るものですから、人間のいいように、彼らは扱われるわけですね。例えそれが愛情だったとしても。押し付けの愛情にしかすぎないんです。
よって、私は考えました。最大限共生のための努力が尽くされた時代においても、やはり「デッカード」は必要なのだと。
そうして生まれたのがこの作品です。
また、「アンドロイドに感情はあるか」というのも大きなテーマでした。
作中では、主にエンパスの二人によって、徹底的にそれが否定されます。非エンパスたちは、懐疑的、といったところですね。
作者の私としては、否定する立場を取っていました。それは、ノアのセリフに投影したとおり。「感情は、俺たち生き物だけのものだ」というものです。
しかし、もしかしたら、という願いもあります。自壊(自殺)したアリス、マシューの結婚式でひとり言を言ったリアレがそういった存在です。
書き上げた今となっては、将来的にアンドロイドが感情を持つのか、それは分からなくなってしまいました。
みなさんはどうですか? アンドロイドに感情を持って欲しいでしょうか。
そして、私のいつもの悪い癖なのですが、五章では完全にノアとレイチェルの恋愛話になってしまいました。アンドロイド関係ないやん、という域になってます(笑)。
最後にレイチェルが言う、「バカね。映画のエンディングならそれでいいけど、あたしたちはこれからも生きていくのよ?」というセリフは、お察しの通り「ブレードランナー」のラストからきています。
一応、本当に二人を逃避行させる案もありました。しかし、そうするには二人の距離は開きすぎており、遅すぎた。
よって、ノアはサムの元に、レイチェルはファミリーの元に帰る選択肢を取らせました。
こうした恋愛要素が、この作品にどう働いたのかは、読者のみなさんの判断に委ねたいと思います。
最後に、このような蛇足まで長々と読んで頂き、ありがとうございました。
「アンドロイド」について考え、悩み、苦しみながらも楽しんだこの執筆期間のことを、私は忘れないでしょう。
もし、アンドロイドについて他のアプローチがある作品があれば、コメントにて教えて頂けると喜びます。
読者のみなさまに、盛大なる感謝を。
ネオネースト~アンドロイド特別捜査官~ 惣山沙樹 @saki-souyama
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