第82話 天才と武闘大会 六日目・準決勝4
『皆さま、こんにちは~! 引き続いて司会解説を務めます、セスタで~っす。きちんとお昼ご飯食べましたか? ちなみに俺は食べれてませんっ! ギルマスに怒られてて、食えませんでしたぁ』
『こんにちは。同じく解説を務めます、アペンダーテギルドマスターのルヴィリアルディリンクです。少しおふざけが過ぎていたので、お昼休み中お話しをさせていただきました。今後は真面目にやってくださるというので、期待していましょう』
『は~い、真面目にやりまぁす。……さてさて、それにしても午前の試合はまさしく死闘、でしたね。伝説の大魔女と、無名の新星との激戦は見物でした。そして新星は伝説に打ち勝ち、見事新たな伝説へと
『純粋な力と魔力。技量と知恵。それらがリーハラウシェさんより
『ええ! 木ランクかつ、無名だなんて信じられませんよっ。本当に。……けど、皆さん。お忘れではないでしょうか? 実は木ランクかつ、無名の方はもう一人いるんですよねっ!!』
『次の試合で戦ってくださる、アサシンさんですね』
『はいっ、そうなんです! 状況的には正に午前の試合と瓜二つ!!! 伝説の偉人と無名との戦いっ!! これはもしかしなくとも、伝説が再び敗れる未来もありえるかぁ!?』
『今までの戦いでは、アサシンさんは本気を出していないようでした。本気を出したらどうなるのか、見物ですね』
『正統派剣士と異端暗殺者の世にも
2人が入場してくる。
やはり根強い人気があるらしい。ガーウィンを応援する声の方が多かった。
けれど、私が前回伝説の大魔女を下したからだろうか。異常なほどの威圧が漏れているのに、アサシンを呼ぶ声も予想以上にあった。番狂わせを期待しているのだ。
加えて、アサシンは中性的な美形だから女性に特に人気があるようで、黄色い歓声が目立つ。人間というものは、たとえ恐怖であろうとも慣れる生き物らしい。
双方が握手をした。
歓声が巻き上がる。黄色い悲鳴も増えた。
「おう、楽しい戦いにしようぜ? ……って、そうだった。アサシンは言葉が分からないんだったな」
照れたようにガーウィンが頬をかいた。
何と言われたか分からないアサシンは首をかしげている。
「悪い悪い、気にすんなっ」
アサシンの背中を叩くと、ガーウィンは始まりの位置を選びに行った。
『さすが、ガーウィン様は自然体ですね~。目立つことに、とても慣れてます』
2人とも位置取りが終わったようだ。
アサシンはナイフを
『それでは準備が整ったようなので、始めさせていただきますっ! 再び伝説が敗れるのか、はたまた伝説が伝説たる所以を証明する戦いとなるのかっ!? 全てはこの戦いが始まれば分かることですっ! 決勝戦へ進める強者はいったいどっちだ!? 剣聖ガーウィン様と一撃必殺の黒き風アサシンさんによる、準決勝戦、第二試合、始め!!』
試合開始の合図が鳴る。
だが、双方共に動かない。異様な雰囲気に、会場が静まり返った。
『う、動きませんね。出方を見ているのでしょうか?』
『アサシンさんの場合はこちらの言葉が分からないため、試合が始まったことに気づいていないのかもしれません』
「っち、自分から動くのは好きじゃねえんだが。まあ、アサシンのためならいっちょ攻めるか」
ガーウィンが剣を抜き、ゆっくりと歩き出した。
抑えていたのだろう、威圧が溢れる。
アサシンの威圧と反発しあって、独特の空気が出来ていた。
『強者たちの戦い特有の
ギルマスがセスタを叩いたのだろう。鈍い音と、浅い呼吸音が聞こえた。
『っ、すみません! 空気に呑まれてましたっ。はぁ、これで準決勝だなんて、本当に信じられませんよ』
セスタの声は、いつもよりも低い。
誰もが2人の刃が交わる時を、今か今かと待っていた。
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