第79話 天才と武闘大会 六日目・ベストエイト1
パンパンと乾いた音が鳴り響く。
窓から空を見上げると、赤い煙が風に流されていた。
昨日と同じ光景を同じ窓から眺める。決勝戦進出を賭けた戦いが始まろうとしていた。
『おはよぉございまっす! 口から先に出てきた男、おちゃらけ王子こと、セスタで~す! 今日も司会解説を行わせていただきますので、どうぞよろしく。そんでもって、ギルマスことルヴィリアルディリンクさんにも解説をしていただきまっす』
『よろしくお願いいたします』
『よろしくお願いしますねっ! さてさて、まだ朝ですが、眠い人はいませんか? でも大丈夫っ、きっと目も覚めるような壮絶な戦いをこの2人が繰り広げてくれることでしょうっ! 美少女お嬢様魔術師クレア・ジーニアスちゃんと、西の大魔女リーハラウシェ様ですっ。どうぞっ!!』
扉が開かれる。そこをくぐった。
クレアコールも響いたが、それよりもリーハラウシェを称える声の方が大きい。なるほど、人気度では負けた。
「ふん、お主がわしの弟子を破った者か。あやつも修行が足りんな。このような小娘、
「あら、挨拶もなしに嫌味を言うだなんて。もしかして
差し出されかけた手が、ピタリと止まった。
「……ほう、死に急いでいると見える。赤子と等しいその身には、まだ死は早かろう」
「ええ、あなたみたいに必死に若作りしなくても、見た目通りに若いもの。死とは無縁ね」
「ふん、口だけは回りよる。先達として、ちと灸を据えてやるとしようか」
「あら、説教はご老人の専売特許だものね。では私は引導を渡してあげるわ」
艶やかな手と握手する。
間近で見てもやはりキレイだ。けれど、この美貌を歪ませなければならない。遠慮なんてしたら、こちらが死んでしまう。
『舌戦!! すでに、舌戦が行われておりますっ! 可愛い顔して、クレアちゃんの毒が酷い! ……女の子は怖いなぁ』
『伝説の魔女とも言われているリーハラウシェさんと対峙するのです。これくらいの気概があった方が良いでしょう』
互いに背を向け位置取りを始める。
特別な準備は必要ない。気を抜かなければ、私が勝って当然なのだ。
『数千年のときを生きる大魔女と、今大会で初めて名を知らしめた期待の新星!! 果たして勝利の女神はどちらの手をとるのかっ!! この戦いを制した者が、決勝戦へ進めますよぉ! それでは皆さん、一瞬たりとも気を抜かずにご覧くださいっ! 西の大魔女リーハラウシェ様と美少女お嬢様魔術師クレア・ジーニアスちゃんによる、
――ああ、血が滾ってしょうがない。
「エンチャウント:速度上昇、物攻耐性上昇、魔攻耐性上昇、属性耐性上昇!」
「
向こうも油断はしないらしい。
初っ端から異形の者を召喚した。まずはそいつが出てこれないようにしてみる。
「
私のやりたいことが分かったのだろう。リーハラウシェが魔法の球を作り、打ち出した。
魔術で一掃するのが一番楽だが、詠唱は別のものを唱えたい。
――少々難しいだけで、出来ないわけでもないのよねっ!
瞬時に同じく魔法の球を作り出し、相対する色でそれぞれを打ち消す。
『すごいっ! クレアちゃんも魔法の球を作り出したぁ!? え、これって相当難しいんですよね? そう簡単にできることではないですよねっ?』
『もちろん、難しいです。魔法の球自体の難易度は低く、魔術師であれば作れない人はいないでしょう。ですが、一瞬で複数種類、かつ大量に作るとなると出来る人は限られます。……あの2人のように片手間で生み出せるようなものではありません』
「
リーハラウシェだけでなく、魔法陣も範囲に入れて重力を増やす。
顔だけ出ていた異形の者が、押し戻された。
「くっ、老体は労われと教わらなかったのか?
パンッと破裂するように、私の術が消された。
まさか、一語で弾かれるとは思いもよらない。
「老人だと言うのなら家でのんびりしてなさい!
押し戻すことが無理ならと、今のうちに魔術を叩き込んだ。豹の姿をしたものが、魔法陣から現れるところを狙う。
「させるもんかね。
魔術が逸らされ、近くの地面を貫いた。
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