第20話 天才と最後の情報収集2


「薬学ギルドはその名の通り、薬学にかかわる職業を持つ人が入るところなんだけどね。ここに入っていれば、最新の薬学発表や相場、新種の薬草なんかを教えてくれる。それに、もしもの時は後ろ盾にもなってくれるんだ」


 まぁ、その代わり年会費が必要なんだけどね。

 デンさんは朗らかに笑った。


「薬学ギルド以外にも、ギルドはあるのかしら?」

「もちろんあるよ。冒険者ギルドに魔術師ギルド。魔道具ギルドや魔導書ギルドとかもある。大きな町に行くほど、たくさんの種類のギルドが揃っているよ」

「そうなのね。……薬学ギルドもそうだけれど、冒険者ギルドにも入るべきかしら」

 今後いろいろな場所を回ることになるであろうし。

「冒険者ギルドにも? どうして……ああ、そうか。素材が欲しいんだったね、クレアさんは」

「ええ。やっぱり冒険者ギルドでも素材は手に入るの?」

「んー、手に入るっていうよりかは、要らないものを売るっていう意味が強いかな? そのギルドと仲良くなれば、融通を利かせてくれるかもしれないけどね」

「それなら、私は必要ないかしら……」

「連れの人、アサシンさんだっけ? 彼が入るのなら、クレアさんも入っておくといいかもしれない。素材収集とかで、ダンジョン内でも一緒に行動するのなら、なおさらね」


 なんでも他人と報酬を山分けにする際に、ギルドに属しているかどうかでもらえる量が変わってくるらしい。


 もらえるものなら貰いたい。

 助言通り、冒険者ギルドにも入ることに決めた。


「ねぇ、ダンジョンって何かしら? 本当に、何も知らなくって……」

「構わないよ。ダンジョンは、そうだね、珍しい素材の宝庫、かな?」

「まあ! 珍しい素材の!?」


 私の眼はキラキラと輝いていることだろう。一文字も聞き逃さないように、集中する。


「ダンジョンにしか生えていない植物もあったり、遺跡などに古代の遺物が眠っていたりするんだ。その代わり、強く特殊なモンスターが跋扈しているけどね」

「すごいわ! そんな素敵な場所なら行かなければ!!」


 魔物、こちらではモンスターという呼び名のようだが、それのドロップ品だって素材だ。特殊なモンスターとくれば、高品質の貴重品に間違いない。


「ははは、クレアさんならそう言うと思ったよ。ああ、それに高位のダンジョンに入るためには、ギルドランクを上げなければならないんだ。人命を守るためにもね。そういった面でも、クレアさんも冒険者ギルドに入った方が良いかもしれないね」


 身の丈に合わないダンジョンならば、ギルドが止めてくれるらしい。


「デンさん、ここから一番近いダンジョンってどこにあるのかしら?」

「ああ、結構近くにあるよ。村の表面、森とは反対方向にね、いくつかの村と町があるんだけど。そこを通り過ぎたところに、アペンダーテという大きな町があるんだ。ここに行けば地下ダンジョンを見ることができるよ」


 “見ることができる”これでは入れないようではないか。

 私は首をかしげながら問う。


「見るだけなの?」

「残念ながらね。冒険者になりたての者は入れない高ランクダンジョンなんだ。実力者なら力を示せば、ランクを上げてもらえるかもしれないけど……」

「力を示せばいいのね! 何をすれば認めてもらえるのかしら?」

「すまないね、さすがにそこまでは知らないんだ」


 デンが申し訳なさそうに、頭を下げる。

 私は慌てて首を振った。


「いえ、いいのよ! ごめんなさいね。いろいろ教えてくれて、ありがとう、デンさん」

「お役に立てたようなら良かったよ」


 朗らかに笑う。そんなデンの笑顔に、私もほっこりとした。


「お茶が冷めてしまったね。新しいのを淹れるよ」


 デンがお茶を淹れる準備を始めた。

 その間に情報の整理をしよう。


 次に行く場所は決まった。いくつかの村と町を越えた先にある、アペンダーテという町だ。

 ここに地下ダンジョンと呼ばれるダンジョンがある。私はそこに入りたい。採取したい。そのためには冒険者ギルドに入って、高ランクになる必要がある。

 高ランクになるためには実力を示さねばならず、その方法は分からない。


「クレアさん、お茶をどうぞ」

「ありがとう、デンさん」


 ずずずっと音が響く。

 美味しい。とても優しい味だ。


 力を示すというのは、アサシンがいれば大丈夫な気がする。

 だが、私自身の力も見せなければならないだろう。天才の私ならば問題ないと思うが、今のままでは火力が少々心もとない。攻撃用の杖も作るべきか。


 つらつらと素材を考えながら、お茶を飲み干した。

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