勇者専属の斥候さん

月ヶ瀬夜羽

第1話


ロクな灯りもない不気味な城で、一人と、その仲間たち三人が、見ただけでわかる‘人ならざる者’と対峙していた。


もうすでに四人…勇者一行は、度重なる闘いにより疲弊していたのは明らかだった。


だが、その四人の目には諦めなど微塵も写っていなかった。


ただその目に移すのは、勇者の魔を滅する力を持つ聖剣の、まるで希望を体現したかのような、そんな光をうつしていた。


「いくぞ…‘魔王’…これが最後だ!『エクスカリバー!』」


勇者が放ったのは、極光。この世界の全人類の命運を乗せた、希望の光が魔王を呑み込んだ。



…そんな様子を俺は陰から見ていた。





場所が変わり、明るい光が差し込む人間の城。

そこでは勇者の魔王討伐の宴が開かれていた。


「勇者よ、よくやった。これで全人類は救われた、感謝してもしきれない………」


城の主である王が勇者へ感謝の言葉を述べている。

王道RPGでは全クリ後によく見られる光景だ。


しかし…しかしだ、勇者自身は「魔王を倒した」などの報告は一切していない。


ではなぜ知っているのか?



…それは勇者専門の斥候スカウトがいるからだ。勇者の行動、結果を逐一報告するかなーり面倒くさい職業だ。


ここまで言えば察する人もいるだろうが、俺はその斥候スカウトである。だから魔王と決着の瞬間も陰から見ていたんだ。そう、あれは仕事だ、仕方なかったんだ、うん。


とまあ、一応の自己肯定を済ませたところで、王の感謝の言葉が終わったようなので、適当に宴に参加する。



…え?いいのかって、一番の功労者俺だよ?

勇者御一行が新しい国行くたびに報告する場所は増えてったんだよ?その度に不法侵入の疑いかけられてたんだからね?あゝ、思い出したら胃が…。


使うつもりもなかった転移魔法とか熟練度MAXだよ?もはや実践レベルな件。鬱だ…。




この後めちゃくちゃ暴飲暴食して、体調崩しました。以後気をつけます。





…呼び出された。あの王様俺を呼び出してくれやがりました。ちくしょうめ。

嫌な予感しかしない。


…後に、自分で思った 「フラグ乙」と。



「勇者専属の斥候よ、勇者が再び旅立った。『嫌な予感がする』と、引き続き、勇者の情報の収集を任せたい。やれるか?」


…シッテタ。

呆然とした。なんで勇者旅立つんだよ!ずっとひきこもっていやがれ!またあの社畜生活に逆戻りだと?くそ、そんなことを誰が了承するものか、いや、しないだろう!


「お任せください。我らが王よ」


権力には勝てないね。あは、はぁ…





もう誰か変わってください。切実に。




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