あの学園ニュース


「アクションっ!」


 氷川コオリカワさんが、スマホ動画アプリの録画ボタンをタッチする。お昼休みの学園の雰囲気を撮影、そのあと氷川さんのほうにカメラを向け撮影して自撮り状態になる。学園ニュース撮影の緊張感が太子と僕に迫る。


「は~い、皆さん週1度のお楽しみ~っ! 学園ニュースの時間で~す」

「今日は我がっ、山背高等学園やませ こうとうがくえんのお昼休みに、購買に向かうお二人を捕まえました~っ! 学園で話題になっていることはありますかっ?」


 氷川さんがカメラの写らない前方に手を持って行き、僕たちに指をで合図をしてくる。撮影前の太子が、発声練習の成果を発揮できる本番の時がやって来た。


「え゛゛っ !! ああ゛のあの学園ニ゛ュ~ス゛?! 」

「えっ?! あの学園ニュース!」


 あの抜群の発声練習までしていた太子が、まさか緊張して滑舌が悪くなっていた。何度も発声練習していたのに……。僕と太子は同じタイミングで指示通りに話した。



「じゃ~っ滑舌の悪い君っ、我が学園で話題になっていることはありますかっ?」


「あ゛っ、い゛つも購買に向かうと、最近はジャムぱんが売り切れていて、俺もジャムぱんが食べたいので、購買の人にジャムぱんをたくさん仕入れてほしいでず」


 緊張した太子を横に、そういえばいつも太子は購買でジャムパンの棚を見ていたな、何も言わなかったけど本当は食べたかったのか。でも仕入れを増やしても、津井さん姉妹が全部買占める気が……。


「ジャムぱんの仕入れはっ、あとで購買のほうに自分で言ってくださいね~」

「じゃ~っとなりの君っ!学園で話題になっていることはありますかっ?」


「学園……う~ん、なにから話せばいいのか~分からないまま~」


「話題なら~何でもいいですよっ」


「あっ! 今朝から氷川さんが話題になっています!」


「私ですか~っ? ありがとう~! 嬉しいですね~今朝のテレビを観てくれたのかなっ?」


「はい」


「それじゃ~最後にいつものやつ、三人で終わりますね~!」


「学園ニュース最高~っ!」

「学園ニ゛ュース最高~っ゛!!」

「学園ニュース 最高~っ!」


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