ふぞろいの指折り
息を喫しながらひとつ
覚えているものを数える
息を捨てながら何も
忘れたものは数えられない
ふぞろいの指折りに慣れて
すぐに見失うものなのですね
嘘ではなかったはずなのに
確かに望んでいたのです
指折りはもともと
あなたのためにあったのです
なら、もう一度?
あなたが泣いていても見えない
あなたが笑っていても見えない
それで指を折るのだから
嘘つきになってしまいます
あなたが覚えているか知れない
あなたは忘れてしまいましたか
自分では覚えているふりをして
指を折ります
嘘つきの作法です
ひとつ、ふたつ、みっつ
あなたが自分で折るのでも
気づけばきっと
覚えているものばかり
あなたが忘れてしまったものは
代わりに数えてみせましょう
いくつ、いくつ、いくつ
どう指を折っても
やっぱり数は合わなくて
嘘だというのに
泣いているか笑っているか知れない
無力は優しさとない交ぜで
忘れたところにだけ染み入る
すぐに見失っても
どうにかこうにかで
ふぞろいのうちに思い出す
あなたのための指折りは
泣かせたいのでも
笑わせたいのでもなくって
指をひとつ
折り曲げて
間違いでも嘘でもいいから数えて
指折りが合わないゆえのため息でも
そこにあってほしい
あなたが
息をひとつ、ふたつと
喫して、捨てて、喫して
どうあるかなんて
まるで見当がつかなくても
嘘つきになってしまっても
あなたの呼気を数えたかった
ひとつ、指を折って
息を喫しながらひとつ
あなたのことを数える
息を捨てながらもうひとつ
知れないのをいいことに
願いとない交ぜにして
あなたのことを数える
それがあなたの呼気なら
増えていくばかりの
ふぞろいにしたい
もうひとつ、指を折る
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