鳴き尽くす



鳴き尽くすほどに

ふくらんでいくから

ためらう


生きるべくして

息と体を

交互に重ねては

まるでひとり

たたずむ


とまどいなどどこかへ

つなぐべき指に沈んで

けれどつつましく

鳴き濡れる

まるでひとり


孤独などどこにも

まみれるばかりの幸せ

けれどきっと

まるで


カーテンを閉めて

月を見上げる

自由なんて鐚銭びたぜによりもたちが悪い

天井に塞がれて

冬の夜空に見惚みとれては

鳴き沈む

ためらいながらも

冬の息吹に聞きれて

鳴きしき

限りのままに生きて

それが声となるならばこそ


世界はこだまする

絞るようにも思えて

溢流いつりゅうの果てにも思えて

悲鳴か嬌声か

そんなふうな気もして

ためらって

けれど見上げれば

天井の向こうの季節に屈する

いい景色だね

ためらいなく

鳴き崩れるよ


限りのまま

見上げるほどに

命をためらって

季節にたたずんで

ただの無駄遣いだと

ひとつ鳴くよ


いつまで経っても

命はひとり

手をつなぎながら

もうひとつ鳴く


鳴き尽くすほどに

涙は遠ざかる

こんなに幸せでは

鐚銭びたぜにほどの文句も言えない

いつまで経っても

鳴き声ばかりだよ


カーテンを閉めて

月を見上げる

ごらんよ

こんなにもうつくしい


失うだけでも

こだまするばかりに

こんなにも見惚みとれては

限りのあるまま

ほんの少しだけ

鳴くことも忘れて




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