0に転がる
巡る灯光のさじ加減に振り回されて
言い知れなさの向かいで
ため息にもならない
目まぐるしくって
ルーレットは仕事を棄てずに
気づけば球は0に転がる
賭けてもいないってのに
親の総取りにされちまう
振り回されるばかりでいては
ないなりに
つなげた語の模様に
価値と響きを見出すこと
抑揚に好き放題を許す
目まぐるしいまま
息苦しくて
もしかすれば見苦しく
それでも高望みよりはと
雨垂れみたいにさ
やっぱり球は0に行き着く
真っ向から
目まぐるしくて、さっぱりだよ
飢えて
ため息にもならない
もっとうるさく
ざめいてくれよ
大音響の残響に騒音として
そのうえでためらわないほどの
その
さっぱりわからないのが
どうせ仕方のないこととしてくれれば
いくらかは格好がつくってのに
どのみち結局その時も
視線をひとつ落としてやれば
球は0を選んでいるはずで
帰着は知れているというのに
この目まぐるしさは何だというのか
言い知れなさの向かいで
球を拾い上げて
26に置いてやる
行き行く灯光の無遠慮に
僕はすっかり振り回されていたから
どの数字にしたって
賭ける間もなかったさ
どのみち
外れだよ
気の利いたでたらめを話そうとしても難しく
色っぽい言葉をかけるはずが筋合いを言い聞かせていて
やっぱり球は0に行き着く
恋心の高鳴りに身震いしても素知らぬふりでいられる恥に
はっきり目の前で隠れて潜ってやりたくもなる
目まぐるしくて、さっぱりだよ
ひどく欲しがって探し求めるほどに
ため息にもならない
0の球を26に移したのは
きみのテーブルなど到底見えなくて
もちろん何もわかりやしないけど
もしかしたらきみが
そこに賭けていたかもしれないから
こっちの球だ
きみにとっての当たりにはならないけど
僕にとってはどのみち外れだけど
0よりは
幾分
戯ればむものかもしれないからさ
明日は32に移してみるから
暇があったら賭けてみてよ
どのみち
きみにも僕にも外れだけど
0よりは
言い知れなさの向かいで
ため息なんてとんでもなくて
吐息を重ねるのに精一杯
どうせまた0に転がる
わかっていたって賭ける間もない
きみはきみの苦しさの中にいると
知っていてなお甘えたがる
無茶な願いを一日にひとつずつ
今夜のうちに
32に賭けておいて
目まぐるしさに脅える僕に
ささいな役目を負わせて
言い知れない灯光に眩む未来に
僕を生かしたまま連れて行って
きっと明日も0に転がるから
拾い上げて32に移すと
約束するから
どのみち外れには違いなくても
明後日は5に置くよ
気の利いた外れを
どうぞお楽しみに
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