Minuet in Q-flat minor : Rondo-Sonata form Op.8107 2nd mov.



そこで踊るのは

どなたのだあれ?

きっと命であるでしょう

どなたのだあれも

お終いの灰の物語を信じている

崩れる灰の向こう側を

見ようとしないでいる

決して阿呆ではないから

巡る舞踏の渦に身を置く

だれかさん

お終いの灰の物語で詰まると

信じてやまない

おばかさん


そうです

踊らなければ

あなたは命に嘘を吐く

踊らなければ

ステップは生きるがごとくに

夢見がち

決してそしりはしないけれど

ゆるやかに流れる舞曲が

命に

嘘を吐かせる

あなたはころりと騙される

命が嘘を吐く

お終いの灰の物語なんて

すっかり幸せなフェアリーテイル


あなたは命に嘘を吐かない

命はあなたに嘘を教える

そこで踊るのは

どなたのだあれ?

きっところりと騙されている


ねえ、教えてあげませんけれど

うつくしく信じている

どなたのだれかさん

あなたはきっときっと

お終いの灰の物語にはいません


崩れる灰には向こうがあって

あなただって

辿り着くかもしれなくて

ねえ、誤解しないでくださいね

終わりではなく、向こうです

踊っていられる

どなたのだれかさん

崩れる灰の向こうで

それができると思わないでくださいね

そして

終われるとも

終わらせてもらえるとも


続きのある灰の物語が

終われない向こうの物語に

行き着くのかもしれません

仕方なく踊っているようでいて

万一もしかしたら知るでしょう

踊りたくて

仕方がないのだと


抑揚にリズムとメロディ

足運びは慎重に

パートナーを踏みつけることのないように

あるいはひとりきりで?

子供の頃のカスタネットを

なんとなく持ってきたりして

決して優雅とは程遠くとも

それでも人生はメヌエット

驚くなかれのロンドソナタ

それを信じていられるうちは


どうぞ幸せでいて欲しいと

それを願っていることは

嘘偽りではないんです

どうか信じていただけますか

お終いの灰の物語を

信じて疑わない

だれかさん

おばかさん

どうか信じていただけますか


ねえ、教えてあげます

踊らなければ

命に嘘を吐く

信じていられるうちのメヌエットを?


ねえ、示してあげます

踊らなければ

命に嘘を吐いても

信じられなくなったメヌエットでも


踊らなければ

それは何なのですか?

ねえ、教えてください


ご覧いただけないでしょうけれど

踊れないのです

踊れないでいるのです

声も届けようがないのです

教えてあげるだなんて

示してあげるだなんて

真っ赤で灰色の大嘘です

そうしたくたって

全くちっとも無意味なところ


踊りを失った向こうの

命に嘘を吐くことにもならず

無音

無色のうちに溶けている

信じても届かないメヌエット

望んでも成されないロンドソナタ

踊れないのなら

踊らなければ

この世界に

いったい何があると?

ねえ、教えてあげられませんけれど

教えてください


何から何まで

あるいはひとつきりのこと

全くの同意です

この世界にはそれしかない

どうぞ

踊るだけ




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