積み木のような



積み木のようなそれが

曖昧な空域に

自分と重なるように積み上がっている

昨日より少し高くなった


畢命ひつみょうのうちのバベルにも思えるし

寒さをやわらげない年輪のような気もする

罪業と向けられた嫌悪の数かもしれなくて

向けられた好意ならこんなに多くはないような

わかりゃしないね

だからって目の前にある気がしてさ


倒れそうなジェンガってほど整然としていない

たわいなく倒れるようならこんなに苦労はしていない

生を損なったぶんだけ積み上がるのかな

獲得した軌跡の証としてそこにあるのかな

愛はなくしてばっかりで積み上がらないな

恋がこんなに積み上がってたら恥なんだろうな

いずれでもないのかもしれないし

どれかに限るわけでもないのかもしれない

どこにいても目についてうっとうしい


崩してしまいたくて

そのうちのひとつを抜き取って

それで倒れるなら苦労はなくて

指でつまむひとつを持て余す

持って眺めるものじゃない

抜き取ったひとつのかわりに

何をはめこんでやれば

いっそ諦められるのだろう


曖昧な空域に

積み木のように積み上がる

どこにいるのかもわからないけれど

その影さえ曖昧なきみに

鮮やかに薙ぎ倒してほしい

人任せのぶんだけ

またひとつふたつと積み上がる


あるいは言うのかもしれない

その積み木こそがあなたであるのだと

目もあてられねぇや

手遅れで

いっそ諦めがつく


体勢を失いながら

詩を歌いながら

積み上げるひとつ


世界と妥協しながら

我が身と馴れ合いながら

積み上げるひとつ


蹴り飛ばしてみても

崩れない全部




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