第22話 桐土スタジアム④

「参ったな」

鍋を食べるつもりでいた私は歩きながら何か口にするものを探していた。

とはいえ、出店は全てやっていないのだから自販機しか選択肢はなかった。


ピ、ピピッ、ガチャコン

右手を取り出し口に入れ、ペットボトルを取り出し水を飲む。

そしてまた公園のベンチに戻り、もう帰ろうかと思ったその時、スタジアムの方から大きい、不思議な歓声を耳にした。

さっき聞こえた物とは違い、スタジアム全体から拍手がされているような確実に通常ではない何かが起こった音。

試合速報を見る。

そして、理解した。

あれはエースが歴代最多得点を更新した瞬間だった。


目的を達成出来ずに終わる所を、このイレギュラーな事が起きた事で、なんか充実した気分になった。


私は10人もいない公園を去り、途中の駅で贅沢なものを食べて帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る