第16話バラとドクロ①⑤

レ・タフロのエースがボールをセットしている。

「これ決めると歴代1位に並ぶんだっけ?」

「並ぶ」

「梅野さん、一旦ポーズで」

「分かった」

向こうの2人は椅子を少しテレビの方へ近づけ、集中して見ている。

ただ、私はそれよりもこのPKの後にある寺島さんのカードを引く事を考えていた。

寺島さんの手札の1枚を除外する事が出来る。

4枚の内、3枚がバラで1枚はドクロ。

25%という低い確率を引ければ、このラウンドをかなり有利に進められる。

エースに対峙するキーパーがゆらゆらと左右に揺れてその時を待っている。

もっとも私が高確率を引こうが低確率を引こうが、どっちを引いたかは寺島さんにしか分からないのだが。

審判の笛が鳴る。

テレビに視線を移す。

エースが走り出す。

左か?

キーパーが逆を取られないようにギリギリまで動かない。

蹴る直前にキーパーが動いた。

左へ跳んだ。

蹴った。

左下だ。

「あっ」

コースが甘く、キーパーが手で弾く。

「あー」

ボールはラインを割った。

駆け寄って喜ぶ相手DF陣。

下を見るも、仲間が声をかけコーナーキックの準備へと切り替えるエース。


「甘かったなぁ」

「うーん…」

落ち込んでいる様子の2人。そして寺島さんはこっちを大きな目で見て、

「ポーズ再開で」

と言って右手で扇の形に広げた4枚のカードを私に近づけた。

私はすぐに1番左のカードを取り、右の方に置いた。

「そう」

彼女はそれだけ言って、すぐにカードを1枚伏せた。

表情はあまり変わった様子はない。

私はカードを伏せると、ウラカタさんにこう告げた。

「多分、寺島さんドクロ持ってないよ」

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