第14話バラとドクロ①③

「おまたせ、コレなら口に合うと思う」

そう言いながら薄く黄色がかった透明の液体が入ったカクテルグラスを、ちゃんと座って待っていたウラカタさんに渡した。

彼女はグラスの縁に鼻を近づけ匂いを嗅いだ。

「桃?」

「どうだろう」

そして一口飲んだ。

「桃じゃない。けど美味しい」

「でしょ」

私の手元に残したグラスの中で泡がシュワシュワ音を立てている。


「もう一杯貰える?」

「いいよ」

彼女から空になったグラスを受け取る。

そして冷蔵庫の奥に置いた、さっき開けたばかりのボトルを取り出し、グラスに少し多めに注いだ。

「どうぞ」

「ありがとう」

かなり気に入ったような彼女を見ながら、彼女に出さなかった色の似た液体を飲む。

甘さよりも、胃に多めの炭酸が入る。

色だけなら似ているから彼女に出そうとは思った。

ただ、コーラ並みにゲップが出やすくなるこの液体を彼女に飲ませていいものかと考えた。

その結果、未開封のボトルは開けられた。


ガチャ

「ただいま」

「おかえり」

「はい、あったかいミルクティー」

寺島さんから渡されたのは、私がミルクティーの中で1番好きなブランドの物だった。

「どうも」

すると、私とウラカタさんのグラスを交互に見る彼女。

「ああ、ウラカタさんにはそれにしたのか」

「そうだね」

「思い切ったことをしたなぁ」

私はその言葉には頷き、黙々と液体を飲んでいた。

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