第13話バラとドクロ①②
「飲み物買ってきて」
私が寺島さんにそう言うと、彼女は視線をテレビの奥の方にある冷蔵庫に向けた。
そういうことではないんだ。
「あったかいのが飲みたいんだよ」
カラン、コロン
そう補足すると、彼女は私を指差し、口の中のオレンジアメを大きめの音で鳴らした。
私はアメを舐めているからあなたが行ったら?と言いたいらしい。
「包装紙捨てに行くんでしょ?ついでに買ってきて下さいよ」
それを聞いた彼女は、一瞬左下を見た。
そして、ウラカタさんをじっくりと見ながら右の頬を膨らませた。
「分かった。ウラカタさんは何がいい?」
「私は冷たいものでも…」
「好き嫌いとか無いの?」
「飲み物ならほとんど大丈夫」
「…」
寺島さんが私を見ている。
「じゃあ私が飲み物買ってる間に、梅野さんのコレクションを飲ませてもらいな」
と言って、包装紙2つを左手に掴んでドアを開け、音がしないように閉めていった。
彼女が部屋を出てから、私は冷蔵庫の内ドア部分にあるミネラルウォーターを手に取り、少しはしたないとは思いながらそのまま勢いよく半分程飲んだ。
「あー、美味い。脱水だったな」
ウラカタさんを見ると、ポカーンと呆然とした表情が目に映った。
「あぁ、コレクションって水ではないよ」
「じゃあ何のことです?」
「カクテルもどき」
「もどき?」
「寺島さんとドリンクバーの機械使ってオリジナルの飲み物作る遊びを集中してやってた時があって、その名残で気に入ったやつを再現できるようにこの冷蔵庫に材料とか入れてある。そんなテキトーなもんだから、カクテルもどき」
「面白そう」
彼女は楽しそうにこっちを見ている。
「こっちで作ってるから、テレビを見て待ってて」
「手伝おうか?」
「レシピはバレたくないからその気持ちだけでいいよ」
「分かった」
カクテルグラスを用意した所でちらりとウラカタさんの方に視線を移す。今日見た中で1番機嫌の良いそんな彼女を見て、いろんな欲望が私の中で渦巻いていた。
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