第10話バラとドクロ⑨

ウラカタさんの出方や、行動パターンを見てみよう。

そう思い、スペードの2を置いた。

すぐに、寺島さんもウラカタさんも続いてカードを置いた。

「バラ1」

そう言って、二人を見ないようにその真ん中を見る。

視線は合わせたくなかったからだ。

「パス」

ウラカタさんは乗ってこなかった。

「バラ2」

寺島さんが乗って来てくれた。

ホッとして、彼女を見た。

大きな黒目が迎えてくれた。

「パス」

私がそう言うと彼女は自分のカードをめくり、ハートの3を場に出した。

そして、迷う事なく右手を横に伸ばし、ウラカタさんのカードをめくった。

出たのはハートの7だった。


「いやぁ、ラッキーだった」

しみじみとそう言いながら、オレンジアメを口に入れる彼女。

私とウラカタさんはもう片付けて、特に彼女はもうカードを次のラウンド用に、1枚伏せてあった。

寺島さんはハートの3を手札に戻すと、レ・タフロの試合を見始めた。

寺島さん気付いてないのか。

私は、ウラカタさんに視線を移した。

寺島さんをずっと見ている。

「スタジアムでやってる出店って美味いんだよね」

「そうなの?」

「席取りした後に行列出来てる所があったから15分くらい並んでさ、そしたらそこ鍋の出店だったの」

「へぇ」

アメを舐めながら器用に喋る彼女。

ウラカタさんを見ながら相槌を入れているが、ウラカタさんはただ、黙って彼女を見続けている。

「400円の割には量があったし、味も悪くなかったから良かった。悪い点を挙げるとすれば試合前だからすごい混んでた事か。試合中に行けば待たずに買えると思う。」

「なるほどね」

「まだか…」

そう言って寺島さんは視線を試合からウラカタさんに移した。

ウラカタさんは唇を隠すように丸め、無言のまま右の人差し指を置いてあるカードに指した。

「ああ、ごめん。そっちのセリフだったか」

そう言ってカードを伏せる彼女。

ウラカタさんは何故一声かけなかったのか

少し疑問に思いながらハートの4を置いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る