第5話バラとドクロ④

じゃんけんに勝ったウラカタさんがカードを1枚伏せ、寺島さんも続いてカードを置く。

チュートリアルの最中に感じた事だが、このゲームは親の時に最初に最大数宣言する「バラ3」が手っ取り早くポイントを取ることが出来る。1回成功させてみて爽快感もあった。

つまり、自分が親ではない時はドクロを仕掛けて他者の「バラ3」を防ぐのがいい気がする。

私はスペードの2を裏向きに置いた。


「バラ1」

高めの声が聞こえた。

「パス」

すぐに低めの声が聞こえた。

「ちょっと待って」

思わず声が出てしまった。

寺島さんはパスをしたからもう、このラウンドの宣言には加わらない。

つまり、私かウラカタさんが宣言する事になる。

ただ、私はドクロを置いたから宣言したら確実にミスする。

いや、仮に「バラ2」に対してウラカタさんが「バラ3」と超えてくれれば嵌める事ができる。

…いや、ダメだ。そのブラフをするには私は慌てすぎている。ウラカタさんがドクロを置いている事を願うしかない。

「パス」


私がそう言うと、ウラカタさんは自分のカードを表にした。

現れたのはハートの8だった。


「ウラカタさん1ptね」

寺島さんはそう言って、ポケットからオレンジ色のものを彼女の手元にふんわりと投げた。

「えっ」

咄嗟のことに、左手を上向きにしてキャッチを試みたが取れずに当たり、ハートの8の上に着地した。

「沢山あるし食べていいよ」

「そしたらポイントが…」

「包装紙は残るからそれで分かるでしょ」

「そっか」

そう言ってウラカタさんはタイヤのような形をしたオレンジアメを口に入れた。

「甘い」

そう言った彼女の視線の先はアメをくれた寺島さんだけで、右の頬が少し膨らんでいた。


時計回りに回る親なので、寺島さんがカードを置く。

今度はハートの4を置く。

既にリーチをかけているウラカタさんもカードを置いた。


「バラ2」

低めの声が聞こえた。

最初からバラ1を飛ばした強気な宣言だ。私はバラだから私を選んだら成功してしまう。

黙ってバラ2を成功されるよりも、バラ3を言える機会があるならした方がいいだろう。

「バラ3」

そう言ってまず私が置いたハートの4を表にする。

次に右手を伸ばして、寺島さんのカードをめくる。

ハートの2が見えた。

最後にウラカタさんのカードをめくった。

現れたのはスペードの3だった。

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