第3話バラとドクロ②
「ウラカタさんも白いiPhoneなんだ」
寺島さんが、ウラカタさんを充電スペースに連れてiPhoneの充電をさせている。折り畳み式のカバーと水色のストラップが付いていた。
「そうだけど」
「じゃあ、ウラカタさんは私の隣に座って」
「あぁ、はい」
iPhoneを繋げた2人がテーブルの向こうに戻る。
私の向かいにウラカタさんが、その右側に寺島さんが座っている。
「トランプ持ってたよね?」
寺島さんが私に聞いてきた。
「あるよ」
言われて鞄の中からトランプを出す。
「ハートの1〜9とスペードの1〜3の12枚だけ出しといて」
そう言うと彼女はテレビのリモコンをいじり出した。
カードの山の中から指定の12枚を抜き出してる最中、ウラカタさんは何もやることがなく両手を太ももに乗せているような行儀良い姿勢で私とテレビを見ていた。
テレビは、レ・タフロの試合が流れている。
「出し終わったよ」
「バラとドクロのルール、2人とも知らないんだよね?」
「うん」
「はい」
「そしたら、今から軽くやりながら説明するからなんか紙に大事そうな所を書いといて」
そういって私に紙を渡すと、
寺島さんは、ハート3枚とスペード1枚の4枚の組を3つ作り、一組ずつウラカタさんと私に渡した。
「その4枚が手札で、数字は関係なくてこのゲームでは柄だけ使うからそこを意識してね」
私の所にきたハートの4〜6は全て同じ価値ということか。
「バラとドクロって名前から分かるようにハートがバラで、スペードがドクロを表すの」
赤がバラで黒がドクロ。
「まず、親から順にカードを1枚裏向きにテーブルの自分の近くの所に置くの」
と、寺島さんがカードを1枚裏向きに置いた。
「親から順って時計回り?」
「時計回りだから次、梅野さん置いて」
特に考える事なくハートの4を裏向きで置き、ウラカタさんが裏向きでカードを1枚置いた。
「全員が1枚以上置くと、手番が来た人は2つ選択肢があって、今回は1つ目の宣言をするね」
「宣言?」
「宣言っていうのは、今からテーブルに置かれているカード達をめくって、ドクロを引かずにバラをこの枚数取るぞっていう宣言のこと。」
ドクロはハズレなのか。
「枚数の条件は?」
「最低1枚。最高は出されてる裏向きのカードの合計、今回なら3枚」
「分かった。」
「例えば、バラ1って私が宣言する。そしたら次の梅野さんはそれを超える宣言をするか、パスするかの2択なの」
「パスするとどうなるの?」
「その後の手番が来なくなるくらい。最終的に誰かの宣言に対して、他の人が全員パスして降りたら次に進む」
「じゃあバラ2」
「そうすると同じように、ウラカタさんはこれを超える宣言をするか、パスをするか選ぶ事に」
「パス」
「で、私に回って来て、えーっとパスかな」
「これで次に進むのか」
「そう、宣言に対して他の人全員がパスしたら、実際にバラを取っていくんだけど2つ条件がある」
「2つって?」
「1つ目は、重なっているカードは上から1枚ずつめくる。」
「重なっているカードなんて無いけど」
「それは後で出てくる」
「そう」
「2つ目は、他の人の所のカードは、自分の所が無くなった後じゃないとめくることが出来ない。」
「自分の所を先にめくるって事か」
「そう」
自分で置いた裏向きのハートの4を表向きにする。
「あと1枚バラを引けば良いんでしょ」
「そう、私かウラカタさんのどちらかを引いてね」
ウラカタさんの目を見る。相変わらず困ったような上目だ。寺島さんを見る。いつもの大きい黒目が見てくる。
寺島さんはルール知ってるんだし、チュートリアルだから普通にバラを置いてるだろう。
そう考え、右腕を伸ばして寺島さんのカードをめくる。表になったのはハートの2だった。
「おめでとう、宣言に成功したからこれで1ptが貰える。ちなみに2pt取った人がゲームの勝者になるんだ」
「え、これだけ?」
「いや、まだあるよ。次は宣言しない場合の方をするから自分の置いたカードを手札に回収して」
カードを回収しようとするウラカタさんと目が合う。彼女はカードをこちらに一瞬見せてから手札に回収した。
見えたのは黒だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます