第2話 バラとドクロ①

「なるほどね」

テレビを見ながら私は独り言をつぶやいていた。

2日前にシーズンが開幕し、ランズが1-0で勝ったことはニュースで知っていたが映像では見ていなかった。

ここにくれば、大体の試合の再放送をやっているから見れると思い、いの一番にやって来て今までずっと見ていた。

好きなチームが勝つと分かっている試合を見るのは、スリルが無いけど安心して見ていられる。ただ、今回の場合は安心すると言うよりかは退屈したと言うべきか。それくらい遅すぎる先制点だった。

とりあえず、見たかったものが見れて納得した訳で試合終了するまでの、何も起こらないことが分かっている映像には興味が薄れた所でふと、思った。


寺島さん来ないな

今日は休みなのか?休みならそろそろiPhoneの充電が終わるから帰ろうか

と、携帯の所へ確認する。

75%か。じゃあ、あと5分したら帰ろうと決めて椅子に戻って面白みの無くなった試合を見る。


ランズの選手に審判から警告が出された頃、部室のドアがゆっくりと開いた。

「しんどい…」

ロングヘアの子が辛そうな表情でやってきた。

見たことあるような、名前は出て来ないけど。

よく分からない状況なので呆然として声をかけれずにいると、彼女の後ろ側に人がいる事に気付いた。

あぁ、彼女が背負っているのは寺島さんだ。

背負われていた寺島さんを椅子に座らせると彼女は、

「じゃあ、これで」

と言ってドアの方に戻ろうとしたが、スカートの裾を寺島さんの右手が掴んでいて動けない。

「寺島さん、今度は何?」

彼女が呆れた感じで言った。

寺島さんはその大きな黒目の視線の先を彼女から私に移し、

「梅野さん、ウラカタさん連れてきたからバラとドクロやろう」

と言った。

状況がよく分かってない彼女を見てみる。

自信のなさそうな上目が私と寺島さんとの間でキョロキョロしている。

あぁ、確かにウラカタさんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る