第3話 幕間・夜のバックヤード

「しかし、種族を越えて従業員を雇おうと決断するほど、兄者が言語の違いや本の買い取りに頭を悩ませていたとは……」

「勿論、それもある。だが、他にも……ニーナを手元に置いておいた方が良いと思う理由があってな」

「他? 一体どのような……」

「……弟よ……ツヴァイよ。お前は覚えていないか? 我らに名を与えたあの者の事を」

「我らに名を……。そうか。たしかにあの者は我らに……」

「そうだ。あの言葉を思い出したのだ。ニーナの様子を見ているうちにな」

「兄者は、ニーナがあの者と関係があると?」

「まだ、わからぬさ。だが……その可能性もある。しばらく、様子を見たい」

「わかった……。私も、ニーナの様子は気にかけておこう」

「お前は、意識せずとも既にニーナを気にかけているだろう? サイズの違いによる衣食住の不便さなど、私は考えもしなかった」

「茶化さないでくれぬか、兄者……」

「とにかく、全てはこれからだ。明日の朝も早い。今日はもう寝るとしようか、弟よ」

「そうだな……そうしよう。おやすみ、兄者」

「あぁ。おやすみ、弟よ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る