No.100『勇者になった俺が女子高生魔王と共闘し、空飛ぶ美少女型潜水艦で宇宙人の母船UFOに特攻して、気づいたらサラリーマンに転生してる夢』

根岸「あぁ……」


佐原「あぁぁ……」


根岸「見渡す限り森、どこまで歩いても森……」


佐原「風景に違いが無いよね、ループはいったわこれ」


根岸「遭難か……」


佐原「いえす!」


根岸「……」


佐原「……」


根岸「……」


佐原「あ! 違う、『そうなんです!』」


根岸「いや、いいけど。―――ああもう、ここはいったいどのあたりなんだ。街はどっちだ……」


佐原「GPSによると、今はこのへん」


根岸「あーなるほどー?」


佐原「街はいったい、どっちなんだ!」


根岸「えぇ……?」


佐原「どうした?」


根岸「ちょっとまって、なにそれ」


佐原「これか、これは衛生と通信することによって現在地がわかるシステムの端末だよ。ほら、このピコピコしてるのが現在地」


根岸「お……、おぅ……」


佐原「こんなものじゃ、お腹は膨れないんだ!」


根岸「投げ捨てやがった! 待てこら!」


佐原「そんなことより、食べられるウサギとか探そうぜ」


根岸「えぇぇ……、なんかもう自主的に遭難した感じになった……。あと何だ、食べられないウサギとかいるのか」


佐原「全国的に流通してないウサギはダメだ」


根岸「そもそもウサギってスーパーとかで買えたっけ……」


佐原「お! 根岸根岸!」


根岸「なんだ、次々と……」


佐原「キノコみっけた!」


根岸「みっけた、ってもう食べて―――」


佐原「うまくもまずくもない!」

佐原「毒の味もしない!」


根岸「……?」


佐原「あ、群生してるぞこのキノコ!」

佐原「しばらくはこれで食いつなげるな!」


根岸「……あぁ?」


佐原「焼いたら美味くなるかな?」

佐原「そんで、醤油があればいけるな」


根岸「食べた人の、周りの人が幻覚を見るキノコ?」


佐原「……」

佐原「……」


根岸「佐原が2人に見える……」


佐原「マジか!」

佐原「ほんとだ! 俺がいる!」


根岸「えぇ……、それぞれで喋ってる……」


佐原「もしやこのキノコは、アレだ」

佐原「アレだよアレ! もぐもぐ。ううむ、うまくもまずくもない」

佐原「焼いて醤油でいけるって」


根岸「おぉぉ……」


佐原「この緑色、間違いない! 1upキノコだ!」

佐原「もぐもぐ、うまくもまずくもない」

佐原「だから焼いて醤油だってば!」

佐原「ライター拾ったー、これで勝つる!」

佐原「バターもあるぜ! これでバター醤油だ!」

佐原「あぁ……、刻が見える……」


根岸「待て、待て待て待て! とりあえず食べるのをやめろ!」


佐原「大丈夫だって、根岸の分もあるから」

佐原「うまくもまずくもない!」

佐原「キノコ鍋いえーい!」

佐原「いえーい!」

佐原「彗星はもっとばーって光るもんな……」

佐原「根岸ダメだ、こいつら話きかない!」

佐原「赤いキノコみっけた! これで勝つる!」


根岸「収集がつかない……」


佐原「赤いキノコを食べたやつが巨大化したぞー! 殺せー!」

佐原「もぐもぐ、うまくもまずくもない」

佐原「このキノコ鍋をつくった料理人は誰じゃ!」

佐原「鍋こっちおかわりー」

佐原「ダメだ根岸、鍋の数がどんどん足りなくなる! どうしよう!」

佐原「でかい俺ー、街とか見えるー?」

佐原「これは、もしかして1upキノコじゃないか!?」

佐原「俺が増えてる!?」


根岸「おぉぉ……、いまだかつてないカオスっぷりだ……」


佐原「ひとまず」


根岸「お、ようやく話ができる佐原が」


佐原「あれは1upキノコだわ」


根岸「実在するのか……」


佐原「事実は小説より奇なりだよ」


根岸「奇妙だなぁ……」


佐原「むしろ事実は小説よりキノコなりだよ」


根岸「キノコだなぁ……」


佐原「……」


根岸「……」


佐原「すごい光景だな」


根岸「視界が、全部佐原だ」


佐原「キノコのリゾット地中海風、これは根岸の分だ!」

根岸「なんか料理がレベルアップしてる……」

佐原「遭難時はまずは腹ごしらえだぞ」

佐原「シェフを呼べ! シェフを!」

佐原「立てよ佐原! この腐った世の中に、我々佐原は何を思うべきか!」

佐原「ははは見たまえ、人がゴミのようだ、あははははは、うひょひょひょひょ」

佐原「これは、デリシャス! 三ツ星をキミに!」

佐原「住民手続きはこちらです、順番に整理券をどうぞ」

佐原「火事だー!」

佐原「俺が増えてる!?」


根岸「ああこれはひどい……、まとまる気がしない」

根岸「……やっぱりこのリゾットにも入ってたか」


根岸「増えてるじゃん俺も……」


佐原「根岸大変だ! 村ができて火事が起きた!」


根岸「文明レベルが急上昇してる……」

根岸「おいあれ、列車! 蒸気機関車!」

根岸「リゾットが地味にうまい」

根岸「これもう村とか作ったら遭難じゃなくなるのかな」


佐原「次の駅はー、麓の街ー、麓の街ー」

佐原「アメリカか、悪くない……、チケットは賭けで手に入れたしな」

根岸「いや陸路じゃアメリカにはつかないだろ」

佐原「これ乗れば帰れるんじゃね?」

根岸「蒸気機関が発見されたのか……」

佐原「しかもロボに変形するんだぜ!」

根岸「乗ってる人はどうなるんだよ」

佐原「ぷちゅん、だよぷちゅん」

佐原「宇宙から侵略者が! くそぅなんだってこんなときに」

佐原「飛行機で敵のUFOにつっこむんだ!」

佐原「俺にまかせな、なんだって操縦してやるぜ! でも飛行機だけは勘弁な!」

佐原「お客様の中に勇者様はいらっしゃいませんかー!」

佐原「俺が増えてる!?」


根岸「なんだこれ……」


……


……


……


根岸「はっ!」


佐原「はっ!」


根岸「夢オチか! 夢オチなのか!?」


佐原「すごい夢だった……、勇者になった俺が女子高生魔王と共闘し、空飛ぶ美少女型潜水艦で宇宙人の母船UFOに特攻して、気づいたらサラリーマンに転生してる夢だなんて……」


根岸「転生先のほうが地味なんだな……」


佐原「しかも登場人物、女子高生もなんもかんも全部俺」


根岸「うわぁ……」


佐原「はー、とりあえず、何事もないな」


根岸「遭難してるけどな」


佐原「いえす!」


根岸「……」


佐原「……」


根岸「……」


佐原「あ、違う違う『そうなんです!』」


根岸「まあいいけど」


佐原「はー、遭難かー」


根岸「夢の中と比べれば、いくぶんか現実的だな。―――お前、手に持ってるそれは……」


佐原「ん? ―――あっ!」


根岸「うわぁ……」


佐原「1upキノコ……」


根岸「……」


佐原「……」


根岸「ほんとに夢オチ?」


佐原「夢だけどー! 夢じゃなかったー! ってやつか!」


根岸「それ、食べるとまた佐原が増えるのか?」


佐原「そんなキノコあるわけないじゃないか。フィクションじゃあるまいし」


根岸「だよなぁ、実在したら、それこそそのキノコを食べた動物とかが増えるもんな」


佐原「もぐもぐ」


根岸「……チャレンジャーめ」


佐原「うん、うまくもまずくもない」

佐原「うんうん、うまくもまずくもない」


根岸「……」


佐原「うわあ!」

佐原「俺が増えてる!?」


根岸「あぁ……、ループはいったわこれ、二周目だわ……」


佐原「俺たちは、悪夢のようなこの現実から抜け出すことができないのか!」

佐原「もぐもぐ」

佐原「俺が増えてる!?」


根岸「遭難よりタチ悪いな」


佐原「「「そうなんです!」」」


根岸「……」


佐原「「「……ふふ」」」


根岸「おいこら、「やっとスムーズに言えたー」みたいな顔するんじゃない」




閉幕

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会話シチュエーションコント『サハネギ』 1~100 サハネギの人 @sokobake

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