No.95『ひょっとして俺たち、入れ替わって……』
朝比奈「ひょっとして……」
横田「俺たち……」
朝比奈・横田「「入れ替わって……」」
朝比奈・横田「「ない!」」
横田「ないね。入れ替わってない」
朝比奈「そのままかー」
横田「そのままだね。入れ替わってない」
朝比奈「残念だわー」
横田「そうだね」
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佐原「……」
根岸「……」
佐原「いや誰だよ!」
根岸「誰が。どれが」
佐原「いや、なんか、さっきの」
根岸「入れ替わってない人たちだな」
佐原「……そう、その、入れ替わってない人たち。誰なんだよ!」
根岸「知らないよ。他人だよ。非知人だよ」
佐原「ひちじん……」
根岸「ひちじん」
佐原「なにその日本語」
根岸「知らんよ。非日本語だよ」
佐原「ひにほんご……」
根岸「ひにほんご」
佐原「……」
根岸「……」
佐原「……あー、俺も入れ替わりたいなー」
根岸「何と」
佐原「女子高生」
根岸「なんかもう発言がヤバイ。いろいろヤバイ。犯罪ちっくだ」
佐原「とある筋の情報によるとな、入れ替わりたい相手と一緒に階段を転げ落ちると、中身が入れ替わるらしい」
根岸「ああ割と古い情報だな。なんだ口噛み酒がどうこうという話ではないのか」
佐原「なにそれ」
根岸「いやいいけど」
佐原「というわけで、ちょっと女子高生捕まえて一緒に階段転げ落ちてくる」
根岸「なにその事件」
佐原「いってくるわ!」
根岸「待って友人として止め―――、られなかった、行動力ありすぎるだろ……」
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根岸「どう考えても事件だよなぁ……」
佐原「ただいま!」
根岸「ああ、よかった。特に事件は起きなかったんだな」
佐原「ダメだわ、女子高生マジ足はやい」
根岸「別の事件が起きていた……」
佐原「というわけで、ちょっと女子高生は諦めるわ」
根岸「うん。諦めてくれ。あと通報されろ」
佐原「ちょっと階段転がってくる!」
根岸「……なんで?」
佐原「女子高生が捕まらなかったからに決まってるだろう!」
根岸「……。……うん? 目的は?」
佐原「女子高生と、階段を転げ落ちる!」
根岸「すると?」
佐原「?」
根岸「いやハテナじゃないよ。なんだそれ、目的どこいった」
佐原「……あ! ああそうそう、入れ替わるんだよ!」
根岸「そうだね。一人で転がっても―――」
佐原「そこの階段いってくるわ!」
根岸「いやだから止ま―――、はやいってば……、止められないってば……」
佐原「とぉりゃー!」
根岸「頭から落ちてった!」
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根岸「……死んでる? おーい佐原ー」
佐原「……うぅ……」
根岸「お、生きてる」
地球「ひょっとして……」
佐原「俺たち……」
地球・佐原「「入れ替わって―――」」
地球・佐原「「ない!」」
根岸「スケール」
佐原「入れ替わらなかったわー」
根岸「地球が喋った……」
佐原「うむ。事実は小説よりキナリーってやつだよ。……キナリー、応答してくれ! 無事なのか、キナリー!」
根岸「誰だよキナリー」
佐原「ひちじんだよ、ひちじん」
根岸「そうか、ひちじんか」
佐原「……つーか、やっぱりアレかねぇ、入れ替わるとか、フィクションなのかねぇ」
根岸「まあ、フィクションではあるよね」
佐原「そうだよなぁ、たんこぶできただけだったわ」
根岸「頭から階段落ちてったのにそれで済むのか」
佐原「……フィクションっぽい」
根岸「まあうん、だからフィクションだよねこれ」
佐原「フィクション……、つまり、入れ替わりもある!」
根岸「あるかなぁ」
佐原「いってくるわ!」
根岸「止めるのはもう諦めたわ。思い切りと行動力がありすぎる」
佐原「とりゃー!」
根岸「頭から海に飛び込んだ! っていうか何で海に」
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佐原「……うぅ……」
根岸「お、生きてる。しぶといな」
佐原「ひょっとして……」
海「俺たち……」
海・佐原「「入れ替わって―――」」
海・佐原「「ない!!」」
根岸「スケール」
佐原「入れ替わらなかったわー」
根岸「海も喋ったなぁ」
佐原「事実はショウセツより奇なりだよ。……ショウセツはダイセツの弟でな、普段は兄よりも温厚なんだが、キレると手がつけられないんだ」
根岸「ひちじん」
佐原「よし、海がダメなら、山だ!」
根岸「なんかもう目的は入れ替わることそのものなんだな」
佐原「……ところでさ」
根岸「うん」
佐原「方法って頭突きでいいのかな?」
根岸「知らんよ……」
佐原「まあいいか、次は山だ!」
根岸「入れ替わってどうするんだ……」
佐原「そりゃー!」
根岸「頭から森に! ……スーパー頭突きだなあれ」
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佐原「……うぅ……」
根岸「生きて帰ってきたか」
佐原「ひょっとして……」
木「俺たち……」
木・佐原「「入れ替わって―――」」
木「―――?」
佐原「―――?」
木「これは……」
佐原「ひょっとして……」
木「入れ替わったー!」
根岸「えぇ……」
木「うごけねぇ!」
根岸「木がしゃべってるなあ」
木「木じゃないよ佐原だよ! 気づいて、本物は俺なんだ!」
根岸「ああ、うん。わかった。佐原な。―――あっちで女子高生追いかけてるほうが木な」
木「ちょ、入れ替わって早々、人の身体で好き勝手しやがって!」
根岸「やってることさっきの佐原と変わらないけど」
木「俺はもっと上品だよ! あいつのには欲望しか感じねぇ!」
根岸「本人にしかわからん違いだな」
木「まあいいや、俺はもう木として人生をエンジョイするんだ。……人生、いや木生?」
根岸「元に戻るつもりはないのか」
木「頭突きできないもん。木だと」
根岸「……なるほど」
木「……モトニモドシテ……」
根岸「えぇ……」
木「たすけてー、うごけなーい」
根岸「……」
木「へるぷみー」
根岸「いやー、っていうか入れ替われるもんなんだなぁ。頭突きで」
木「話を逸らした!」
根岸「だってあの女子高生追いかけてる人と関わり合いたくないもん」
木「ひどす!」
根岸「……なんで入れ替わっちゃったかねそもそも」
木「まあ、木だけはイケる気がしてた」
根岸「なんで」
木「事実は小説より木なりって」
閉幕
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