3章 決別、自分を変える

5. 歪んでしまった関係(水曜日)

1話 戻る条件とは?

 5日目の朝だ。朝なのに、部屋がやや暗いぞ。

 小雨の音が聞こえて、なるほどなと思った。最近は晴れが続いていたから、ちょうどいいや。


 体が元に戻っている……わけにはいかないようだ。

 だけどぼくは、楽観視していた。日常生活には支障がないからだ。けど戻ろうとする意思を維持することが大事だと思う。



 戻れるとしても、条件があるはず。ありがちな発想だけれど。

 戻れることを前提にしよう。

 たとえば、ぼくがゆきになる理由は、ゆきに呼ばれたからだろうか。するとそれを解決すれば、ぼくは元の姿に戻れる。

 戻れない場合は、与えられた課題をクリアしていないか、単に偶発的な出来事によって引き起こされているときだ。課題をクリアした後のことは、天に身を委ねるしかない。


 もう一つ考えなくてはいけないことがある。それはぼく自身がゆきである可能性だ。ゆき自体に問題があるようだし、ぼくという人格が彼女の歪みから生じてもおかしくない。

 けどぼくという人格は、ゆきとは別人格だから、首を傾げざるを得ない。記憶の食い違いに関しては、男女差の微妙な違いぐらいだったが、穏根川の件とか、覚えていないこともある。


 ゆきから与えられた課題、ゆき自身が抱える課題など、関連性があるのだろうか。

 仮にぼくが前者の課題をクリアしても、ゆき自身が後者の課題をクリアしたことにはならない。これでは本人のためにならない。

 しかも、これらの問題が長引いたらどうする……?


 クシュンとくしゃみを飛ばした。汚ないな。朝方だから冷えている。体が冷えていて、身を寄せた。風邪の症状でもあった。

 ぼくはきのう、医者に診てもらった。風邪を引いていて、貧血気味だったようだ。風邪の処方箋を渡された。つらいようなら、生理痛のお薬を飲みなさいとも。生理生理といわれると、散歩の時間になると、飼い主にすり寄ってくるワンちゃんのようだ。

 偏頭痛については、生理と関係しているのか、たまたま時期が重なったのかは不明らしい。

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