13話 迷いを払う
「物事を暗く考えないほうがいいんですかね」
ぼくの言葉に対し、綾子さんはニッコリしながら語を継ぐ。
「そう。肩に力を入れないでね」
肩の力が自然に抜けた。来る前は強張っていた肩が、嘘のようにほぐれていた。
「お蔭さまで気が楽になりました!」
ぼくが感謝の言葉を伝えると、綾子さんは「よかった」と口にした。彼女はまるで、自分のことのように嬉しそうな顔をしていた。
「でも私、友紀ちゃんのこと、不安に思うな……」
「だいじょうぶですよ。励ましてもらったし」
努めて明るい声を出す。心の底からそう思った。
「お守り、持っていかない?」
お守り? 綾子さんがくれる物はもらっておきたい。
「ありがとうございます。何のお守りですか?」
恋のお守りだったりして……?
「全体運を上げるお守りだよ。お金はいらないよ。私がお金を払っておくから」
なぜかガッカリする。その気があるの? と一瞬思ったが、あまり気に留めなかった。全体運のお守りもいいな。けど、奢りになっちゃった。
渡されたお守りは紫色で、真ん中に
「次のお正月に返してね」
「はい。けど、なんかわるい気がします」
つい、申しわけなく思う。数百円とはいえ、綾子さんの自腹だからだ。
「いいの。だってゆきちゃんは、わたしの妹みたいな人だからね」
綾子さんの言葉が、周りに凛として響いた。綾子さんの瞳からも温かさを感じた。
性別がどうこうとは関係なく、綾子さんの気持ちを素直に受け取りたい。
「ありがとう、綾子さん!」
しんどいことが続いている。けど心から嬉しくて、笑顔になれた。
綾子さんが鳥居の前まで見送ってくれた。有り難い気持ちと安心感がある気がする。一つ目の理由は、綾子さんと話をして気持ちを整理したこと。もう一つの理由は、お守りの
ぼくは
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