9話 本棚の傾向

 ぼくは自宅の部屋に戻っていた。

 「月のもの」によるためか、風邪っぽいダル気さがあった。ぼくは重たい体を引きずったまま、室内着に着替えた。膝上丈のショートパンツに、Tシャツの上にカーディガンを羽織った。足元が少し肌寒いかもしれないけれど、毛布をかけるほどの寒さではなかった。公園の散歩はまだしも、ランニングでもしていたら、体調がもっとわるくなっていたと思う。


 頭の中で、兄の言ったことが思い出された。「外側と内側とでは違う」とは、何のことか……。今の状態を指すわけではなく、今までの自分(ここ2~3年)のことを指している。ぼくの記憶と彼女ゆきの記憶が一致するわけがないから、手がかりがない。

 じゃあ、部屋の中を捜索しよう。


 部屋は落ち着いた雰囲気で、物は理路整然と片づけれている。

 最初に目を付けたのは、本棚だった。読む本とそこで得た知識は人を作るから、「ゆき」を知るためのヒントになるかもしれない。

 本棚には、一般書籍と漫画まんががあった。8割くらいが本で、残り2割くらいが漫画だった。

 新書や単行本の一般書籍は、自分と読む傾向がそれほど変わらなかった。SFやミステリ、ファンタジーだった。恋愛小説もあるけれど、3冊程しかないから少なめだ。高校の友達がお勧めしてくれた本もあった。ソウ君に勧められて1/3ほどで挫折した宇宙に関する物理学の本とか、1年の頃そこそこ親しかったI田という男子生徒から勧められた脳トレ法の紹介本といったユニークな本などだ。

 漫画は、少女漫画が主流で少年漫画もまばらにあった。いずれも雑誌ではなく、単行本だった。毎月や毎週出される雑誌より、気に入った作品や興味のある作品を少しだけ持つ。自分のことでもある。そして、少女コミックは元から持っていたけれど、割合が少年誌を超えるほど持っていなかった。

 少女漫画の割合が増えたのと、恋愛小説が1冊増えただけで、他はほとんど変わらないようだ。やっぱり、ゆきと思考パターンが似ているのかもしれない。それだけでは、ヒントにならないけれど……。


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