2. 支え合おう(日曜・休日)

6話 どこか遠い

 今日は日曜の朝。カーテン越しから光が漏れているのが見えた。

 目を半分細めて、誰にも聞こえない程度のため息をつく。


 ぼくは菅原とものり、いまはゆきと呼ばれる。土曜日の朝に起きたら、ぼくは少女になっていた……。


 はっきりとした理由はわからない。だからといって、学校に行かなくなるのはまずいから行った。とはいえ周囲の人との関係は、概おおむね変わっていなかったから、その点は安心している。


 今日は、この姿になってから3日目の朝だ。少し考えるところはある。けれども、いまは菅原ゆきとして生きるしかない。あわよくば、ゆきのことを知るヒントも知りたい。



 朝食を取り、歯磨きをして、机の前に向かう。


 鏡さえ見なければいつもと変わらないが、現実と向き合わなくちゃいけないと思い、チラチラと不自然に視線を投げかける。



 勉強しているときは無心になれる。将来のためにやっているけれど、現状、現実逃避でもある。脳の男女差が、得意分野の違いをつくるという話が頭を掠めた。けど、ぼくはあまり関心がない。得手不得手や好き嫌いは誰にでもあるから。


 だけど、この鈍痛は性差を許してくれない。昨日からだ。お腹が少し重たい。ノートから左手を離し、下腹部を擦った。


 どこか遠い場所に行ったような心地だ。けど薬を飲まなくてもいいだけマシなのかもしれない。少しは気になるけれど、勉強を妨げるほどでもなかった。

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