第7話 修羅場
鳥のさえずりが耳に入り瑛斗は目を覚ました。目の前に寝ているアリスはまだ寝ている。その時、瑛斗の後ろから寝息が聞こえる。恐る恐る後ろを振り向くと葵がそこに寝ていた。瑛斗は2人に挟まれるように寝ていたのだった。まだ葵は目を覚ましていない。
「この状況…どうしたら…」
瑛斗はゆっくりと布団から抜けようとした時、腕を誰かに掴まれた。その握られている手はかなり強かった。瑛斗はその方向を見た。
「瑛斗〜?昨日ここでアリスちゃんと何してなのかなぁ〜?」
そう言う葵。瑛斗は仕方なく元いた場所に戻り葵と向き合った。ニヤニヤとしながら瑛斗を見ていた。
「アリスと話してたら…寝ちゃってたんだ。それ以外には何もしてないよ」
「本当?んー…怪しい」
「怪しいって…本当に何もしてないよ!アリスに聞けばわかる!」
大声を出してしまった瑛斗。それを聞きアリスが起きた。そして葵と向き合っている瑛斗の背中を持つ。
「エイトォ〜…昨日の続きしよ〜…」
「昨日の…続き?何したの瑛斗?」
「い、いや!?何もしてないよ?多分アリスは寝ぼけて…」
「エイトの〜あの、かたーい棒を…触らせて…?」
「硬い…棒?」
葵は小さくつぶやいた。硬い棒、つまり瑛斗の瑛斗。怪しく思っていた事が当たっていた。
「ちょ!それは言うな!葵に怒ら…」
アリスの方を見て口を塞いでいた瑛斗の背中になにか、感じてはいけない雰囲気を感じた。恐る恐る後ろを振り向くと葵が怒った顔をして瑛斗を見ていた。
「それって…浮気?」
「違う!浮気なんかじゃない!俺は葵の事が―」
言おうとした瞬間、瑛斗の頬に鈍い痛みを感じた。葵がグーで瑛斗の頬を思い切り殴ったのだった。殴られた瑛斗はベットの上で仰向けになっている。そして口が切れ血がシーツなどに付いてしまった。アリスがベットから降り部屋から出て行く。そして殴った本人、葵がハッと我に戻り瑛斗に近づく。部屋ドア開き、アリスが救急箱らしき箱を持ってきた。アリスに膝枕をされ、そして、ガーゼらしき布を取り出し血を拭いていた。
「ご、ごめん…瑛斗。当たるとは思ってなくて…」
「大丈夫だよ…葵のそう言うところ、好きだよ」
「うん…ありがとう。ごめんね、瑛斗…」
膝枕に対しては葵は怒っていなかった、というよりも瑛斗を殴ってしまい、心配でそれどころではなかったのだった。アリスの治療が終わり、ようやく動く事ができた瑛斗。葵もそれを見て安堵の表情を浮かべる。
アリスも昨日の事をすべて話し、「なら仕方ないね」となぜか納得してしまった葵。3人はその後、アリスの部屋でまた喋り続けているのだった。
「そうだ。2人ってここから出た事ないよね?」
話していると、アリスがそう言った。そういえばこの世界に来てから外へは出ていない。窓からうっすらと外の景色は見えていたがちゃんとは見たことはなかった。
「うん…行ってないよ」
「外、行ってみる?エイト、アオイ」
「行っていいなら…行こうかな。葵も行くよな?」
「うん!」
葵の返事を聞き、アリスが微笑むとアリスは2人の着ている服を見た。2人の着ている服は制服。この世界に来た時のままだった。
「その前に…着替えよっか。私が適当に服あげるからさ」
アリスがそう2人に話し、部屋のドアへと向かって行く。そういえばこの3人は昨日お風呂に入らずに寝てしまっていた。そのことも思い出したアリスは外へと出る前にお風呂に入る事を2人に伝えた。
3人は部屋を後にし建物内の浴室へと向かって行く。そしてそれぞれお風呂に入った。その浴室は無駄に広く、瑛斗に関しては貸切状態で使えていた。
それぞれお風呂を終え、次に服を変えるために建物内にある衣装部屋へと向かって行った。
衣装部屋には、この建物内にいる人たちの服などがたくさん置いてある。そこから使わそうな服を適当に選び、2人はそれを着た。
着替え終わり、そして3人はこの建物の出入り口はと向かって行く。階段を下り出入り口のある階へと着いた。出入り口まで歩き3人はドアの前に立っている。
アリスがそのドアを開ける。
2人はこの世界に来て、初めて外へと出るのだった。
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