俺はギタリストなんだが、なぜか時空のおっさんについて考えることになった:β
第5話 ベータ
”ぬわあぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!”
……。
……。
「……またか。」
今、俺の目の前でパパンがやられた。
そう。大魔導士ゲスに焼き殺されたのだ。
俺は、なーんとも言えない喪失感を味わいながら、静かにスーパー家族コンピューター(通称 カゾコン)の電源をoffにした。
「マジで勝てない。なぜだ……。どんだけHPあるんだよコイツ。」
長時間プレイをしていたせいで、目がシパシパする。
ふと時計を見ると、もう23時になりそうだった。
かれこれ五時間以上はプレイしていたことになる。
”ぐぅぅー……”
我に返れば、腹が鳴っていた。
この手のゲームを始めると、食事を取るタイミングを完全に失うものだ。
俺は空腹をこらえることが出来ず、何か食べ物がないかと台所を探し回った。
「ない。みかんしかない。」
俺は、みかんを手にとりマジマジと見つめたが、食べる気分ではない。
俺が食べたいのは柑橘類なんかではなくて、俄然ガッツリ系なのだ。
すごーく、すごくお腹が減っているのだ。
……とは言えこの家には食材のストックもないし、かといって今から買い出しに行って、それから料理をする気にもなれない。
だって、もう3回もパパンがぬわってしまったんだからな。
「やっぱり、幼少期では無謀か……。」
随分と頭が疲れたこともあって、結局俺は適当に出来合いの夜食を買いに出ることにした。
外に出ると、ひんやりとした空気が頬を撫でた。
周囲は静まり返っていて、遠くの方で車のエンジン音がうっすらと聞こえた。
久しぶりに外に出た俺は、軽く深呼吸をしてから背筋をクッと伸ばした。
「っー。さて、何にしようかな。」
俺は、とりあえずG徳寺の方に向かって歩き出した。
夜遅くとなると、住宅街の人気は少なくなる。
空を見上げても星の光が小さい。
だが、困ったことに空が狭い。
建物、電線…これが都会か。
同じ地球でも、場所によっては空の見え方が全く違うんだろうなぁ……
と、俺は別に詳しいわけでもないのにそれっぽい事を考えてみたりした。
うーん、なんか牛丼食べたいな…。
俺は歩きながら、叉市つくると最後にあった時の事をなんとなく思い返していた。
「うーむ……。あれからもう、結構、経ったなぁ。」
ボーカルが突然消えてSorrys!の活動が休止してからも、色んなことがあった。
そもそも俺はSorrys!としての活動を本格化させるために東京に出て来て、ここでの生活のほぼ全てをSorrys!に捧げたのだ。
ライブ、ベースの練習、曲作り、ライブ、ベースの練習、曲作り……。
本当に、時間の全てをSorrys!に費やしたような気がする。
そんなSorrys!という大きな存在が突然活動を止めたので、俺の心には大きな、おっきな、おぉーっきな穴が空いた。
俺は俺なりに、なんていうか……
陳腐な言葉かもしれないけど、途方に暮れた。
それで、俺はすごーーーく考えた。
もう、めーーーーーーっちゃ考えた。
これから俺は何をするべきなのか?
いつか再開するであろうSorrys!のため、更にベースの練習に打ち込むのか。
あるいは、再開の時に勢いをつけるために、新曲を大量に用意しておくのか。
それとも、それとも、それとも……。
考えだすとキリが無かった。
そして俺が真っ先にとった行動は、そう。
カゾコンを買うことだった。
無性にカゾコンがしたくなったのだ。
ガキの頃、”一時間以上やってはいけない”と言われていたあのカゾコンを、今なら思う存分やってもいい。
誰からも怒られることはない!まさに今が好機!
……ということに気がついてしまったのだった。
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