Beat It!! - 4
「これ? これかな?」
DJミキサーって無駄にツマミが多すぎます!
どれ捻っても繋ぎのループフレーズしか出てこないじゃないですか!
どれだ? どれですか本命は!
(こっちかな? いや、こっちだったか?)
人に演らせるなら分かりやすいように付箋でも貼ってて下さい!
いきなり振られたってできるわけないじゃない!
「うひぃー!」
人生で最も難しいモグラ叩きの様相を呈してきましたよ!
流れるようなアゲアゲプレイからは程遠い、敢えて名付けるならドリンクバーミックス。無秩序なドリンクを混ぜ合わせたドドメ色のデンジャラスドリンク。
「DJのくせにミキサーも使えねえの?」
うるさいうるさいうるさい!
必死なんですよ? 無責任なヤジとかおよしになってねAUDIENCE!
女子高生の一生懸命を見守ろうって寛大さは持ち合わせてないんですか?
「山田はDJじゃないのに!」
ギクシャクズレズレのプレイに客席から容赦ないブーイングと怒号が飛んでくる!
「ヘッドホンの使い方も知らねぇのかよ! 耳に掛けんだよ耳に!」
外せない理由があるんですよ! 女子高生的な事情があるんです! ちゃんとした!
そんなことも知らないで勝手なことばかり! 何様のつもりですか!
「もう!」
鬱憤のままに怒りの鉄拳をミキサーへと振り下ろせば、
「……あっ!」
で、出ました! 探し求めていた曲のイントロが!
本日のセットリスト、最後に用意されていたボーカル曲!
(――これで勝つる!)
「よぉし!」
マイクを持ってDJ卓からステージへ舞い戻り、
「いくぞぉー『ロマンティック・ラブ・イデオロギーを殺せ!』」
ウォォォォォォォォォォ!
初出しの曲ですから誰も聴いたことないはずですが、そこはそれ、パーリーピーポーさんたち。こちらの煽りに応じて、お約束的に盛り上がってくれるはずですよ!
渡りに船とばかり有耶無耶に終わらせます! それがいいそれでいい!
すぅ……
せめて大きな声で。場を誤魔化すには大声って昔から相場が決まってます。
(いざっ!)
あたし預言者ぁぁぁぁ~♪
が。
ボーカリストでもない素人の声量なんて高が知れている。精一杯声を張ったつもりでも全然出てないんです客観的に見ると。源子さんとは比べるべくもない乏しさです。
なので私が唄い出した瞬間、
『ズコー!』
って、フロア全員のスベる音が聞こえた。
(ダメだ!)
予想以上にスベってるし!
当然ですよ!
私の声も期待外れなら、源子さんが選んだ音源だって全然的を射てないんですから!
気持よく客を踊らすためのダンスビートと比べたら、速すぎます!
かといってハードスタイルみたいに攻撃的な低音を鳴らすわけでもなく、オモチャっぽいデジタルビート……アニソン風味の電波ソング?
こんなので「おいらの出番だ!」と熱り立つのは百戦錬磨のアニヲタイベンターだけです!
(かと言ってですね!)
見様見真似のDJにアドリブでのセットリストチェンジなんて出来るはずもなく。
無様と嗤われてもいいです。とりあえず任された分は済ませないと。最低限の責任を果たさないことには迷惑を掛けてしまいますから!
人様に迷惑をかけること。それを最も恥じるのが日本人です!
(Show Must Go On! Show Must Go Onしなきゃ桜里子!)
なので唄います。晒し者状態を甘んじても唄います。プロンプタのアンチョコをチラ見しながら。
お前ら別れるぞ 数年保たずに別れるぞ
おままごとみたいな恋人ごっこ 約束された終焉
賭けてもいいね 全財産
That's Love of Death! Promised Ending Story!
Never Never Never 成就しない
(ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!)
なんか飛んできた!
紙コップ? サイリューム? 靴? 手当たり次第に色んな物がステージへと飛んでくる!
あああー団扇は止めて下さい! 回転がついて凶器に近いです!
(てか!)
そ、そんなにダメですか? 私たちダメ?
(でしょうね!)
だってこのスタイルを、チープな小屋でやろうってのが間違ってる!
キャパシティはソコソコでも所詮は小さなライブハウスです、この小屋。PAと呼ぶのも烏滸がましいほどの最低限のライティングと音響。アンプとスピーカーだけは無闇矢鱈にデカいのは、どう見ても前時代的仕様です。昨今の基準からしてビジュアル方面の演出機材が貧弱すぎますよ。拙いDJの技量を補ってくれるムービーすら流せないんじゃ。
(かなり! 厳しい!)
それでも定番曲を適当に織り込んでいけば勝手に客は盛り上がってくれるはずなのに……聴き慣れない新曲をトリに持ってきちゃうとか! 相当の音楽センスかネームバリューあるDJじゃないと無謀ですって!
だからVJ職人の履かせる下駄もない新人DJがマイクを採れば、
「カラオケか!」
濃密なカラオケ感が漂ってしまうのです!
どうして? なんでこんなセットリストにしちゃったんですか?
何も考えずに皆で合唱できる定番アンセムにしておけば!
『あのね。顔も普通、頭良くない、才能皆無。それなら行儀くらいは良くしないと』
そのフォーマットを選んだ張本人がラップでディスってる、観客を!
いつの間にかグラップリングを止め、ラッパーとして強引に割り込んできた。
鏡 見なよ 鏡
kill the Ideology Love Overemphasized
もう恋なんてしないなんて 言わないでいいの
結婚しちゃおう
手っ取り早く結婚して 子供をWould You Mind(Would You Mind)
KILL! KILL! KILL! the Ideology Love Overemphasized
『別れよう、俺たち』
「……!」
呆然と立ち尽くしてた私をスピーカーへ壁ドンしながら、B子ちゃんマイクへ囁く。
『一番いい頃のお前を目に焼き付けて墓へ入りたいんだ』
キャァーッ!
会場の一角から黄色い歓声が。
女性声優が男子声を作ったみたいな微妙な違和感。でもそれが何故か、一部女子にはキュンキュン来るものがあるらしい。
私はよく分かんないんですけど!
(てか近い! 近い近い!)
止めて下さいフリだけに留めておいて下さい!
それ以上近づいたらプチュってイッちゃいますから!
かといって露骨に拒否するのもお客さんに悪い、お客さんの夢を壊さないのが舞台に上がる者の務めじゃないですかでもこれ近すぎそんなに寄ってこないで下さいB子ちゃ……………………!!
「は!」
咄嗟に彼女の頭を抱え込み、首投げ! 二人もつれるように床へ。
バシャ!
寸前まで彼女の頭があった場所へ、投げつけられたケーキ。スピーカーへと叩きつけられてグズグズに潰れちゃいました……
なんて酷いこと!
あんなのが髪に着いたら! この綺麗な髪を台無しにするとか許せません!
「ふが」
「あっ……ごめんなさい!」
緊急とはいえ、B子ちゃんの鼻面を腋に抱え込んだままでした! 慌ててクラッチを解きます!
「ふ……やってくれる」
スックと立ち上がったB子ちゃん、客席を見下ろしながら親指を下に向けて……駄目ですよ! それ抹殺のサイン!
鏡 見なよ 鏡
kill the Ideology Love Overemphasized
恋とかいうハイコストローリターン もうやんなくていい
結婚しちゃおう
手っ取り早く結婚して 子供をWould You Mind(Would You Mind)
KILL! KILL! KILL! the Ideology Love Overemphasized
あっちはあっちで一色触発!
そもそもラップとシンセのミクスチャーって緻密な計算があってこそ、じゃないですか?
単なるバックグラウンドミュージック扱いして好き勝手叫んでたら、お客さんは何を快楽として感じればいいんですか?
「お前らが死ね!」
「引っ込めヘタクソー!」
ええ、こうなります。こうなりますとも。気持ちは分かります。
だけど、「死ね」は無いな。品性を疑われますよ? 小学生並の知性ですよ? 多少なりとも知性を保持した大人が口にすべき言葉じゃありませんよ。蛮人の言葉です。
「ヘタクソって何よ? 自分の馬鹿耳を恥じなさーい!」
馬鹿っていう方が馬鹿なんですよ悠弐子さん?
そんなの小学生でも知ってます。争いは同レベルの者同士でしか発生しないんです。
「止めて下さい悠弐子さん!」
物を客席へ投げ返さないで下さい! 危な! あーぶーなーいーでーす!
「B子ちゃんも! 止めて下さーいぃぃー!」
地区予選でのノーヒットノーラン九回、スーパーレジェンド江川卓ばりのストレートで客席へ剛球を投げつけて!
「うははははははははははははははははははは!」
B子ちゃんダメダメ! それはトリを務めるバンドが投げる予定だったプレゼント用の球です! 今投げちゃダメな奴! 間違いなく怒られますって!
カチ、カチ。
(……ん? なんですこのクリック音?)
見境なく球を投げまくるDJラプンツェルを羽交い絞めしながら振り返れば……
「は?」
ディスポーザブルライター。柄の長い、芋煮会とかバーベキューとかお墓参りとかで使う奴。
目一杯伸ばした腕の先、ソレを掲げた源子さんは、
グビグビグビ……
何か飲み物を呷る。いや、呑んでないですね、頬いっぱいに含ませてます?
「な、何をする気です? 部長さん?」
悪い予感しかしないんですけど……念のため尋ねてみます。
コクコク。
そりゃ食いしん坊ハムスター並みに口に含んでたら応えられません。
「飲むか吐き出すかして答えて欲しいんですけど……」
だけどそんな私の懇願などお構いなしで、
「いくぞぉー!」
……とでも言わんばかりに、瓶を投げ捨てた右手を掲げ、
「!!!!」
思いっ切り鼻から息を吸い込んだ源子さん、砲丸投げ選手みたいに仰け反って、
「……!」
バンッ! 左足を激しく踏み出す!
その勢いでディスポーザルブルライターへと、
ぶしゃあああああああああああ!
「!!!!」
ブッ掛けた!
口に貯めていたものを、見惚れるほどの霧状にして!
顔面ペイントの悪役レスラーにでも習ったんですかってくらい綺麗な人間スプレー!
ああ、なんて綺麗な悪の華でしょうか?
ライブハウスの闇に咲く、蓮華の炎。ものの見事に咲き誇ってます。
減点法で人を断じれるほど 貴様は完璧なのか?
磨きぬいた誉の個体なのか?
殺せ!
ロマンティック・ラブイデオロギーを殺せ!
一気に咥内の【 燃 料 】を吹ききった悠弐子さん、「私の歌を聴け!」とでも言わんばかりの勢いで彼女はマイクを採る。あたかも伝説の世界的パンクロッカーばりのアグレッシヴさで!
二十年前の僕らは胸を痛め いとしのエリーなんて聴いてた
十年前の僕らは みんなも社長さんも ラブレボリューションなんて聴いてた
愛が全てを変えてくれたら 迷わずにいれるのに
ラブレボリューション 心に巣食ったイデオロギー
愛はオシャレじゃない!
クリスマスを彼と過ごすのが愛じゃない!
カタチが全て押し退ける それが思考停止
教義が全てに卓る時
客席に現れた巨大な火の玉が二つ三つ、災厄の種となって火の粉を振りまく。
舞台演出とは隔絶したノンフィクションの炎上が、アリーナへ恐慌をもたらす。
焼け焦げる臭いも生存本能のベルを助長し、我先にと出口へ殺到するお客さんたち。
(か、カオス……)
もしかして私たち、なんかもう取り返しのつかないことしてませんか?
これは本格的にヤバいのでは????
「ロマンティックあげるよ、とか言われても信じちゃダメ!」
もはやフロアは音楽どころの騒ぎじゃないのに、彼女はノンストップひばりちゃん。
魂のパンチラインを小屋へぶちまける。
「架空の担保で誘惑するのは詐欺師の手口よ! 霊感商法よ!」
…………
…………
riot :(集団による)暴動 【法律】 騒擾(罪)
現代日本に住んでいる限り、そうそう出会うはずもない体験でした。
「まさかこんなことに……」
悠弐子さんのパフォーマンスは文字通り、火に油を注ぐ大炎上となり……いえ、実際に焼いたのは観客のアフロヘアだけですが。パーリーピーポーの自己顕示アイテム、ドラえもん級の巨大デコレーションウイッグ、そりゃあもうよく燃えましてね。巨大な火球となってフロアは大混乱、当然のように火災警報器が作動して大騒ぎとなってしまいました。
ま、建物へ延焼することがなかったのは不幸中の幸いでしたが……結局ライブは主催者判断で打ち切りが決定。通報によってパトカーや消防車が大挙駆けつけたところで強制解散と相成った。
前座の途中で幕を告げられたら、そりゃ観客の皆さんは収まりがつかないですよね。ほとんどのお客はメインのバンドを目当てにチケットを買っているんですから。
ライブハウスの店員へ詰め寄る客、警察や消防にカエレコールしてる客、果ては客同士で小競り合いまで始まってます。これが本当の「あーもうメチャクチャだよ!」状態です。なんだなんだと野次馬まで集まってきて収集つきません。これじゃ中止が妥当です。
「正義は勝つ!」
翻ってこちら。
「わっはっは!」
煤けた顔で満面の笑み。
「大勝利!」
戦場のウェザリングを施しても綺麗ってどういうこと? この二人?
発端は身勝手な喧嘩だったくせに肩を組んで高笑い。
どういう神経ですか?
「The Patoriotsの初ライブは大成功ね! これは伝説として語り継がれるわ!」
「The Rising Sunという名の傷跡、時代に刻んだった!」
「あまりこういうことは言いたくないんですが……刻まれたのThe Seventeen Articlesですよね?」
「違うわ。The Patoriotsよ!」
「ゆに公も桜里子もバカ。The Rising Sunぞなー」
「死にたいの? この金色小細工は?」
「ああぁ? 望むところぞ
公衆の面前で互いの頬へ拳をメリ込ませ合うの止めて下さい!
ポリスに職務質問されますよ! 不審人物として呼び止められますって!
「だから間を取ってThe Seventeen Articlesにしておけば問題は……」
「「 ある! 」」
だからそんな大声を出しちゃったら!
「今、女の声がしなかったか?」
「…………」
咄嗟に頭を下げ、路地裏の死角へ身を潜めます。
怒りに我を忘れたパーリーピーポーの気配が去るまで、ジッと物音を立てずに。
「……行きましたかね?」
そろそろと地蔵化を解いて振り返ったら、
「うぉ!」
源子さんの額から角が! 数十センチもの、屹立した白い角!
「これ使えるわ」
誰かが忘れてったパーティーグッズ。大混乱で打ち捨てられたユニコーンの被り物を源子さん、廃物利用しちゃってます。
「もう一つあった」
B子ちゃんも怪しい山羊の被り物で人相隠し。目立って目立って仕方ない金髪も上手くカモフラージュされてます。拾ったスタジャン、背中に刺繍された金の龍が保護色になって。
「これなら!」
逃走しちゃえるかもしれませんよ! 一縷の希望が湧いてきました!
「で、桜里子は?」
「てかそもそも覚えられてる? この子?」
ええ、そうです! どうせ私は一山いくらの凡人女子高生です。残念女子ですよ!
一目会ったその日から恋の花咲くこともある見知らぬ貴女と見知らぬ貴男にデートを取り持つパンチの効いた子とは違うんです!
「これで衣装さえ隠せれば平気ですよ……」
同じく路上へ放置されていたメンズのコート。肌寒い春の夜向けの薄い奴。サイズがサイズなので女子なら首元から膝下まで隠せます。
自分で言うのもなんですが、地蔵。ザッツ地蔵スタイル。色もグレーですし。
「あ、そうだ」
悠弐子さん、ポケットから眼鏡ですか? それもまた男性向けみたいな。
「これ掛けな桜里子」
どうせ私なんて、特に変装しなくても誰にも覚えられてないですよ。空気です空気、源子さんやラプンツェルに比べれば圧倒的に空気です!
「ほら」
拗ねた私を宥めるように源子さん、サングラスを差し出して、
「こっち向いて桜里子」
変な感じです。人から眼鏡を掛けてもらうのって変な感じ。なんかくすぐったい。
くすぐったくて恥ずかしいのにドキドキしちゃう。
目を瞑って顎を突き出す。全て身を任せて唇を差し出してるみたいな錯覚。
まな板の上の鯉のエロチシズム……
「動かない」
なぁに一人で妙な気分になってるんですか? この非常時に私。
そもそも相手は女の子ですよ? それも会ったばかりの。
「……できた」
調光グラス越しに映る、彼女の唇。
数値計測すれば、平均より大ぶりなはずなのに……品よく見える。
どうしてでしょうね?
薄いから?
いえ、そうでもないです。野暮ったい厚さでもなく幸薄い細さでもない、絶妙なバランスの粘膜。
際立つのは、立体感。色を失くしたレンズを通せば、より明確に造形の妙が理解できます。淑やかさと自己主張が調和する有機的ライン。そうでした、唇って本来こういう形でしたと気づかされる、神様のリファレンス。
もしこのレンズが全ての色を透過してたら、私は手を伸ばさずにいられたでしょうか?
だって唇は蜜の色。啄め啄めと衝動沸き立たす花弁の色です。一時の気の迷いが大変な間違いを手招きする、魔女の色をしてるんです。
手渡されたのがサングラスでホントに良かった!
ひと目あったその日から恋どころか官能の花を撒き散らす羽目にならずに済みましたよ。
「これで分かんないよ」
「分かんない分かんない似合う似合う」
そんな私の気も知らず、口から出任せの勢いで賛辞を並べてる。
ほんと…………いい気なもんです。
みんなこんな感じなんでしょうか美少女という生き物は?
美しさを心の拠り所にできる人とは、同じ言葉の重さで会話できないんですか?
私みたいな持たざる者の心象なんて他言語感覚ですか?
ケラケラ笑う彼女と彼女が――羨ましくて疎ましい。
「似合う……似合……」
存在の耐えられない軽さで社交辞令を言い散らかした悠弐子さん、その果てに言い淀む。
心にもないことを取り繕うのも限界ですか? 男物っぽいサングラスとか滑稽なだけなんですね?
「いや……というか……こうして見るとアレね……」
「うーむー」
「なんですか? 言いたいことがあるならハッキリ言って下さい!」
内から湧き上がるものを必死に堪えたみたいな顔で? 軽くぷるぷる震えてません?
「言っていいの?」
「いいですよ別に」
どうせお二人に敵わないのは分かりきってるんですから。
「桜里子……」
「桜里子……」
心赴くままにディスってもらって結構。率直な感想で傷つけられた方がスッキリします。
さぁ!
さぁさぁ!
「桜里子……こうして見ると……」
さぁさぁさぁ!
「なんというか」
「なんというか実に」
実に?
「「露出狂っぽいな」」
「は?」
サングラスと男物のコートの合わせ技ですか?
「仕方ないじゃないですか!」
だって隠さないと! 衣装は隠さないと!
顔を覚えられてなくとも衣装は覚えられてるかもしれないんですから!
「露出狂ってより痴女ね、痴女・山田桜里子」
なんですかその課長島耕作みたいな呼び方!
自分でも薄々思ってましたけど、敢えて言わなくたってもいいじゃないですか!
「ひぃー! お腹! おなか痛いー!」
人をネタに身を捩るほど笑い転げる美少女二人組。追われる危機感などどこ吹く風、箸が転がっても私が地蔵になってもおかしいお年頃を全身で表現してますよ、この非常時に!
「もう! 悠弐子さん! B子ちゃん!」
そのくせ可愛いのが癪に障る。眉を顰めてお腹を抱えてても可愛いってんだから始末に負えない。
「今、向こうから声がしたぞ!」
「路地裏か?」
ほーら悠長に戯れ言を言い合ってる場合じゃないんです!
街中は完全アウェイなんですよ! 土地勘もない私たちには!
「いくよ桜里子!」
(速い!)
――なんて速さ!
障害物ばかりの路地裏をヒョイヒョイ駆け抜けてく、身の軽さ!
体幹のブレを最小限に、陸上選手みたいな股関節! 競技者の可動域!
ニンジャ? この人はニンジャの末裔とかそういう系なんですか?
「今夜はビートイット!」
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