Whatever you face, No Future. - 3
い、いきなり主語が、主語が爆発的に広がっちゃいましたけど?
百人単位の同級生からいちおくすうせんまん? おくせんまんおくせんまん?
「何に、ですか?」
「少子化という【 病 】に蝕まれてるのよ!」
「は?」
少々斜め下すぎるんですが源子さん? いったい何を言い出すんですか?
「我々霞城中央高校贅理部はぁー!」
「わ!」
いつの間にか助手席のB子ちゃんも荷室へと滑り込み、部長さんと一緒になって青少女の主張を展開してますよ。普通に立ってたら女子高生でも頭がゴッツンコしちゃいそうな荷室を使って
「その少子化を克服するべく立ち上がった結社であぁーる!」
「ーーる!」
「社会全体の活力を奪い、賃貸させる。その諸悪の元凶たる少子化問題の根を断ち!」
「たち!」
「果断なる行動を以って正義を為す者なのであーる!」
「ーーる!」
浮世離れ、という意味では絶世の美女に相応しい突飛さだったかもしれない。
「……………………少子化????」
でもそれって私たちが考えるべきイシューなんですか?
私たち女子高生は、それ以前の、華麗なる自由恋愛の時期では?
霞一中 恋愛ラボの皆が夢見るラブロマンティックエイジなのでは?
そういう問題はもっとお姉さんたちが考えるべきテーマなのでは?
「甘い! 甘すぎるわ、山田桜里子!」
「甘杉内俊哉!」
「え?」
「生物学的見地に立てば、あたしたち既に妊娠適齢期!」
「産めよ増やせよ地に満ちよ! 県犬養橘三千代!」
「は?」
ちょちょ、ちょっと待って下さ……てことはてことはてことはてことは?
『霞城中央高校 贅理部 青少女の主張』 サマリー
一、贅理部は少子化解消を目指す部活である。
二、あたしたちは生物学的見地に立てば既に妊娠適齢期である。
→→→→以上から導き出される結論とは?
(そ、それってつまり!?)
ニンカツ?
ニンカツのための部活ですか?
自らが母胎となって少子化解消に貢献せよってことですか?
入部試験という名の常軌を逸した体力検査、あれは屈強な胤を選抜するためのセレクション?
婿として相応しいDNAをチョイスするための、体力的な篩い落とし?
人数を若干名まで絞ったのはパートナーとして大体そんなもんが適当だろうってこと?
ちょちょちょちょ!
ちょっと待って下さいぃぃぃぃ!
以上を勘案しますとですね……
(贅理部って…………………………………………………… ヤ リ サ ー? )
男子と女子が合意の上で破廉恥な行為に及ぶサークルですか?
公序良俗なにするものぞ! 通俗観念へと挑むドンキホーテですか?
挙句の果てには、お薬でバタバタ女の子が路上に倒れこんじゃう系の危ないサークル!?
まさか男の子たちも【そういう匂い】を感じ取ってたの?
だからご無体な試練を与えられても、それに挑んでったんですか?
比類なき美少女とのペアリング権を得るために?
(いやいやいや!)
そんなのは無理です! 山田は無理無理!
とても合意なんてできません!
私が望む永遠は、一線を越えないとこまでで……いや、本当に大事な人から求められたら拒めない拒まないむしろ望むところではありますが!
不特定じゃなくとも多数とか無理!
そこまではっちゃけたセクシャルモラリティを持てと言われても、できかねます!
(やっぱりダメだこりゃ!)
こんなイカレた連中と一緒にいちゃダメだ! 何か取り返しのつかないことに巻き込まれちゃう!
「……はっ!」
ガチャガチャ後ろ手にドアハンドルを動かしても手応えがない!
(チャイルドロック!?)
運転席なのにロックが掛かってるってどういうこと!?
「ニヘ♪」「ムヒ♪」
なんですかそのしてやったり! な悪い顔は!
「山田桜里子」
なのにそれでも美しいってどゆこと?
「ひっ!」
邪悪な笑みを浮かべた源子さんとバースデーちゃん、開かないドアを背にした私へ伸し掛かって、
「あんたは、運命の子」
「がーるずしーどですてにー」
「逃げられない逃さない」
「えっ? え? えぇーっ?」
なななんで私、拘束宣言されちゃってるんですか?
贅理部に【母胎を捧げよ】ってことですか?
「観念せよー」「ぞなー」
あくま! 美しすぎるあくましんかんが二匹も、私にサバトを迫ってくる!
「く!」
こうなったら最終手段!
車が信号で停止した隙を見計らって、強引に窓からエスケープ。
海亀の卵みたいなムーヴで逃げ出したまでは良かったものの……
「……どこだここ?」
山を越えて隣県へ出たのは分かりました。
でも……なんかヘンです……
現実感が薄いというか非日常に染められているというか……鉄筋の建物が林立している割に、人気がない。妙に静かな街……
(……治外法権のロストシティ?)
下手に外へ出ると野盗に襲われちゃうとか?
強面の保安官が現れて「ここらじゃ見ねぇ顔だな……日暮れまでに街を出て行け」って告げられちゃう感じの? 風が吹くと干し草がゴロンゴロンと地を這ってきて……
「アレよ桜里子」
あり得ない夢想に囚われてた私を咎める、西部のシェリフ……ではなくセーラー服の女子高生。一挙手一投足が視る者の意識を捉え離さぬタレンティドガール。
「えっ?」
彼女がサタデーナイトフィーバーで指した先には『ご利用料金案内』と『フリータイムの告知』。一般のホテルでは外に掲げられてないインフォメーション。
「もしかして……性の
しかも一棟だけじゃなくて何棟も連なってる……ここら一帯全部?
「んでんでんでー」
頭と頭がゴッツンコする勢いで覆い被さってきたB子ちゃん、背中から肩越しに宮殿の先を指し。
「向こうが高速さー」
つまりここはミニ・ラスベガス。人の都合で開発された享楽の都ですか?
「バイパスの開発地によくある風景」
「思いがけず交通の便が良くなった僻地に発生する、特殊なお休み処銀座ね」
「に、したって遠い」
まぁ、街から遠くなければ、とっくに開発されてるはずですね。イヤらしくない意味でのベッドタウンとして。
「思い立ったら吉日! の勢いを削ぐ距離よ……これじゃ間違いも起こらないわ……」
「車の中で気が変わるぞな。何かヤる前に賢者タイムぞな」
いやいや、衝動だけで突っ走ってもダメですよ、常識的に考えて。
お互いに想いを確かめ合って、愛を育んだ末に行われるのが性交渉ですよ、恋の掟的に。
「ところで山田桜里子」
なんでしょう源子さん?
「いいの?」
何がですか?
「こんな場所で突っ立ってて」
「…………えっ?」
ウィィ……
いつの間にか私たち三人に横付けされていた高級車。
どうみても保安官とは思えない、脂ギッシュな中年太りの……でも金だけは持ってそうな中小企業のオーナー社長風の男性が車の窓からコンニチハ。
その白馬ではなく高級車に乗ったシャッチョさん、不躾に私たちへ尋ねてきた。
「――君たち幾ら?」
「は?」
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