第5話

第5話


「は、速水はやみ何してるの?」


「いや、これは………」

なんで、こんな体制になってんだよ!

これだと、入野いりのが俺を襲っているように見える。


身体の上に乗っている入野を見ると、何かニヤニヤし出して、

「私が好きでやってるんですよ? ね、お兄ちゃん!」


「ち、ちょとお前!」

入野は少し顔を赤くして、倒れて乗っている俺の身体に柔らかい物を押し付けてきた。

なんか、変な感触がするんですけど!?

やばい、中学生にドキッとしてしまった。


「へぇ〜! どう言う事かな? 速水君?」

おい! 雪菜ゆきな、目がヤバいことになってる! 殺気が、殺気がすごい出てるぞ!


「こ、これは事故なんだよ!」


「違うよ、お兄ちゃん! 私がお兄ちゃん事、大好きだからやってるんだよ?」

この野郎! 良いように言いやがって!


引きつった表情で雪菜は、入野を見ながら、

「お兄ちゃん!? あ、あなた何者なの! もしかして!? 沙百合ちゃん?」


「おい! 沙百合さゆりをこんなのと一緒にするな!」

沙百合が可哀想だろ!

沙百合と入野だと勝負にもならない。スライムが大魔王に勝つぐらい差がある。


上に乗っている入野が、目に涙を溜めながら、

「酷いよお兄ちゃん! ………もしかして、その沙百合さんって人が妹なの!?」


「あぁ、世界一可愛い妹だ」


「私も可愛いでしょ、お兄ちゃん! どうなの!」

そう言って、上に乗っているのにもかかわらず、俺の上で跳ねていた。


「か、可愛いから、跳ぶのを止めろ!」


「ふへへ、可愛いでしょ」

入野は満足したかのような表情をして、俺の上から降りてくれた。

何でこんなに、めんどくさいんだよ。

良かったな、こいつに兄がいなくて。兄がいたら、そいつ、妹恐怖症になってるところだぞ。


雪菜ゆきなが俺と入野を睨みつけながら、

速水はやみ君? ずいぶん仲がよろしい事で」


「いや、仲良くないぞ! さっき会ったばっかりだし」


「すごく仲良しですよ!」

入野が話に割り込んできた。

お前は何でそんなにめんどくさくするんだよ!?


「…………ふん〜」


雪菜ゆきなさん?」


「仲良しなのね。しかも初めて会ったにしては兄妹みたいな感じでイチャついて」


入野がニヤニヤして、雪菜を見ながら、

「そうですよ! 私とお兄ちゃんは兄妹なんですから」


「誰が兄妹だよ! 俺の妹はもういるよ!」


「私も含めてですよね?」


「含めねえよ! 誰がお前を妹に…………」

どんだけ、俺の事をお兄ちゃんにしたいんだよ。

それより、さっきから雪菜ゆきなが怒っているように見えるんだけど!?


思い出したかのように、手を顔の下に当てて、

「でもさっき、私の事をユイって言いましたよね? 」


「速水君〜? 本当に初めて会ったの?」


「初めてだって、本当に初めてだからその殺気を出しながら睨むのをやめて!」


必死に雪菜を落ち着かせると、雪菜は何度か深呼吸をして、殺気を消して俺を睨んでいた。

結局、睨むのね。

てか、入野いりのも酷いよな。あいつ絶対にわざとだよ! 俺を困らせて喜んでいるに違いない。


「それで速水はやみ、そっちは誰なの?」


「こいつはエロゲーを買おうとしていたから、俺が止めた時に知った、入野いりの ユイカさん」


入野にどうぞ! と言いながら手を差し出した。

「初めまして、私はお兄ちゃんの妹の入野 ユイカです!」


「あ、私は真白 雪菜。よろしくね! ユイちゃん」

そう言って雪菜は入野の頭を撫でていた。

てか、俺がお兄ちゃんって事で話が進んでるのね。

何でこんなことになったんだよ。


「それで何で2人は………」


「それは………」

入野を見ると、俺の顔の前に人差し指を立てて、私が喋ると小さな声で言っていた。


雪菜ゆきなさん、私はお兄ちゃんが大好きなんです」


雪菜は俺の時と全く変わらなくらい驚いていた。

「はぁ!?」


「お兄ちゃんが大好き。この世の全てのお兄ちゃんが大好きなんです!」


少し青ざめた表情で俺を見ながら、

「それって、速水はやみの逆のバージョンじゃ………」


「違うぞ! 俺はこの世の全ての妹が好きな訳ではない。沙百合さゆり紅羽くれはが、妹が好きなんだ!」


「「…………シスコン」」

おい! 雪菜に言われるのはわかるが、入野に言われるとなんかムカつくな!

普通に入野の方が気持ち悪くないか!?

何で俺だけこんな反応されるんだよ。



それから、入野に妹の事を全て説明し、雪菜からオススメのエロゲーを買った。


「結構、お兄ちゃんも、それ買ったんだね」

俺の持っているビニール袋を指差しながら喋っていた。


「仕方ないだろ! 妹モノだったんだから」

袋の中には、入野に取ってやったエロゲーの『兄さんには言えない秘密』だった。

雪菜のオススメもまさかのこれだったし。

雪菜によると、そこまでエロ要素は少なく、声優は百合さんだそうだ。

百合さんが出るなら、今日やらないと!


入野を見ると、嬉しそうにエロゲーを抱きながら跳んでいた。

「やっと買えた! お兄ちゃんと一緒だしね!」


レジにの前に立っている、雪菜に向かって、

「良いのか中学生に買わせて?」


「大丈夫、私なんて小学生の頃からやってたから」

それは知りたくなかった。

小学生の頃からエロゲーとか…………悲しいな。


「そろそろ帰らないと」

店にある時計を見ると、6時を過ぎていた。


「じゃ、またな雪菜ゆきな!」


「うん! また明日」


雪菜に挨拶をした後に、店から出た。


さてと、帰ったら晩飯作って、エロゲーやらないと。

沙百合が喋ってくれれば、やらなくても良いんだが。

喋ってくれないから、俺が変わるしかない。

沙百合には見つからないようにしないと、見つかったら刑務所に行く事になる。


「よし、帰るか」

手を上げながら、家の方に向かって歩こうとすると、何故か身体が動かなかった。


あれ?

何で動かないんだ? まさか、姉モノのエロゲーに呪われたのか!?


恐る恐る、身体を見て見るとそこには、しがみついている入野の姿があった。

「…………お前、何してる?」


「………………大好き」

入野がガバって力を入れてきたので、頭を押さえて、身体から剥がした。


「ひ、酷いですよ!」


「何だよお前! 帰れよ!」


「嫌です〜 帰りませんよ」

舌を出しながら、俺に向かって叫んでいた。

少しムカついたので、頭を撫で荒らした。


「や、やめてください! 頭をガシガシしないで!」


「嫌なら帰れよ! 」


「帰りません! どうぞもっとやってください!」

入野はそう言って、俺の前に頭を出してきた。

俺が頭に手を置くと、入野は少し赤くして嬉しそうな顔をしていた。

何でこんな顔をになるんだよ。


可哀想なので、今度は優しく撫でると、入野は頭を押さえて、俺の方を見ていた。

「はぁ、お前家どこだ?」


「ふぇ!? い、い、家ですか!?」

どうしたんだ?

さっきから妙に、恥ずかしがってるけど。


「送ってやるよ、もう暗いし」


「だ、大丈夫ですって!」


「いや、中学生をこんな時間に1人で帰らせるのはちょとな」


「…………………ふふ」

入野は少し笑った後に、何度も大丈夫ですと念を押してきたので、これ以上言うのはやめた。


「じゃ、俺は帰るから」

入野に挨拶をした後に、入野とは逆の方向に歩き出していた。


2、3歩、歩いた所で後ろから、入野が叫んでいた。

「お兄ちゃん! 」


「まだ、なんかあるのか?」

愚痴を言いながら、後ろを向くと、入野が嬉しそうに笑ってこちらを眺めていた。


「あ、あの! お、お兄ちゃんの名前なんですか?」


あぁ、そう言えば言ってなかったけ?

「俺は速水はやみ】。速水《はやみ 浩太こうた


「………………浩太お兄ちゃん」

う、なんか下の名前でお兄ちゃんって呼ばれると恥ずかしいな。


俺が少し照れていると、入野がガバって抱きついてきて、俺の目を見つめていた。

「お兄ちゃん、少しいい?」


「どうしたんだよ今更、お前のせいで結構、時間を潰してたんだけどな!」

それを聞くと、入野は少しションボリしていた。


「お兄ちゃん、スマホ持ってる?」


「持ってるけど、これがどうした?」

俺はポケットにしまってい、スマホ取り出して、入野に見せた。

そんなに珍しいか?


「少し貸してくれませんか?」

入野はそう言うと、俺とスマホを奪ってきた。


「これと、後これと…………よし!」

数分間、俺のスマホを何やらかまって、返してきた。


「何したんだ?」


「どうですか?」

入野は片手に持っていた、スマホの画面を俺に見せてきた。


「なになに……………」


「これでお兄ちゃんと、連絡できますね!」

スマホには、大好きなお兄ちゃんと書いてある、項目が出ていた。

慌てて、自分のスマホを見ると、そこには俺の一番可愛い妹と書いてある、連絡先が追加されていた。


「ふへへへ、これでお兄ちゃんは私の物」


「何でだよ! 俺は沙百合さゆり紅羽くれはの物だ!」


「……………本当にシスコンですね」

おい! さっきまで嬉しそうにしてたのに、急に退くなよ!


「なら、帰るか」


「そうですね、ではまた今度!」

入野は俺に手を振りながら、逆の方に歩いて行った。


俺も帰るか。

………………入野いりの ユイカね。

変な奴だったな。俺の妹になりたいとかどんな悪趣味だよ。

はぁ、沙百合が入野みたいだったら、絶対に仲良くなれるのに。

帰ったら、沙百合に話しかけてみようかな。


「ただいま! 沙百合、遅くなったな!」

俺は思いっきり玄関を開けると、そこには沙百合ともう1人女の子がいた。


「「「…………………」」」

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俺と妹の境界線 志乃 夜華 @shinoyoruka

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