第4話
第4話
「ついたよ
テンション高めにそう言ってきた。
雪菜の店を見ながら言った。
「やっぱりここ、ゲームショップだとわからないよな」
雪菜は店を見て、首を傾げながら、
「えぇ!? ………そう?」
そうだよ! 見るからに喫茶店みたいな感じがするんだよ!
こんな店でも一応、ゲームショップだから。
何人もここを喫茶店と間違えてきた犠牲者がいたことか。
俺も最初は喫茶店? となって店に入ったら雪菜がいてビックリした。
「ゲームでも見ていて、ちょと着替えてくるから」
雪菜はそう言い残して、店の奥に行ってしまった。
「仕方ないか」
雪菜に言われた通りに店のゲームを見ていた。
「う〜ん」
どれもこれも、妹モノじゃないんだけど。
なんで姉属性ばっかりなんだ!?
呪いか? これは俺に対する呪いなのか?
妹が、妹が無いと死んでしまう。
「ここには無いのか?」
俺は別の所のゲームを見に行った。
そこには、小さな幼女が短い手を伸ばして、何かゲームを取ろうと頑張っていた。
「………もうちょい、……お、後少し………んん!」
何やってるんだ?
美少女の幼女が手を伸ばして頑張ってるって、
どんな状況だよこれ。
でも、本当に可愛いな。雪菜と同等、いや、雪菜以上かもしれない。
歳的には沙百合と同じぐらいかな?
流石に見捨てるのは気がひけるから、幼女が取ろうとしていたゲームを代わりに取ってあげた。
「…………ほい。これだろ?」
幼女はいや、幼女は失礼か。
その、少女は俺の方を見て微笑みながら、
「……………ありがとう!」
そう言って、手を伸ばしてきた。
少女はソフトを抱えながら喜んで、
「これで………お兄ちゃんがいない私でも…………あんな事やこたんな事を!」
なんかヤバい単語が聞こえてきたけど?
お兄ちゃんって言ったの?
恐る恐る、少女が抱いている、ソフトを見ると、タイトルに『兄さんには言えない秘密』と書いてある、完璧なエロゲーだった。
少女は上機嫌に叫んで、
「ふっふふん! お兄ちゃん! お兄ちゃん! やっとできるお兄ちゃん!」
ヤバい! 止めないと。
それより、こんな歳が低いから家族ときてるよな?
この人の家族に見つかったらなんて言えばいいんだ!?
「俺がエロゲーを取ってあげましたよ! 」とか言った瞬間にロリコンのレッテルを貼られてしまう!
そうなったら沙百合と話なんて無理になるに決まってる。
凄いほどに喜んでいる少女のゲーム(エロゲー)を奪い取った。
「ちょ! な、何するんですか!?」
「いや、すまないがこれはダメだ!」
俺が犯罪者になっちゃうからね。
俺の手にあるゲームに向かって、頬を染めながら手を伸ばして、何回も跳んでいた。
「返してください! お願いです! お兄ちゃん! お兄ちゃんだけは」
「な、何その俺がお兄ちゃんを取ったみたいな言い方は!?」
「お願いですって! 私の命なんですよそれ!」
「今度は命になった!?」
「いい加減にしてください!」
「いや、なんでこんなエロゲーを買いたいんだ!」
少女は俺から目を逸らしながら、
「………………お兄ちゃんが…………」
「お兄ちゃんが?」
先程とは比べものにならない位に真っ赤になって、
「私はお兄ちゃんが大好きなんです!」
「な、なんだと!?」
お、お兄ちゃんが大好きだと!?
何そのセリフ、
こんな子に、そんな事言われる兄とか羨ましすぎる!
俺が口を開きながら驚いていると、少女は首を振りながら、
「まぁ、お兄ちゃんはいないんですけどね」
「いないのかい!」
なんだよ、いないのかよ。
少し安心した。妹にそんな事、本当に言われる兄がいたら、ぶん殴りたいね!
どんだけ苦労しても
おとなしく、話していた少女がまた、持っているソフト目掛けて跳んでいた。
「ふっ、………ふっん! もう、早く返してよ!」
「いや、お前まだ中学生だろう?」
驚いた表情をして、
「な、なんでわかったの!?」
「いや、身長で………」
そう言った瞬間に、少女は俺を殺気を出して睨んでいた。
冷や汗をかきながら、
「そうだ! 雰囲気だよ、雰囲気が妹に似てたんだよ!」
「え!? あなた妹がいるの!?」
「あぁ、いるぞ妹」
そんなに驚くことか?
どこにでもいるだろう、お兄ちゃんなんて。
「と言う事は、あなたは『お兄ちゃん』なの!?」
「そうだけど?」
「なんでよ! なんでこんな事する人がお兄ちゃんなのよ!………………いや、でも」
こいつさっきから、お兄ちゃん、お兄ちゃんって連呼してるけど、決してお前のお兄ちゃんではないんだぞ! と心の中で思っていた。
少女は俺の顔を見ると何度か頷いて、
「貴方、私のお兄ちゃんにならない?」
「……………?」
訳もわからず、真顔のまま少女を見つめていた。
「だから! 私のお兄ちゃんにならない!」
「……………はぁ!? お兄ちゃん!?」
「そ、お兄ちゃん。…………ダメ……かな?」
「………なっ!」
不覚にもこの少女に動揺していると、少女はいきなり俺のソフトを持っていない腕に、ニヤニヤしながら、身体をくっつけてきた。
「な、何やってんだよお前!」
俺の腕にに身体をくっつけて、今度は頭を猫みたいにこするつけながら、
「ふふ、お兄ちゃん! 私の名前は
入野が何度もくっついてくるので、俺の鼻腔を花の良い香りがくすぐった。
「い、入野さん、少し離れて」
早く離れてくれないと、俺がどうにかなりそうだ。
入野は本当に可愛い。こんな奴にお兄ちゃんとか呼ばれると死んでしまうかも知れない。
でも、俺には
入野はそれを聞くと、余計にくっついて、
「お兄ちゃん! 固いよ! 私の事、ユイって言って!」
「な、なんで!?」
「お兄ちゃんだからに決まってるでしょ!」
なんでお前のお兄ちゃんになった事で話が進んでるんだよ。
俺は沙百合と紅羽、以外の奴のお兄ちゃんになる気は無い!
「なんでお兄ちゃんなんだよ! いつからだ!? いつからお前のお兄ちゃんになった!?」
「私が生まれた時からに決まってるんだよ!」
「なに、うまい感じに言ったつもりだ! 俺は既に妹がいるんだよ!」
「だから、私も妹にしてって言ってるの!」
「そこだよ! なんで俺なんだよ!?」
入野とはさっき会ったばっかりだぞ?
なんでこいつは、こんなに俺をお兄ちゃんにしたいんだよ。
入野は一瞬戸惑って、腕に抱きつきながら、俺の顔を見て、
「最初は、なんだこの男、怪しいなと思ってたんですけど」
おーい、そんなに不審でしたか? 俺は普通だったと思うんですけど。
「ソフトを取ってくれた時にはもしかして!? って思ったのに、いきなり焦り出してソフトを奪ってきて」
「仕方ないだろ!? 中学生なんかにエロゲーを渡してしまったんだぞ!?」
本当に犯罪者になる所だったから。
「取ってくれたのに…………エロゲーの最初に出てくる、幼馴染みたいなうざい事をやってきて!」
「地味なウザさだな!?」
「その時、なんか感じたんですよ! それで顔を見た時にこの人はお兄ちゃんだ! って思ったんですよ!」
「だからなんでそうなる!?」
やっぱりよくわからん。
話を聞く限り、入野の好感度は低いと思うのに、なんでお兄ちゃんって呼ばれるとかになってるんだよ!
「ま、それでお兄ちゃんは、お兄ちゃんなんですよ!」
「もう、めんどくさい………」
「なら、ユイって言ってください!」
そう言いながら、入野が腕ではなく身体に抱きついてきた。
「お、おま、なにやってんだよ!」
「ふふ、言ってくれないと離しませんよ?」
だんだん時間が経つにつれて、入野が力を強めて抱きついてきた。
身体に柔らかい感触がはっきりしてきてるんですけど!?
やばい、これはやばい!
すごい真っ赤になりながら、
「ゆ、ゆ、ユイ」
「ふひひ、お兄ちゃん!」
ユイは不敵な笑みを浮かべながら、すごく楽しそうに笑っていた。
「お前、楽しそうだな」
「だって、お兄ちゃんに呼ばれたんですよ? ユイって、ふふ」
なんか入野の笑ってる姿みてると、俺も少し気持ちが落ち着く。
こいつ絶対、リア充だろ。
「それよりお兄ちゃん、そろそろエロゲーを返してくれませんか?」
おいおい、認めちゃったぞ! エロゲーだって事、本当に認めちゃだぞ!?
「ダメに決まってるだろ!? 」
「酷いですよ、お兄ちゃん!」
そんなこと言って抱きついてもこれだけはダメだ。
エロゲーをやっていいのは、妹を大好きな奴だけだ!
「お前は、なんでエロゲーをやりたいんだ?」
「はぁ、さっきも言ったんですが、私はお兄ちゃんが大好きなんです! お兄ちゃんと言う生物全てが!」
「はい!? 」
なんか変なこと言ってなかったか?
全てのお兄ちゃんが好きって、ブラコンなのか!? でも、こいつには兄がいないんだよな。
入野は抱きついていた身体を離して、俺が持っているソフトを指差しながら、
「それより、お兄ちゃんは、なんでそれが、エロゲーだって事を分かったんですか? わかったから、奪ってきたんですよね?」
「いや…………」
なんて言えば良いんだよ!
認めたら変態になちゃうよね!?
「しかもこれ、妹モノですよ?」
「なんだと!? これ、妹モノだったのか!?」
それを聞いた瞬間に、即座にソフトを見てみると、完璧に妹モノのエロゲーだった。
俺がソフトを興奮しながらみていたので、入野は少し首を傾げながら、
「…………もしかしてお兄ちゃん………妹モノ、好きなんですか?」
無意識に反応してしまい。
「あぁ! 好きだ! 大好きっていても良いね!」
興奮気味にそう言ってしまった。
「妹がそんなに好きなんですが!? でも、お兄ちゃん、妹いるよね!?」
無意識の内に大好きなんて叫んでしまったし。どう言い訳すれば良いんだよ! 大好きだって言ってるからね!?
沙百合を大好きなのは認めるが。
もう変態確定になるのか?
「あぁ! 大好きだよ! 妹を愛してるんだよ!」
やけくそに
入野は顔に手を当てて驚いたように、
「え!? 私をそんなに!」
「お前じゃねぇ! 妹だよ妹!」
「私も妹だよ?」
そう言いながら、また、俺の身体に抱きついてきた。
なんなのこいつ。本当によく分からなくなってきたんだけど。俺のこと好きなのか?
「はいはい、そうでしたね! だけど、俺が大好きなのは、お前では無い妹なんだよ!」
「お兄ちゃん、変態なんだね」
やだ、死にたくなってきたんだけど。
「仕方ないだろ!? 妹が好きなんだから」
「妹がいるのに、妹が好きで、なおかつ妹モノのエロゲーも好きとか………」
入野はそう言いながら、俺から距離を置いてきた。
「はぁ、どうぞ変態とかなんとか言ってもらえっても良いですよ!」
もう沙百合にどんな顔して会えば良いんだよ。
てか、社会的にやばいよね!? 妹が好きでエロゲーも買ってるとか知られたら。
だが、仲良くなるためだからな? エロゲーを買ってるのは沙百合と仲良くなるためだからな!? 決してそんな事をしたいとは思ってないんだからね!
「妹が好きな兄とか、どんなエロゲーですか!」
抱きつきながら、叫んできた。
「はぁ!? 」
「やっぱり、お兄ちゃんの事を大好きです! 」
「だからなんでそうなる!? なんかしたか俺? 」
さっきまで少し退いてただろ!?
こいつの好きの基準がよくわからん。
「大好きですよ、お兄ちゃん!」
そう言って、俺の耳に息を吹きかけながら、身体に力を入れてきた。
耳に息を吹きかけられて、俺は動揺してしまって、身体のバランスを崩してしまい、入野が抱きついていながら、倒れてしまった。
「おわ!?」
倒れた衝撃で静かな店内に場違いな音が鳴り響いた。
「ああ、クソ」
目を開けると、俺の倒れた身体に、入野の身体が完璧に密着していて、入野が俺を押し倒しているかっこになっていた。
「いたたた」
入野が顔を上げると、ちょうど俺と同じ目線になっていた。
「大丈夫か?」
「だ、だ、大好きです。いや、大丈夫です!」
どうしたかな? 全然大丈夫に見えないんだけど? 本当に頭、大丈夫なのかな!?
「早く、降りてくれないか?」
「お兄ちゃん! 待ってください。今、降りますから」
入野が俺から離れようとした瞬間。
ガッシャン
何かを落とした音が、俺の横から鳴り響いてきた。
「「え!」」
俺と
「「「……………………」」」
……………横には呆然と眺めている
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