妹との絆
第1話
第1話
「お兄ちゃん! 昼寝なんかしてないで! 早く起きてお兄ちゃん!」
妹がこんな感じで起こしてくれることはない。
これは俺の妄想だ。
あれから、両親はすぐに海外に行ってしまった。
俺ともう一人の妹、
妹と二人屋根の下で過ごしているが、挨拶をされてから、未だに妹とは話をしていない。
まぁ普通のことか。
血の繋がってない兄にいきなり話すなんて、知らない人に話すよりキツイよな。
「よし! 今日もいつも通りにできた」
いつもと同じに晩飯は俺が作っている。
テーブルに二人分の料理を並べて妹を呼んだ。
「
それを聞いたのか、沙百合が急いで自分の部屋のドアを思いっきり開ける音がした後、階段をものすごい勢いよく駆け下りてきた。
そんなに腹空いてたのか?
椅子に座って向かい合いながら晩飯を食べていた。
「美味しいか
「………………」
無言のまま頷いていた。
いつも通りに沙百合は喋ってくれない。
あの時みたいに、可愛い声を聞かせてほしい。
別に好きなわけではないぞ?
顔も、たまに見せる行動も可愛いが。
沙百合は晩飯を全て綺麗に食べていた。
「……………」
やっぱり無言のまま、俺の目の前でお皿を持ちながら目を見てきた。
沙百合は言葉は喋らない代わりに、こうやって俺の目を見て何か語ってくる。
ちなみにさっきのは、「ありがとう、すごく美味しかったよ」と言っていた。
「そうか、美味しかったか!」
俺が
声も聞きたいが、こうやって交流できてるだけで俺は満足している。
少しは俺に心を開いてくれてるってことだから。
沙百合はお皿を台所に置いて、部屋を出る前に俺を又しても見つめていた。
「…………………」
「部屋に上がるから、おやすみなさい」と言っている。
「おやすみ
沙百合は少し顔を赤くして頷いて上がっていった。
………でも流石に言葉を喋ってほしい。
いちいち通訳するのがめんどくさい。
他人から見たら恋人が見つめ合っているみたいな、熱い視線を送りあってるから外でやられると少し照れてしまう。
最初は心臓がドキドキして俺もやばかった。
それに俺の方を見てくるから、俺に気があるんじゃないか? と思っていたこともあった。
「ダメだ沙百合! 兄妹でそんな事は」と考えがよぎったのは沙百合には内緒にしておかないと。
早く
沙百合とは血は繋がってないが家族の一員だと俺は思っている。
沙百合はどうかわからないが。
玄関で会ったり、部屋から出るときに会った時に顔を赤くして直ぐにどこかに逃げてしまう。
俺、以外に嫌われているんだなとあの時思い、沙百合と必ず兄妹との絆を芽生えさせると決めている。
晩飯の後片付けを済まして、俺は自分の部屋の二階に上がっていった。
沙百合は隣の部屋で、ドアに「
前に看板が掛けてない頃に部屋に入ろうとした時、沙百合がビクッと跳ねて俺をマイクで殴り飛ばしてきた。
そのれから部屋の前には看板が掛けてあるようになっていた。
沙百合はマイクとかで殴ってきたけど、なんでマイクなんだろうな。
カラオケでも好きなのかな? また誘ってみよ。
「………おやすみ
沙百合の部屋の前で立って小さな声で囁くと沙百合の部屋から少し物音が聞こえたが、気のせいだろう。
静かに自分の部屋に入っていきPCの電源を入れた。
電源が入るなり、俺はPCゲームの「お兄ちゃんなんて大っ嫌い!」と言うタイトルのゲームをしている。
このゲームは元々、沙百合と仲良くなるために義理の妹が出るゲームを探していたら見つけてやってみると、ハマってしまい、俺の部屋には妹モノが出るゲームがずらりと並んでいる。
前に見つけたゲームはエロ要素が激しく心身的に社会的にやばいと思い、少し緩い妹モノをやっている。
もちろん全部18禁指定のエロゲーである。
妹にそんな事をしたいとは思ってはいない。その主人公がどうやって仲良くなれているのか知りたいからである。
もう一回言うが、妹にそんな感情は抱いてはない。
「お兄ちゃん! 私ね好きな人ができたの」
PCの画面から、今やっているゲームの妹キャラが可愛らしいセリフを喋っていた。
「お! このキャラの声優、百合さんじゃん」
百合さんとは今までやっていたゲームで妹キャラを多くやっている声優である。
百合さんが声優の時はエロ要素が少なく、やりやすしい。なぜかこの声に親近感を覚えてしまうから、俺の気に入っている声優さんである。
「ほ、本当に好きな人ができたのか!?」
このゲームの主人公が妹に駆け寄っていた。
「うん! 私、自分の気持ちに気付いたの」
笑顔で主人公に微笑む、百合さんの声の妹キャラ。
「今、俺も気づいたよ…………お前に好きな人ができてもこれだけは言わせてくれ」
「お兄ちゃん?」
伏せていた顔を上げて、妹を真剣な目で見て深呼吸をして主人公は囁いた。
「俺達は血の繋がってない兄妹だけど、お前の事が初めて会った時から大好きだったんだ!」
「お、お兄ちゃん!? でも私」
「わかってる! お前に好きな人がいるのはわかっている! だけど! だけど………俺は妹のお前だけど大好きなんだ!」
主人公の告白を聞いて、百合さんの声の妹は顔を真っ赤にして、涙目になりながら笑顔で囁いていた。
「私、妹だよ?」
「わかってる、大好きなんだ!」
「私、全然可愛くもないし、お兄ちゃんにいつも迷惑かけてるよ?」
「それでも大好きなんだ!」
妹の背後から夕焼けが差し込み、妹の流している涙が赤く光り、顔がものすごく赤きなって泣きながら兄に喋っていた。
「お兄ちゃんは私のことが好きなんだ………」
「幸せにしてみせる! 結婚してくれないか?」
兄はポケットにしまっていた、指輪を取り出し、妹の指に指輪をはめていた。
妹は指輪のついた手を眺めて、1番幸せそうな顔をして兄に囁いていた。
「…………はい」
二人は抱きしめあい、夕日と重なり眩しく輝いていた。
「ふふふ、お兄ちゃんなんて
エンディングが流れていて、俺も感動で涙を流していた。
「いい話だった! こんな感じになるように俺も頑張らないと!」
まずは
そこから、一緒に出かけるようにやってみせる!
「明日帰りに新しい妹モノのゲームを買わないとな」
ふぁぁぁ、眠い。
そろそろ眠るか、明日は学校だし。
PCの電源を切って、ベッドに横になった。
「………
そう囁いて、意識が遠のいていった。
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