俺と妹の境界線

志乃 夜華

別れと出会い

プロローグ

プロローグ



「お兄ちゃん行ってくるね!」

茶髪をツインテールに結んでいて、背は俺より頭2個分小さい女の子がいた。

そう、俺の妹である。

妹は玄関のドアを開けて、俺の方を向いて笑顔で微笑んでいた。


「必ず戻ってくるからね!」

そう言って妹は玄関の階段を降りて、家の前に止めてあったタクシーに乗っていた。


「帰ってくるまで待っててね! 必ずだよ!」

タクシーの窓から妹は叫んでいた。

俺は何も言えずに妹が見えなくなるまで立ち止まっていた。


それから2年、妹とは一度もあっていない。

俺、速水はやみ 浩太こうたは16歳になっていた。

妹の速水はやみ 紅羽くれはは13歳になっているはずだ。もう中学生なんて早いな。

紅羽は何をしてるのかな?

母親に聞いて見たこところ、海外の知り合いのところにお世話になっているらしい。

そろそろ帰ってきてもいいだろ。



四月のある日。俺はいつも通りに晩飯を作っていた。

今日は大事な日があると言って母親は遅くなっていた。

その為、この家には俺しかいない。

妹は海外にいて離れ離れになっている。

………どうしたもんか。

俺が考えているのは、何故、妹がいるのに、この家にいないのかである。

普通の話だと妹と兄が喧嘩しながらも仲良くする、そう言うテンプレ展開を望んでいるのに、妹は海外にいるから何にも起きない。



別に妹を好きなわけではない。兄妹の境界線を超えてはならない事ぐらい俺にだってわかっている。

ただ、2年も離れていると顔を見たり話したくなるのは普通だろ。

「紅羽早く帰ってこいよ」

俺の夢は紅羽と一緒に出かけたり、遊園地に行ったり、映画を見たいと思っている。



「よし、できた!」

シャケの塩焼きと味噌汁。それに、ほうれん草の和え物が今日の晩飯である。

え? 朝食だろそれと思ったやつ。俺は夜に日本食を食べると決めている。

イタリアン? フレンチ? アメリカン? 俺には全く理解できない。

日本人なんだから日本食を食べる事は当たり前だろ?


「やっぱり和食は最高だよな!」

俺もこの2年で料理が格段に上手くなったよな。

2年前までは妹の紅羽くれはが作っていてくれたのでよかったが。

俺が作らないといかなくなった時の、最初の頃はひどかったなんの。


魚は焦げるし。味噌汁みそしるは味噌の入れ過ぎでシチューみたいになってたこともあったし。まぁ、そこまで作る機会もなかったんだが。

最近は特に母親が用事でいないから、俺が作るしかない。

親父は昔に母親と喧嘩をして、そのまま破局になったらしい。

俺が小さい頃だったから、顔をは覚えてないが。

だから母親が一人で俺を育ててくれている、母さんには心から感謝している。



「それにしても遅いな」

ご飯を食べ終わり片付けも済ませて時計の針を見ると、すでに11時を過ぎていた。

いつもなら最低でも9時には帰ってくるのにな。そんなに大事なことがあったのかな?


仕方がなく、椅子に座って本を読んでいると静かな部屋にインターホンの音が響いた。


「お! 帰ってきたかな」

読んでいる本を机に置き、玄関に行きった。

酔って帰ってきてるかもな。

遅い時は酔ってることが多いから。


ピンポーン……又してもインターホンが鳴り響いた。

そう焦らなくても今開けるって。

玄関に着いて、俺は静かにドアを開けた。


「やっと出たね!」


「母さん?」

母親の隣には俺の知らない男性がいた。………誰だこの男の人?



「浩太にはごめんけど、私この人と結婚する事にしたの!」

母親は真剣に考えてた表情で俺にそう言いながら、隣の男の人に抱きついていた。


はぁ? なんて言ったこいつ。

結婚? 結婚ってアレだよな、男と女が二人の繋がりを強化してイチャイチャする、って結婚!?

ま、マジで母さんが結婚するのか?


「ごめんね。君の母さんは絶対に幸せにするから」

隣にいた男の人は頭を下げていた。

悪い人ではなさそうだけど………なんか顔がすごいイケメンなんですけど!?


「あ、母さんおめでとう」


「いいの!?」

別に俺は母さんがいいならそれでいいんだけど。

今まで俺を一人で育ててくれたんだし。

少しは男の人と一緒に楽にしてほしい。


「母さんが幸せなら、俺はそれでいいかな」

それを聞いた母さんと隣にいた男の人が涙を大量に流していた。

変なことしたかな?


「そ、それで浩太こうたには言わないといけないことがあるの」


「どうしたの改まって?」

不思議そうな顔をしていると、男の人が何やら背後をむいて誰かと話していた。


「私たちね明日から仕事で二人とも海外に行く事になったの!」

海外?

えっとそれだと俺は一人暮らし?

絶対やだ! 一人だけは絶対にやだ!

紅羽くれはがいれば、紅羽がいてくれたら。


「それでね。彼も一緒に海外に行くから、帰ってくるまで彼の娘さんと一緒に暮らしてほしいの」

この人の娘さん!?

え、て言うことは俺にもう一人の妹ができるってこと!?


「ほら沙百合さゆり

男の人に促されて、おずおずと俺の前に出てきて、顔を赤くしながら少し照れた感じに、小さな声で囁いた。


「は、初めまして。これからよろしくお願いします。お兄さん」


これから俺はもう一人の妹と暮らす事になった。

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