第15話 役割

『先日はありがとうございました』


一体、なんのお礼なのだろうか。

電話先の鈴木の言葉に疑問がわく。


んと…なんのことですかね?


『あぁ、言葉足らずで申し訳ない。伊東さんです、100歳の亡くなったおばあちゃんをなにもせずに看取っていただいて…』


なぜ、その事を鈴木が知っているのだろう。


なにもせず…というか、あの状況であの高齢な場合は一看護師レベルではどうにもならないと思いますが…


『いやいや、我々が求めているのはそれです。より多くの看取りを行なって頂きたいのですよ』


はぁ…。それは簡単に言えば急変時に出来る限りの救命はせずに看取れ…と?


『はい、そうです』


簡単に言ってくれる。


それは聞こえようによっては『殺せ』とも取れるのですが…


『柳田さん、そんな言葉を電話でしてはいけませんよ。国が電話内容を盗聴していたらどうするんですか』


こいつの発言には毎回驚かされる。

そして、否定もしていない。


『より多くの患者を看取る、そのための貴方達なのです。これからもよろしく』


そういい終えると電話は切れていた。


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嗤う看護師 @2017kake

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