第14話 空虚
伊東さんが亡くなってから1週間が過ぎた。
もう伊東さんの名前は病棟の中に残っていない。
1人減ったとはいえ、入院患者は多く忙しい日々が続いていた。
疲れもたまり、家に帰ってはソファーでそのまま寝入ってしまうことが多くなっていた。
『最近、どうすか?』
お昼休憩にベテラン介護福祉士の深澤が新聞片手に話しかけてきた。
いやー、疲れが溜まってますよ。忙しいですよね。介護さんたちほどではないだろうけど。
『いやいや、俺らなんて寝かして起こして、食事介助して、オムツ見てるだけすから』
それが大変なのだ。
この深澤さんは年齢で言えば50歳近い。しかし、そうは見えない肉体を保っていた。
深澤さんこそ、最近海には行ってるんですか?
『行ってるよー、なかなかいい波が来ないけどね、海に行かないと始まらないからさ。』
なんてことのない雑談だが、気分転換には十分だった。
『さて、そろそろ…』
ピー。
ポケットのスマホの着信音が休憩の終わりを知らせる。
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