第13話 死を活かす

『おかあさん、今までありがとう』

『あっちでは身体が自由になるね』


家族に恵まれ、命の終わりを看取られて伊東さんはこの世を去った。


看護師をしていてこのような機会は決して少なくない。


命を看取ってそこから学び、命を護る人たち。


それが看護師なのではないだろうか。


『びっくりしましたねー』


年配ナースの渋谷がいう。


そうですね、突然でびっくりしましたよ。


『けど、伊東さんはいい顔してたわね。あんなにも家族にも見守られてさ』


たしかに。なかなかあんなに家族に見守られながら旅立つ人を知らない。


各々が急いで仕事を終えたことにより、定時に間に合った。


車に乗り、1人になった瞬間に鈴木の言葉を思い出す。


何もしないでください。



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