第7話 赤札

揺られた電車の中で思い出す。


鈴木は表情を変えずに続けた。


『もし、同意していただけた場合に入職した先の病院へは国選看護師ということは通達します。しかし、その立場は一般のスタッフと変わりありません。加えて国選看護師の国務の内容は病院側へは伝えませんので、国務の遂行はあなた自身だけです。ご了承ください』


そんな環境で医療費削減に貢献できるのでしょうか。


『柳田さんには申し訳ないのですが、最初から貢献出来るとは思っていません。コスト削減に努めていただけたらいいのです』


出来るのだろうか、自分に。


考え込む俺に鈴木は続ける。


『この国を変えるためにもお力を貸してくれませんか』



お昼時のサラリーマンが行き交う有楽町。


俺は赤い契約書の入った鞄の重みを感じていた。



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