第3話 余韻

『今まで本当にありがとうございました、お世話になりました』

ナースステーション内に拍手が飛び交う。

今日がこの、病院最後の出勤日であった。


「こちらこそ、ありがとう」

「次の場所もいい味を出してね」

「一緒に働けて楽しかったよ」


先輩、後輩の声が胸に響く。


ハル

『さ、みなさん、送別会で洋先輩をお酒と一緒に送り出しましょー‼︎』


その日、朝まで笑い、思い出を語りすごく楽しい時間を過ごした。

少しの寂しさとお酒の余韻が身体に染み付いていた。


送別会からの二次会、三次会を終えてやっとの思いで自分のベッドへと倒れこむ。


眠りに入るまで時間はいらなかった。



次に目が覚めたとき、外の世界は夜だった。

肌寒いわけだ。


電池の切れたスマホを充電し、シャワーを浴びる。


熱いお湯が身体の芯を温めた。

飲み会の副作用が心と頭を襲った。


自分で決めたことじゃないかと言い聞かせ、バスルームを後にする。


部屋着に着替えるとスマホが待っていた。


着信 『母』


『もしもし‥?』


頭がいたい。


「もしもし、洋一?

あんた、いつ戻ってくるの?部屋の掃除とかもあるんだから、日程が決まり次第連絡頂戴よ」


『あぁ…分かったよ』


勢いよく電話は切られた。


ありがたいものである。こうして、親が迎え入れてくれようとしていることは。


母さん、ありがとう。


そう呟くと同時にスマホが鳴る。


この着信が俺の運命を変えていくこととは…

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