三章

 「コタエロ!ニンゲンワナニカ!」

 そう叫びながら俺は木で作った棒を目の前にある人間を刺し殺す。

 その雌の人間は真っ赤な血を嘔吐しながら、答える事なく、ぱったと倒れた。

 なぜ、俺がこのような行動を取っているのか、間違っている行動を取っていることはない。初めから説明しなければいけない。

 

 俺はこの大地の王だ。支配しているのは俺と同じ属性である毛が多い二足歩行、二腕を持つ生物である。俺以外のものは全員毛が濃いが俺は一人だけ毛が薄い。

記憶の初めから他人から見下されているが、こうして彼らを支配出来ているのは俺の知恵が彼らより優れているからである。俺たちは人間から「サル」と呼ばれているらしいと知恵を持つ母親はそう教えてくれた。

 

 どのみちにしろ、それは関係がない話である。名前がどうあれ、生きることは食べる、寝る、子孫を残すしかない。この緑の大地の支配を広げていくだけであった。それ以外の事は考えない。しかし、俺だけがそうは思えない。なぜなら、俺は考えてしまう。俺たちはなんなのかを。


  何年月日が超えたとしても、俺はその答えに見つける事は出来なかった。そのときに一つ大事なことに気づいた。もし、自分の能力で答えを見つける事が出来ないのであれば他人の能力を奪いればいい。

 

 母から「人間」の事をいろいろと話しをされた。「人間」がどこまで優れているのか、俺以上に知恵や優れているのか。魔法なように夜でも明るく小型太陽を発明したり。鳥のように飛べる鉄の塊を発明した。いまでもあの鉄鳥はたまに俺たちの上に飛んでいる。

 そんな「人間」の事が羨ましいと思った。その能力が欲しくて仕方がなかった。これが自分の本能なのかも知れない。だから、俺は一つの事を計画した彼らを捕らえればいい、聞き出せばその能力を受け継ぐことはできるかもしれない。この胸糞悪い生き物から能力を盗むのだ。

 俺は支配しているみんなに指示した。人間を捕らえる道具を作り上げること。この地域に人間が迷いこめば捕らえる計画を始めた。最初のうちは部下はなぜ、そんなものを作るのかとそんなものはどう作るのか分からなかった。俺より拙劣であるため部下は俺の考えは理解できなかったが俺の行動を反対すらしなかった。何かすごい計画を立てているしか考えていた。それは以前にもよくある話だ。作り方は試行錯誤で俺は標本となり、みんなをそれに真似し、作り上げた。

 その捕らえ具は木で出来あがったものだった。真ん中には人間が入れる空間を作り、その空間を追い囲むように小さな木と数々の柱で囲んだ。その柱の間には逃げられないように手をが抜ける間しか空けない。かといって柱を一枚の板にしてはいけない。ではないと、人間が俺の答えることなく先に死んでしまうからだ。

 その罠の使い方は簡単だ。罠を木の上に隠し、人間がその木の領域に踏み入るとそこにある縄が罠の誘導し、木の上から罠が落ち人間を囲む仕掛けだった。注意深くしなければいけないことは二点ある。

 一つ目は他の生物を捕らえないこと。中に閉じ込められたら俺たち外から罠をつるし上げ、解放することはできるが、無駄に体力が消費されるため、最初から間違えて捕らえないためにその木の領域に部下を配置させ見張りをさせる。他の生物が来たら追い払うように命じた。

 二つ目は人間が本当にやってくるのか疑問だった。過去探索したことによると少なくとも人間はこの周辺にはいないようだった。人間は母からおとぎ話の架空の存在なのか。だが、俺はそんな母の話、人間の存在を信じる。なぜなら、今も俺の上で鉄鳥が飛んでいるのだから。

 

 しかし、その罠を設置してから満月が四回超えても人間はこの緑の地にやってこなかった。俺はある探索を始めた、人間はどこに住んでいるのか。その周辺に少し離れた場所に設置しようと。決意を決めた俺は来月の夏季節、この土地の緑が消えてなくなる季節に合わせ北へ遊走することにした。

 やがて、遊走した場所には元の場所から十日間離れた場所だった。一日を使い北へ向かいば恐ろしい生物人間が住んでいた。ここは最高の土地と思い。俺は部下と共にその地域を支配した。これからここが俺たちの宿であった。そして、人を捕らえる計画は再実行することにした。

 罠を設置してから二日間、奇跡が起きた。初めて人間を捕らえることに成功した。俺は人間を初めて見て驚いた。なんと、その人間は雌であり、外見は少しだけサルと違い。どちらかというと俺に少し似ている。昔なくなった母親の思い影を思い出すようだった。しかし、後程私は木の棒で殺してしまった。

 人間の言葉は母親から教わったため、その人間に会話することができる。彼女は震えたまま、「助けて、助けて。神よ私を助けて」と繰り返すようにつぶやいた。俺は彼女の近くに行きこう問を掛ける、「ニンゲントハナニカ?」と。しかし、彼女はこう答える「神乃すなはち己の像に從ひて人を造り、神の像に從ひて之これを造れり、之を男女に造れり」どうやら、話が通じないのだった。そう怒りを覚えた俺は「コタエロ!ニンゲンワナニカ!」と叫びながら木の棒を彼女に刺し殺してしまった。大事な実験体を殺してしまった。初めて人間の出会いが失望と怒りが混じったのか思わず行動してしまった。

 でもあとから胸騒ぎがし、良い感じをしなかった。人間が憎き生物なのになにか後味が悪かった。俺たちサルは果物を食べるが生物を殺す必要はない。群れの中で喧嘩も起きるが命を奪うことはしない。それが胸騒ぎを起こしたのか、俺にはわからない。次回は人間をすぐにでも殺さないことにした。

 雌の人間の死体を森の奥の方へ放り込んだ。死体が腐る前に虎が通う場所に置く。それから俺はまた罠を設置し、今度は殺さないが苦痛を与える計画を考案した。できれば長く苦痛を与えた方がいい。そうすることで人間たちから自ら秘密を吐くからだ。この森にある植物の副作用を知っている俺はそれらを水に入れ人間たちに少しずつ飲ませる。天辺だけが丸くひらべったくて地上から人指しか伸びない植物は農毒があることを知っている。量を分配すれば人間でも効果が効くだろう。

 しかし、一つの苦痛だけでは効率的ではないだろうか。俺はまた違う作法を考案する。木の棒を細長く作りあげた。その木の棒の先っぽは細ぐ尖っている木を何本かを作り上げた。それらを人間の身体の場所に刺せば苦痛を与えることはできるのだろう。考察しているうちに人間の身体は俺たちと変わらないとわかり次の実験体を待つことにした。

 彼女が死んでから三日後、また人間を捕らえる。雄だった。顔には少ししわがあった。大人しく女性とは違った態度であった。まず、初めに俺は彼にいつもの質問を問う、「ニンゲントハナニカ?ドウスレバニンゲンニナレルカ?」彼は目を大きく開きこういった「お前は人間になるためにこうやっているのか?あの少女を殺したのもお前なのか?なんて悍ましいものだ」。その言葉は俺の胸を突き刺し、あの目は俺を化け物を見ているのかのよいな目つきだった。それが俺にとって怒りを覚えるが、彼女の出来ことを考えると冷静さに戻り。彼に苦痛を与える事にした。

 部下に指示し、彼に苦痛与える事は可能だが部下にこの胸騒ぎの感情を感じてほしくない。そして、この胸奥から来るざわめきは何なのか知りたいためでもあった。まずは、尖った木の棒で彼の足を突く。足を失いばここから逃げる事はできない、運動神経を失いば生き物はどうすることができないからだ。

 木の棒が足に突くと彼は悲鳴を上げた。その悲鳴は俺たちの背筋を凍らせたぐらいな悲鳴だった。しかし、俺は止めることはない。なぜなら、自分の答えを探るためにはここで終わることはない。血は彼の足からそこまで大量に流れていないが彼が苦痛であることは表情で見ればわかる。これ以上手を出せば彼は死ぬかもしれないためいまはここまでにする。

 食事は水と少しあに猛毒がある植物を混ぜ、普通の果物を与えることにした。猛毒の量を考慮すると彼は死なないでしょうが下痢の症状を起こす量だった。苦痛の疲れ果てている彼に水と果物を与えるとやはり、彼はもっと苦しみな表情を起こし、自分が身に纏っている布を脱ぎ捨てる。俺にとってはその布はなんのためにあるのか理解すらできない。人間は複雑のものであるが俺はその考察する能力が欲しい。

 一晩あけ、俺は彼をまた痛めつけた。こんどはその罠から出すことにした。どの道足を失った彼はここから遠く逃げることはない。万一に彼の手を木の棒で貫通させる。大きな穴が手のひらに開けられる。かれの悲鳴は昨日より大きく響いた気もしたが、俺には関係ない話だった。彼が死ななければいい、そして俺の問さえ答えればどうでもよかった。

 彼に与えた食事はいつもと変わらずの毒植物を混ざった水と果物だった。こんどは下痢だけではなく嘔吐したのだ。その時に彼は俺の答えると思い気や、「…ちくしょう。これがお前のやるべきことか!」と諦めのない言葉でつぶやいた。それはますます俺の腹を立てた。

 次の日。俺は部下にこの周辺の果物調達を任せ、夕日になる前に彼を痛めつけた縄で足首と木をつなげた。これで彼は逃げることはできない。だが、同じ方法だと意味がないと気が付き違う方法を使うことにした。縄を使い、振ってみる。それが彼の背中に当たり衝撃を与える。また違う音調な悲鳴を上げり始める。これを夕日が落ちるまで繰り返した。彼が死なないように力加減をし、慎重に行う。その夜には彼に一切の食事を与えないことにした。空腹も一つの苦痛だからだ。遠くから監視してみてみるが彼は動くことなく。黙って眠りについた。

 朝には俺は毒植物が混ざった水だけ彼の前に置いた。彼はその水が下痢や嘔吐の原因と分かりながらそれを飲む。また、下痢をする。しかし、彼に選択肢はない。飲まなければ死ぬからだ。だから、大量の水を用意したのだ。その翌朝は彼が苦しむ姿を遠くから見送ることにした。これで彼の身体はもう限界だろう、これ以上は死ぬ。

 その晩俺は彼の前に立ち、縄をほどく。そしてわずか残っている彼の寿命に同じ質問を問った。「ニンゲントハナニカ?ドウスレバニンゲンニナレルカ?」すると、彼は笑った、まるで苦痛を感じる事がなく、笑った。不気味悪い笑い方だった。サルたちもそれに恐れ、木の上へと逃げ込む。むかついた俺はもう一回問う、「オレハサルダ。ドウスレバオレハニンゲンニナレル?ニンゲンナヨウニチエガアル?」

 すると、俺の心が張り裂ける答えが帰って来た。

「…サルだと?お前はサルなんかじゃない。お前は正真正銘の人間だ。サルの真似事をしている人間だ。俺の言葉を信じられないなら水の影で自分の顔を見るがいい。バカ目」

 最後に告げた彼は息を絶えた。

 俺は自分の両手を見る。両足を見る。そして、彼が言った通り水が映った俺の顔を見る。彼と比べる。何も違いがなかった。サルの方こそ俺と全く似ていなかった。


 俺は口では叫ばず、心の中で叫んだ。

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幸福の名を持つ毒。 ういんぐ神風 @WingD

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