むかしばなしを語る

町はずれにある古いお屋敷。

広い庭は手入れがされてなくて、雑草が伸び放題。敷地を囲む低い柵もところどころ錆びて壊れている。

そんなお屋敷に友達と一緒にきゃっきゃとはしゃぎながら入っていく。

お屋敷にはおじいさんが一人。おじいさんなのはわかるけど、何歳なのかはわからない不思議なおじいさん。

「おやおや、みんなまた来たのかい」

「ねえねえ!今日はどんなお話してくれるの?」

「ぼくたたかうお話がいい!」

「えー、うさぎさんのおはなしがいいー!」

「今日はいい天気なのに、こんなところに来てはもったいないよ?」

「いいの!ねえ、お話して!」

「聞きたい聞きたいー!」

おじいさんは困ったように笑うと、ぼくたちをソファに座っているように促す。お茶とお菓子を持ってきてくれて、一人用に腰掛けるとゆっくりと話し始めた。


「それじゃあ、今日はどれにしようかなあ」



「ねえ、おじいさん!」

「おや、まだいたのかい?」

友達はみんな帰ってしまったけれど、ぼくはまだそこに残っていた。ぼくは誰よりもおじいさんの話してくれるお話が好きで、いままで話してくれたものも全部覚えている。おじいさんのお話は、ぼくの頭の中で映像のように流れるのだ。


「もっとお話聞きたいんだ!ねえ、お話して!」

「ふふ、きみはどれも真剣に聞いていてくれるよね」

「うん!今までの全部覚えてるよ!」

「ほう…そうか。じゃあ、君にだけ特別なお話をしてあげよう」

「本当に!?」

お茶とお菓子のお代わりを持ってきてくれて、おじいさんはぼくの隣に座る。お茶をひとくち飲んで、おじいさんは話し始めた。

「いままでのお話はね、実は一つのお話なんだ」

「えっ、そうなの?」

「そう。でてこなかったけど、実はすべてに出てくる人がいたんだ。その人が今までのお話を書いたのさ」

「へえ…!」

「その人の話を、してあげよう。きっときみなら、わかるはずだから」


「それは、いまからずっとずっと未来の話―――」

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