第百二十四話 スライムの底力
マキトたちが話したのは、サントノ王国やスフォリア王国で、両国の王女が巻き起こした事件についてであった。
特に子供たちが興味を抱いたのは、シルヴィアの一件であった。何故ならこの件に関しては、ユグラシアの大森林での出来事も含まれているからである。
森の賢者様という存在は、子供たちも絵本などでよく知っており、実際どんな人なのかを想像することも少なくなかったそうだ。故に、実際出会ったマキトたちを尊敬する目で見るのは、自然なことといっても過言ではない。
「シルヴィア王女の件については、私も新聞で読んだことがあるわ」
アリサが驚きを込めた声色で言う。
「何ヶ月か前に、オランジェ王国の魔法都市に留学したって聞いたけど……」
「あぁ、なんかそうらしいな」
元の姿に戻ったフォレオを抱っこしながら、マキトは頷く。そしてシュトル王都へ来る途中に、サントノ王都へ立ち寄った際に聞いた話を思い出す。
二年前、ユグラシアの大森林から帰還後、彼女は長期間の謹慎に加え、徹底的なる再教育を施されたのだそうだ。しかも彼女の父親である国王が、自ら教育の指揮を執ったのだとか。
少しは意識を切り替えさせることに成功し、更に彼女自身の見聞を広めるべく、本人自らが留学を申し出たのだという。
これにはサントノ王都全域で、驚きの声が上げられたらしい。
また嵐が起こるのではと、恐怖に怯える国民の姿も多く見られたが、特にそのような悪いことは起きず、それが逆に不気味で仕方がないというどよめきが、しばらくの間広がったとのことであった。
とても一国の王女に対する反応とは言い難いが、よくよく考えれば無理もない話かとマキトは思った。
それだけシルヴィアのしでかしたことは、とてつもなく大きいのだから。
(まぁ、おかげでサントノ王都では、何事もなくのんびりできたけどな)
マキトにとって、それが一番の感想であった。
久々となるサントノ王都は、マキトもラティやロップルも、内心でかなり緊張していたのだ。また厄介なことが起こるのではないかと。
できれば立ち寄らずに、そのままシュトル王国への国境を目指したかった。しかし他に物資を補給できそうな村はなく、国境までの距離を考えると、立ち寄らざるを得なかった。
王都へ足を踏み入れたマキトたちだったが、余計な場所には向かわず、物資の補給と宿屋の手配のみを行おうとした。そしてさっさと済ませることを済ませて、王都から出ていこうと思っていた。
しかしその予定は、良い意味で崩れることとなった。
たまたま顔見知りだった雑貨の主人から、シルヴィアが留学中で、この王都にはいないという話を聞いたのだ。
そこで詳しい話を聞くためにギルドへ赴き、情報を仕入れた。一番の懸念材料がサントノ王都からいなくなっていることを改めて知ったマキトたちは、無理に急ぐ理由もなくなり、数日間の滞在を決めたのだった。
フォレオやリム、そしてラームにとっては初めてのサントノ王都なため、とても有意義な時間を過ごせたというのが、マキトの感想である。
「サントノの王様も寛大だなぁと思ったわ。スフォリア王女のように、国外追放というワケではないもの」
しみじみと語るアリサに対し、ラティが苦々しい表情を作り出す。
「でも、アレはアレで仕方がなかったと思うのですけど……」
「だよなぁ……」
ラティの意見に、マキトも苦笑しながら頷き、数ヶ月前のことを思い出す。
スフォリア王国の王女ミネルバは、王都全体を巻き込むほどの大きな騒動を起こした責任を取らされ、王家の称号をはく奪された後、女王から正式に、国外追放処分が下された。
その頃はまだマキトたちもスフォリア王都に滞在しており、ミネルバが必死に抵抗している姿を、遠巻きからしっかりと見ていた。
結局、セドとオースティンの二人により、その抵抗も抑えられた。
その際に二人の王子に対する声援が飛び交い、王女に対しては激しい罵声という名の文句が放たれていた。
そんなスフォリア王都の人々に対し、マキトも魔物たちも驚きながら見ていた。
初めて訪れた時は、皆ミネルバのことを良い目で見ていた。しかしその時は、カケラすらも見られなかった。まるでそんな事実など、最初からなかったのだと言わんばかりに。
人の意見というのは、こうも見事なまでに変わってしまうのか。
マキトが自然とそう呟いたのを聞いたラティも、確かにと頷いていた。
「まぁ、どちらにしても、大きな出来事だったと思うよ。結局は他人事だけどな」
「そうですよね。わたしたちはあくまで通りすがりに過ぎませんから」
あっけらかんと笑うマキトとラティに、アリサは思わず驚いてしまった。
てっきり好奇心を剥き出しにして調べたりしたのかと思いきや、どうやらそうでもなさそうであった。むしろその逆であり、面倒だから深くかかわるつもりは一切ないのだと、そういう感じであった。
マキトたちが話した内容も、新聞などで明かされている内容を出ていない。隠しているワケではなく、本当に彼らも深くは知らないようなのだ。
それこそラティが言ったように、通りすがりのついでに情報を仕入れただけなのかもしれないと、アリサは物珍しそうな視線を向けながら思った。
マキトの年頃の冒険者は、アリサも何人か見たことがある。
その殆どが、気合いと熱意が溢れており、人一倍高い好奇心を見せていた。それこそ二人の王女様の内容についても、率先して王宮へ乗り込み、詳しい情報を仕入れようとしてしまいかねないくらいに。
始めて見る真逆さだと、アリサは思った。
マキトたちも冒険者らしく、気合いも熱意も、そして好奇心もあるにはあるが、決して深入りしない。警戒心が強いとか臆病とかではなく、純粋に興味がないという意味で。
しかしながら、全てにおいてというワケでもないだろうとも思えていた。もし本当にそうであるならば、それこそ冒険者として活動することはできないだろう。
ましてやマキトたちの場合は、いくつもの大陸を渡り歩いているのだ。何も興味を抱かない無気力な者が、それをこなせるとは思えない。
アリサは思う。恐らくマキトを動かす源となっているのは――
「ねぇねぇ、おにーちゃんはどうして魔物さんと一緒にいたいって思ったの?」
「んー、まぁ、可愛いとか落ち着くとか色々あるけど……気がついたら自然とそう思ってたってのが、一番大きいかな?」
「なにそれー?」
「よくわかんないよぉ!」
「あはは……」
頬を膨らませる子供たちに、マキトは苦笑を凝らす。それに対してラティも小さく笑いながら言った。
「でも実際、マスターが動くときは、魔物絡みのことが殆どなのです。だからマスターは、わたしたち魔物に凄く懐かれるのですよ」
「へぇー、そーなんだ」
「ラティちゃんたちもおにーちゃんのこと好きなの?」
「当然なのです!」
「おぉーっ!」
胸を張るラティに、子供たち――特に女の子たちが、キラキラと目を輝かせながら見つめる。まさに尊敬の眼差しというヤツだ。
やはりそうなのかなと、アリサは思う。
マキトがここまで旅をしてこられたのも、魔物たちの存在があってのこと。そしてそんな彼の姿を見て、ラティたち魔物もまた、マキトについていきたいと思うようになった。
そんなお互いの気持ちは、恐らく意識したことは殆どないのだろう。気がついたらそうなっていた、という言葉も分かるような気がした。
「ねぇねぇ、オランジェ王国のお話も聞かせてよ!」
「あー、実はまだ行ったことないんだよな……次の目的地をそこにしてみるか」
女の子の問いかけに、マキトは空を仰ぎながら言う。
「ちょうど王都にいる理由も、殆どなくなっちまったことだしな」
「わたしも行ってみたいのですー♪」
マキトの呟きに、ラティが賛成の意志を見せる。続けてロップルやフォレオ、リムやラームも、笑顔で元気よく鳴き声を上げるのだった。
他四匹も賛成していることは、明らかであった。
「この王都には、クエストか何かで来たの? まさか、ウチが出したクエストのために来たってワケじゃないよね?」
アリサの問いかけに、マキトは違う違うと言わんばかりに、手のひらを左右に振りながら苦笑する。
「知り合いがいるかもと思って来てみたんだけど、ハズレだったみたいなんだ。その時ちょうどギルドの人から、このクエストを持ちかけられたってワケ」
「誰も引き受けなくて困ってたとか言ってましたよね。わたしたちが受けた瞬間、これでようやく片付いたとか呟いてたのです」
マキトに続いて、ラティがギルドでのやり取りを思い出すと、ラティも呆れたようなため息をついた。
「なんか都合よく押し付けられたって感じでしたけど……まぁ、楽しいクエストで良かったのです」
「あぁ、俺もそう思う」
ラティとマキトの言葉を聞いたアリサは、やっぱりかと言わんばかりに、表情を歪ませる。
同時に運が良かったとも思えた。魔物使いという珍しい冒険者であることは確かだが、下手に力を付けたばかりの調子に乗った冒険者よりかはマシであり、むしろマキトたちのほうが良かったとさえ思えてしまう。
(まさか……今まで誰もウチからの依頼を受けてくれなかったのは、マキト君たちと会わせるために、神様が仕組んだ……ってことはないよね?)
流石にあり得ないと思いつつ、本当にそうだったら良かったとも思えていた。むしろそう思いたいくらいに、彼らとの出会いは貴重であり、またとない大きな機会だったと、アリサは自信を持って頷ける。
魔物使いは現在においても、マキト以外にいない。少なくともこのシュトル王国ではそれが言える。
子供たちにとっても、魔物使いという職業を間近で見ることができた。何人かは魔物と仲良くなることに興味を持ち始めた様子でもある。
もしかしたら将来、この子たちの中から新たな魔物使いが誕生するのではと、アリサは割と本気でそう思うのだった。
「キュッ!?」
その時、ロップルが何かに気づいたかのように、施設の入り口に視線を向ける。リムやラーム、そしてラティたちも、表情を引き締めていた。
まるで悪い何かが近づいてきていると、そう言っているかのように。
「ファナ様。子供たちと下がっていてください。何か悪い予感がしてなりません」
「分かりました。皆、急いで中へ!」
ファナとアリサが子供たちを急いで施設の中へ誘導させる。そして子供たちが全員中へ入ったのを確認し、ファナはローブのフードを深々と被った。
そこに、荒くれの男が乱暴に門を開け、後ろに控えていた一人の男が、手を後ろに組んだ状態でゆっくりと姿を見せる。
いかにも貴族だと言わんばかりの豪華な服装。ビシッと整えられた銀髪に、鋭く射貫くような赤い目、そしてこれ見よがしに釣り上げた唇。それらが合わさった彼の姿は、どう見ても友好的には感じられない。
それを証明するかのように、その男はビシッとマキトに向かって、右手人差し指を突き出した。
「ようやく見つけたぞ。珍しい魔物を持つ小僧めが」
ニヤリと浮かべてきた笑みは、歪んでいるという言葉がピッタリであった。
ラティも嫌そうな表情で一歩下がり、フォレオがマキトの腕の中から飛び出そうとする前に、ラームがマキトたちの前に躍り出ながら威嚇する。
そんなラームの存在など見えていないかのように、男は全く反応せず、誇らしげに胸を張りながら言い放った。
「私はシュトル王国の貴族、ヴェルヘイヤ家の次期当主であるオズマンドだ。キサマが連れている珍しい魔物たちを、全てこの私に譲りたまえ!」
貴族の男オズマンドが言い終わると同時に、数人の荒くれ男が、フッと小さく笑いながら拳をパキパキと鳴らす。
恐らく本人たちは、お願いという意思すらないのだろう。自分たちの言葉に従うのは当たり前。逆らうなんて頭の悪いバカのすることだと考えている。少なくともマキトには、彼らに対してそう思えた。
「む? 返事が聞こえないな……仕方がない。特別にもう一度だけ言ってやろう」
やれやれと手のひらを上にして首を左右に振りながら、オズマンドは改めてマキトたちに向かって、右手人差し指を突き出してきた。
「その珍しい魔物たちは、キサマのようなみすぼらしいガキが持つよりも、この私のような気品あふれる貴族が従えてこそ価値がある。だからさっさとその魔物一式を引き渡したまえ!」
決まったと言わんばかりに、オズマンドは誇らしげな笑みを浮かべる。
そこに――
「ピィッ!!」
ラームが威勢よく前に飛び出しながら、オズマンドたちに対して威嚇した。マキトたちには指一本触れさせないぞと、そう言っているかのように。
しかし、そのごく普通の青いスライムである見た目は、別の意味で相手の気を引きつけることとなるのだった。
「おっ、弱っちいスライムが粋がってやがるぜ!」
「それだけ叩き潰されたいってことだろ?」
荒くれ男たちは誰一人として、ラームに対して恐れている様子を見せていない。
「念のため聞きやすが……あのスライムはどうしやす?」
一人の荒くれ男が、ラームを指さしながら、オズマンドに問いかける。するとオズマンドは、深いため息をつきながらラームを見下ろした。
「あんなちっぽけなザコなど、手に入れたところで何の役にも立たんだろう。おいお前たち、邪魔だからアレを退かせ!」
手のひらを前後に振り、シッシッというポーズを見せながら、オズマンドは荒くれ男たちに指示を出す。
荒くれ男の一人が、ラームを思いっきり蹴り飛ばしてやろうと考えながら、ニヤニヤした笑みを浮かべて近づいていく。
「ラーム、思いっきりやれ!」
「ピィ!」
マキトの掛け声に、ラームが構えながら返事をする。一体スライム如きに何ができるんだと、荒くれ男は近づきながら思った。
それが大きな間違いであることを、彼が気づくこともなかった。
「さーて……ぐぉっ!?」
突如、腹部に重い一撃が襲い掛かる。何かが荒くれ男の腹にめり込んでいた。
そして気がついたら、荒くれ男は施設の外壁に叩きつけられ、そのままドサッと座り込むように気絶してしまう。
「ピィッ!」
どうだ、と言わんばかりに、ラームが強気な笑みを浮かべる。
「あ、あのスライムがやったってのか?」
荒くれ男の誰かがそう呟いたが、誰一人としてそれを信じられないでいた。
オズマンドがわざわざ選び抜いて連れてきた男の一人だ。当然、そこら辺の冒険者よりも、かなり強く鍛え上げており、そう簡単に負けるハズがない。
しかし現に、オズマンドが連れてきた一人は敗れた。状況から見て、目の前のスライムがしでかしたことは明白であった。
ようやくその結論に達した荒くれ男たちは、表情を歪ませ、ラームに対して敵意を剥き出しにする。
たかがスライムに負けてたまるかと、対抗心を燃やしているのだ。
「……んのやろおぉーーっ!!」
一人が襲い掛かった瞬間、再びラームの素早い体当たりが炸裂。さっきと同じように鳩尾をめり込ませ、後方へ吹き飛ばしてしまう。
しかしもう一人がその隙を突いて、攻撃を終えたばかりのラームに拳を振り下ろしていた。
もはやラームに避ける術はない。所詮はこれまでかと、完全なる勝利を認識したその時だった。
「キューッ!」
ロップルが叫んだ瞬間、ラームの体をオーラが包み込む。その直後に、大きな拳がラームの体に振り下ろされたのだが――
――ごいいぃぃーーーんっ!!
まるで金属を叩きつけたような音が響き渡り、殴りつけた荒くれ男の拳は、粉々に砕かれてしまった。
「ぎゃああああぁぁぁぁーーーっ!?」
右手を押さえながらのたうち回る荒くれ男を尻目に、オズマンドはギリッと歯を噛み締めながら、周囲の惨状を見渡す。
連れてきた荒くれ男たちは全滅。情けなさと信じられなさが入り混じるという、まさにワケの分からない感情に押し潰されそうになっていた。
(たかがスライム一匹如きに……一体どうなってるんだ、この状況は!?)
あまりにも気が動転しているためか、ロップルのサポートも含まれていたことについては、オズマンドが気づくことはなかった。
(だが、最後に勝つのはこの貴族である俺様だってことは、最初から決まり切ってることなんだよ!!)
己の家柄を今一度思い出しつつ、オズマンドは必死にマキトたちを睨みつける。
「ここまでしておいて、タダで済むとは思うなよ! 俺様は貴族なんだ! 家の力を使いまくり、この施設を、お前たちの人生も含めて潰してやる!」
思い知ったかと言わんばかりに、オズマンドは勝ち誇った笑みを浮かべる。しかしそれは、ほんの一瞬のことでしかなかった。
「そんなことは、この私が許しませんよ!」
ローブのフードを取りながら、ファナが立ち上がる。
「ファ、ファナ王女……様?」
まさか王女がここにいるとは思わず、オズマンドは硬直してしまう。そこを畳みかけるかのように、ファナはオズマンドに近づきながら、厳しい表情と冷静な声色で言った。
「オズマンド。アナタがしたことは、到底許されるモノではありません。私はこのことを報告したのち、ヴェルヘイヤ家に査察団を送るよう進言するつもりです」
「そ、そんな……」
ファナの宣言に、オズマンドは崩れ落ちる。査察団が来れば、物理的な意味も込めて、根掘り葉掘り容赦なくさらけ出されてしまう。
当然ながら、バレないようにしてきた不都合な事実も例外ではない。そんな事実がなければ良いのだが、オズマンドの表情は絶望に包まれていた。
明るみに出ればタダでは済まない事実が眠っていると、自ら明かしているようなモノであった。
「ヴェルヘイヤ家が……アナタの家がこれまでにしてきたことは、前々から目に余るモノがありましたからね。もはや逃れられるとは思わないことです!」
語尾を強めるファナに対し、オズマンドはもはや返事をする気力すらない。
もう完全に終わったと思っているのだ。せめて現実逃避でもしないと、自分そのものが消えてなくなってしまうと、そんなことを考えながら。
やがてファナから連絡を受けたギルドが、冒険者を派遣してきた。
オズマンドと荒くれ男は、冒険者たちによって連行され、ファナとアリサが派遣された冒険者のリーダーと挨拶を交わし、事態はようやく収束を迎えるのだった。
「すっげーんだな、お前! あの大きなオジサンを倒すなんてさ!」
「スライムも鍛えれば強くなるんだな!」
「僕も、大きくなったらスライムを連れて冒険してみたい!」
子供たちはラームの活躍を目の当たりにし、考えと評価を改めていた。
確かにスライムは世間では最弱と言われている魔物だが、鍛えれば荒くれ男を倒せるくらいに強くなれる。それはどんな魔物にも言えることなのだと、改めて子供たちは教えられたのであった。
そして、楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、夕方となった。
たくさん遊んだマキトたちは、施設の子供たちやファナに別れを告げ、ギルドへ帰ろうとしていた。
「バイバーイッ!」
「またいつか会おうぜーっ!」
ラティとマキトが手を振りながら、子供たちに向かって叫ぶ。子供たちもそれぞれ別れの言葉を叫び、笑顔で思いっきり手を振っていた。
背を向け、ギルドへ向かって歩いていくマキトたちを見送りながら、ファナは密かに思っていた。
この施設でスライムなどの魔物を飼うという選択肢も、もしかしたらあるのではないかと。
(ゼン先生が帰ってきたら、今日の報告と一緒に、ちょっと相談してみようかな)
そう思いながら、アリサは王宮を見上げる。ゼンが朝からそこへ出かけており、未だ帰ってくる気配がないことが、ほんの少しだけ気になるのだった。
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