第九話 旅立ちのとき



「えっ、旅立っていいの?」

「そう言っておる。決して言い間違いなどではないぞ」


 夕食後、クラーレから旅立ちの許可をもらったマキトは、大いに戸惑っていた。まさかいきなり言われるとは思わなかったのだ。

 クラーレは熱いお茶を一口すすり、長めの息を吐きながら言う。


「たった半日でこれだけの素材を集めたんじゃ。あとはもう実際に旅に出て、実戦経験を積み重ねていくのが一番じゃろうて」


 そう言ってクラーレは、部屋の隅にある大量の素材に視線を向ける。量の多さもさることながら、魔物たちやコートニーと協力し合って持ち帰った、という点をクラーレは評価していたのだ。

 旅をするとなれば、魔物が出現する中を歩いていくことになる。小さなすれ違いが、大きな命取りになることだって珍しくない。マキトたちがチグハグな関係のまま旅立つことだけは、どうしてもクラーレは避けたかった。

 しかし今日の結果を見る限り、その心配は杞憂だったようだと思わされる。

 ロップルの能力について実験する際、マキトが多少なり危険な行為をしたということも聞いてはいるが、それは許容範囲だろうと思っていた。

 勿論、無暗に危険行為をすることはよろしくないが、ロップルの能力上、多少の危険は致し方ないとも言える気がしたのだ。その際、魔物たちもしっかりとマキトに抗議をしたと言っていたので、そこも安心の材料の一つだったりする。


「ねぇマキト、ボクも一緒に行っていいかな? 特にこれからの目的もないし、マキトさえ良かったらでいいんだけど……」


 やや遠慮がちに訪ねてくるコートニーに対して、マキトとラティは嬉しそうな笑顔とともに答えた。


「あぁ、勿論さ。一緒に行こうぜ!」

「これからよろしくなのです」

「こちらこそ」


 満面の笑みを浮かべるコートニーに、ラティが万歳しながらはしゃぎ出した。


「やりましたね、マスター! いよいよわたしたちの旅が始まりますよ!」

「そうだな。それじゃあ、まずは……どこへ行ってみようか?」


 ラティの言葉に殆ど反射的な形で答えたマキトだったが、目的地が全く定まってないことに、今更ながら気づくのであった。

 クラーレが立ち上がり、戸棚の中から一枚の大きな地図を取り出してきた。


「まずは冒険者登録を行うべく、ギルドへ行くのがいいじゃろう。だとすれば王都へ行くことになるワケじゃが……」


 クラーレが地図を広げてマキトたちに見せる。クラーレの家から山を下りた地点は、ちょうどサントノ国境とシュトル王都の間に位置していた。


「この地図で見る限り、ここから一番近いのは、東にあるシュトル王都じゃ。しかし見てのとおり、サントノ王国は西にある。当然国境も同じくじゃ」

「王都と国境はちょうど真逆にあるって感じなのか……でも冒険者登録するには、ギルドへ行かなくちゃならないし……」


 地図を見ながら悩むマキトに、コートニーが思い出したような反応を見せる。


「いや、別にシュトル王国のギルドじゃなきゃいけないって決まりは、確かなかったと思うけど……」

「コートニーの言うとおりじゃ。冒険者登録はどこのギルドでも行える。もっともギルド自体は、王都にしかないがの」


 つまりマキトが、他の国で冒険者登録をしても大丈夫ということだ。

 それが分かった途端、マキトの中でシュトル王国で登録するという選択肢が、愕然と薄れてきていた。隣国であるサントノで登録することを試しに考え、マキトはこれから行こうと考えていた場所を思い出す。


「ラティの故郷ってどこら辺になるんだろ?」

「サントノ王国の北側、この大きな森林がそれじゃよ。スフォリア王国はその北にある大陸じゃ」

「……どっちもシュトル王都とは、完全に逆方向になるんだな」


 そう呟くマキトの中では、最初に行く場所が固まって来ていた。


「だったらもう、直接サントノ王国に行っちまおうかな」

「シュトル王都には、行かなくていいのですか?」

「別にどうしても行きたいわけじゃないし。なによりじいちゃんの話聞いたら、なんかメンドくさそうな感じがして、行きたいって思えなくなった」

「あー……」


 ラティが納得するかのように頷く。コートニーも苦笑しており、スラキチやロップルはキョトンとしていた。

 クラーレも事実を語っただけとはいえ、申し訳ない気持ちに駆られてきた。


「済まんのう。嫌な話を聞かせてしまったばっかりに」

「別に。完全に反対方向だし、わざわざ行く理由もなかったし。もし行ってみたいって思うようになったら、その時にでも行くよ」


 淡々と語るマキトの口ぶりからは、特に気を使っている感じは見受けられない。本当にそう思っているから、そう言っているだけのようであった。


「わたしは別にそれでもいいのですよ」

「ボクも構わないかな」


 ラティとコートニーが賛成の意志を見せ、スラキチとロップルも反対する様子は見せていなかった。

 彼らの反応を見て、クラーレは深く頷きを返した。


「そうか。まぁ選択肢も色々ある。ワシもこれ以上は言わんでおくとしようかの」


 クラーレがそう言うと、マキトはパンと軽く手を叩いた。


「じゃあ決まりだな。最初は国境を越えてサントノ王国へ行こう。次に王都へ行って、俺の冒険者登録をしないとだな」

「ボクはギルドに顔を出せば、それでいいかな」


 コートニーに続いて、ラティも改めて地図を覗き込んできた。


「その次はわたしの故郷、ユグラシアの大森林ですね。その次はスフォリア王国、ということでしょうか?」

「そうなるかな。こんな感じで進んでいこうと思うんだけど、どうだ?」

「さんせーなのですっ!」


 マキトの問いかけに、ラティが率先して賛成する。コートニーやスラキチ、ロップルもまた、賛成と言わんばかりに笑顔で頷いた。

 こうしてマキトたちの旅路が、正式に定まったのであった。

 そしてその夜、三匹の魔物たちがクッションの上でグッスリと眠る中、マキトとコートニーはなんだか眠れないでいた。


「まさか、本当に旅立っても良いって言われるとはな。荷物もまとめ終わったし、明日の朝には旅立ちか……」


 ベッドの上で仰向けに寝転がり、天窓から見えるたくさんの星を見ながら、マキトが感慨深そうに呟いた。

 床に敷かれた布団の上でうつ伏せになりながら、コートニーが笑みを浮かべる。


「なんかあっという間だったな。ボクが盗賊から逃げ出したの昨日だよ? たった一日二日でこうなるだなんて、思ってもみなかったよ」

「確かにな。俺も……あっ!」


 あることを思い出したマキトは、思わず小さな声を上げてしまう。

 一体どうしたんだろうとコートニーが顔だけ横に向けると、マキトが仰向けで上を向いたまま、呟くように言った。


「そういえば俺、コートニーに話してなかったことがあったんだ」

「え、何?」


 突然マキトから放たれた言葉に、コートニーは興味深そうに耳を傾ける。いざ話すとなると、なかなか緊張する気分を味わいながら、マキトは言う。


「信じてもらえるかどうか微妙だけど、とりあえず最後まで聞いてくれな?」


 そしてマキトは、自分がこの世界の人間ではないことを、コートニーに全て打ち明けるのだった。



 ◇ ◇ ◇



「へぇ、そうだったんだ。それは大変だったね」


 マキトの話を聞き終えたコートニーの、第一声がこれだった。あまりにも普通過ぎる返答に、マキトは思わず驚いてしまう。


「信じてくれるのか?」

「ウソを言ってるようには聞こえないからね。それにあり得ない話じゃないし、むしろ納得したよ。それなら色々と知らなくても無理はないってね」


 確かに王国の名前など、マキトは人々が当たり前に知っていることを知らなかった。疑問が晴れてスッキリした表情を浮かべつつも、すぐに笑顔は消え、どこか聞きにくそうな口振りでコートニーが訪ねた。


「元の世界に帰りたいって……思ってる?」

「ぜーんぜん。ずっとこの世界で暮らしていくつもりだよ。帰る気なんてないさ」


 間髪入れずにマキトは答えた。迷いの『ま』の字すら感じていない。コートニーはそんなふうに思えた。


「その、マキトの家族とかは……」

「まぁ一応いるよ」

「それなら……今頃マキトのことを探してるんじゃ?」


 せめてこれだけは聞いておきたかった。もしも普通に親御さんがいるのだとしたら、今頃かなり心配しているのではないか。

 そう思って訪ねてみたコートニーだったが、どうにもマキトの表情が覚めているように見えたことから、少し別の疑惑が頭の中を過ぎっていた。

 そこにマキトが表情を変えず、淡々と語り出した。


「どうだろうな。両親……つっても義理のだけど、俺のことをずっと、奇妙な子供だと言って気持ち悪がって、思いっきり遠ざかってたから」


 コートニーが驚いて顔を見上げる中、マキトは語り続ける。


「なんか知らないけど俺、物凄く動物に懐かれるんだ。他所の家のペットが、本当の飼い主よりも俺を選ぶくらいにな。それで俺が怒られるんだ。アンタの動物好きは迷惑だ。そんな人の役に立たない才能なんて、今すぐ捨てなさいってな」

「そ、それは、何というか……」


 マキトの話を聞いて、コートニーは上手く言葉が出なかった。

 義理とはいえ、親が我が子の才能を否定するのは流石に酷過ぎる。しかもマキトはそれを、なんてことない思い出として語っているのだ。

 元の世界におけるマキトの親子関係は、完全に破綻していると見て良さそうだ。単に誤解しているだけなのではと思ってみたが、それにしては尋常じゃない根深さを感じてならなかった。

 その義理の両親とやらも、息子が消えて心配するどころか、むしろ喜んですらいるのではないかと、本気で思えてきてしまうほどに。

 一方、そんな悲痛そうな表情を浮かべるコートニーとは裏腹に、マキトは苦笑を凝らしていた。

 あの時はホント散々だったなぁと、心の底から懐かしんでいるかのように。


「学校でも、俺に近づこうとするヤツは全然いなかった。それこそ友達がいたことなんざ、一度もなかった。ひとまずこんな感じかな」


 締めくくってみると、意外とスラスラ話せていたことにマキトは気づく。

 思い出したくないほどの嫌な思い出だったのに、どうしてここまで素直に話せたのだろうか。


(そういえば俺、自分のことを誰かに思いっきり喋ったの、これが初めてかも)


 マキトはそんなことを考えながら、溜まっていた塊が取り除かれたような、清々しい気分を味わっていた。


「その……なんか色々と大変だったんだね」


 ここでマキトは、コートニーが微妙そうな表情を浮かべていることに、ようやく気づいた。

 マキトは少し戸惑っていた。今の話で何かマズイことでも言ったのだろうか。


「……そんなに驚くほどの話だったか?」

「少なくとも、喜んで聞く人は殆どいないだろうね」


 そう言われたマキトは、そういうモノなのかと疑問顔を浮かべていた。その様子に苦笑しながら、コートニーは少しだけ表情に陰りを見せる。


「まぁそんなボクも、友達が出来た試しは一度もないんだけどさ」


 それを聞いたマキトは、頭の中にクエスチョンマークが躍り出していた。


「いや、それこそなんでだよ? ごく普通の魔導師にしか見えないし、別に変でもなんでもないだろ?」

「その魔導師っていうのが問題だったんだよ。特にボクのような獣人族にはね」

「……ゴメン、全く分からないや。どういうことなんだ?」


 少し考える素振りを見せた後、すぐにギブアップしたマキトに、コートニーは思わずクスリと笑ってしまう。

 そしてコートニーは、マキトに理由を語っていった。


「純粋な獣人族が、魔導師として生まれてくることは滅多にない。だからボクは、周りから陰口とかを色々言われてきたんだ」

「そういえば言ってたな。力に恵まれてない獣人族なんておかしい、悪魔か何かに呪いでもかけられたんじゃないか、みたいな感じか?」


 淡々というマキトに、コートニーはポカンと呆けた表情を浮かべる。


「……よくそこまで想像できたね。殆どその通りなんだけど」

「大体分かるよ。俺も似たような感じだったし」

「流石、といってもいいのかな?」


 少しだけイタズラっぽさを出して言った後、コートニーはマキトに一つの提案を投げかける。


「じゃあこれからは、ボクとマキトは友達同士ってことでどう?」


 その声には少しだけ緊張が入っており、表情にもわずかに力が込められている。マキトは少し驚きつつも、すぐに笑顔を見せた。


「あぁ、勿論さ。よろしく頼むよ」

「こちらこそ」


 二人は小さな声でクスクスと笑い出す。その時クッションのほうから、ガサガサと動く音が聞こえた。


「ふにゅうぅ~、ますたぁ~……みゅうぅ……」


 ラティの寝言にほっこりとした気分になりながら、マキトたちは眠りについた。

 そして翌朝、朝食と旅支度を終え、いよいよ旅立ちのときが来た。

 マキト、ラティ、スラキチ、ロップル、コートニーが、クラーレに別れの挨拶を交わす。それぞれの表情はスッキリしていて、実に晴れやかな笑顔だった。


「じゃあ、じいちゃん。行ってきます」

「気をつけてな。たまには顔を見せに帰ってきなさい」


 マキトたちが元気良く手を振り、サヨナラの言葉とともに旅立っていく。

 クラーレもまた、マキトたちの姿が見えなくなるまで、手を振り続けていた。

 そして再び一人となったクラーレは、胸にポッカリ穴が開いたような気分になりながら、扉をゆっくりと開けて家の中に入る。

 廊下を歩く音が妙に大きく響いている。薄暗い部屋に戻ると、何故だかガランとしている感じがして仕方がない。

 日差しが差し込むダイニングにて、クラーレはポツリと呟いた。



「この家……こんなに静かで……こんなに広かったかの?」



 ◇ ◇ ◇



 山を下りる道は、意外となだらかだった。凶暴な魔物も出てきておらず、迫ってくる気配すらない感じであった。

 この事実にマキトは、若干拍子抜けしてしまうほどであった。


「静かだな。まさに平和って感じだ」

「油断は禁物だよ。こーゆー時に限って、いきなり飛び出してきたりするから」


 コートニーがそう言った瞬間、ラティの表情が強張る。


「マスター、来ますっ!」


 叫びの直後、茂みから大きなサルの魔物が飛び出してきた。

 あからさまな凶暴性の高さに加えて、血走った眼と唸り声が、これから襲い掛かることを明確に表していた。

 穏やかな空気で気が緩んでしまっていたマキトは、突然の展開に戸惑う。しかしマキト側の魔物たちは、既に自分たちから動き出していた。

 サルが大きな腕を振りかぶったその時、ラティが魔法を発動する。相手の動きが鈍った隙をついてスラキチが体当たりを繰り出し、直後に炎を打ち込んだ。

 黒焦げとなったサルは、熱さと痛さでのた打ち回る。ラティの魔法効果が切れたことに気づくと、そのまま一目散に逃げだしてしまうのだった。

 怒涛の展開にマキトは終始、何もできなかった。

 そんな彼に対してコートニーは、肩をポンと置きながら笑顔で言う。


「ね? 油断しないほうがいいって分かったでしょ?」

「……スミマセン。これからは気をつけます」


 調子に乗っていたことを恥ずかしくなりながら、マキトは項垂れるのだった。

 肩に乗っているロップルが、よしよしと言わんばかりに慰めている姿が、何故か温かい雰囲気を作り出していた。

 その後もマキトは、表情を引き締めて歩いていた。

 静かな山道を心地良さそうに味わうことはしていても、魔物への危険性はキチンと考えている。とはいえ、流石に周囲の気配を読み取ることはできないため、その部分に関してはラティたちに任せざるを得なかった。

 もっとも魔物たちからしてみれば、普通に嬉しい限りであった。大好きなマスターに頼られているという、なによりの証拠でもあるのだから。

 そんなこんなでコツコツと山を下りていくと、広い河原が見えてきた。


「ちょうどいいや。ここで少し休んでこうぜ」


 マキトが河原に降り立ち、眩しい太陽の光を浴びながら、深く深呼吸をする。

 荷物を下ろし、それぞれがのんびりしようとしたその時だった。



「これはまた珍しいですねぇ。アナタは随分と、魔物に懐かれておられるようだ」



 突如聞こえてきた青年のような声。振り向いてみると、その人物はいた。

 ワイン色のローブにフードによって隠れた顔。人間かどうか以前に、男か女かもよく分からない。

 マキトたちからすれば、得体のしれない人物そのものであった。激しい警戒心を抱くのは、むしろ自然だと言える。

 ロップルはマキトの肩にしがみ付き、小さく震えている。ラティは睨みを利かせながら、魔法の準備を整える。そしてスラキチはマキトたちの前に躍り出て、激しく威嚇していた。いつでもお前を攻撃できるんだぞ、と言わんばかりに。

 コートニーが戸惑いを隠せない中、マキトは意を決して口を開いた。


「だ、誰だ、アンタ?」

「これは失敬。ただの通りすがりですよ」

「いや、通りすがりにしては、怪しいにもほどがあると思うんだけど?」


 恐る恐る進言したコートニーに、ローブの人物は苦笑する。


「やはりそう思われるのですね。先日の方たちもそうでしたし」

「……何の話だ?」

「いえ、こちらのことなので、お気になさらず」


 ワケが分からず首をかしげるマキトに、今度はローブの人物が話しかける。その視線はラティたちに、正確にはラティたちの額に向けられて。


「その紋章……アナタは魔物使いということでしょうか?」

「だったらなんだよ?」

「いえ、ただの確認ですよ。どうやらアナタはタダ者ではないようだ。実に興味深いことこの上ない。彼も同じ気持ちになるでしょうねぇ」

「彼?」

「おっと、これは少々余計でしたね。すみません。今のは忘れてください」

「そーゆー言い方をされると、むしろ忘れられないのですよ」

「確かにそうですね」


 ラティのツッコミに対し、ローブの人物は苦笑する。

 マキトは訝しげな表情のまま、気になっていたことを聞いてみることにした。


「てゆーかさ。アンタ結局、俺たちに何の用があるんだ?」


 流石に通りすがりに見かけたから、というだけではないだろう。

 何かしらの目的があって近づいてきたとしか思えない。興味深そうな態度が良い証拠だと、マキトもコートニーも思っていた。

 しかしここでローブの人物は、ある意味予想外の反応を示すことになる。


「いえ、別に用などありませんよ。ただの通りすがりですから」


 ローブの人物は穏やかに笑いながら、踵を返して歩き出す。


「僕はこれで失礼します。アナタ方の幸運を、心から祈ってますよ」


 どこからか強い風が吹き付け、気が付いたらローブの人物の姿は消えていた。

 あたりを見渡しても、それらしい人物は見当たらない。ラティたちも気配を全く感じ取れず、既にこの近くにはいなさそうであった。

 魔法で瞬間移動したと言われれば、普通に信じてしまいそうなくらいに。


「なんだったんだろうね? 今のローブの人……」

「さぁ?」

「よく分からない不思議な人だったのです」


 穏やかな空気が戻り、川のせせらぎと木の葉の音だけが聞こえる中、マキトたちは呆然とした表情を浮かべるばかりであった。

 その後も念のために警戒を怠ることはしなかったが、ローブの人物が再び現れることはなかった。


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