自称シャーロック・ホームズの冒険
鶏ニンジャ
まだらの・・・
「所長ー! 所長、起きてるっすか?」
茶色の短髪に黒縁眼鏡を掛けた、ぱっと見は平凡な女が、ヨーロッパ風の家具が並ぶ部屋に入ってくる。
「所長って……また、こんなとこで寝て……」
眼鏡の女はソファにだらしなく寝ている女を見る。細身の長身の茶色のズボンを履いた男装の女だ。
「ア……アァ……」
所長と呼ばれた女は、明らかに雰囲気がおかしい。首筋にはプラグが刺さり、白目をむいている。しかも、口はだらしなく開き、よだれもたれていた。
「って! また、電子ドラッグっすか!」
眼鏡の女は所長と呼ばれた女の首に刺さっているプラグを雑に引き抜く。彼女の体がビクンッと大きく跳ねた。そして、彼女はゆっくりと目を開ける。
「ああ、ワトスンか。おはよう」
「まったく、こんな生活していたら死にますよ?」
「ほう、私を心配してくれるのか」
所長はワトスンの頭を抱いて自分の豊満な胸にその顔をうずめさせる。
「所長、セクハラで訴えるすよ。あと、心配なのはお給料がもらえなくなると困るからっす」
ワトスンは所長から体を無理やり引き離す。
「それから、おはようって、もう昼っすよ?」
「ははは、そんなはずはないじゃないか。外の景色を見たまえ、木漏れ日が差し込み、小鳥がさえずる……」
所長が窓のそばまで行き、カーテンを開ける。そこには、灰色の分厚い雲が雨を降らし、猥雑なネオン看板が明滅するロンドンの街並みが広がっていた。
「所長、頭は大丈夫っすか? いや、頭がおかしいのはいつものことっすけど」
「君は失礼な奴だな。ところで何か用かね?」
「ああ、依頼人の女性が来てるっすよ。シャーロック・ホームズ所長」
————————————
「あ、あの……助けてください!」
女性は悲鳴にも似た必死な声を出す。
「お嬢さん。まずは落ち着いてください。今日は冷えますからこちらへどうぞ」
ホームズは女性の手を引き暖炉の前に座らせる。今時は珍しい、本物のマキを使った。本物の火で温まるレトロな暖炉だ。
「あらためて、自己紹介をしましょう。私はシャーロック・ホームズ。こちらはワトスン、私の助手です。ああ、紅茶はいかがですか? ワトスン、紅茶を頼む」
「え? シャーロック・ホームズ? 確かお名前は……」
女性が困惑しつつ、その顔をよく見る。
長い黒髪に映画女優のような整った顔立ち。ほとんど化粧はしていない。十人中十人が「美人だ」と答えるほどの美しさだ。
「うちの所長、腕はいいんですけど、頭がおかしいんで合わせて欲しいっす」
ワトスンが紅茶をおきながら女性に耳打ちする。
「どうかされましたか、お嬢さん?」
「いいえ……ホームズさん。紅茶、ありがとうございます」
「いえいえ、遠方からいらした、こんな可憐なお客様に対して、何ももてなしをしないのは私の美学に反しますから」
「え? 私のことをご存じで?」
女は目を見張る。二人に面識はないはずだ。
「いいえ? ただその服、この地域に合わせようとしていますが、生地や縫製が上等すぎます。あと、ここまでタクシーを使いましたね?それも、このあたりの人間ではありえませんから」
ホームズは優雅に紅茶を飲む。
「ああ、種明かしをすれば簡単です。あなたの足元、この雨の中でもほとんど濡れていませんね? ご自分で運転された可能性もありますが、その高いヒールで運転するのは不可能です。もちろん、替えの靴があれば話は別です。ですが、あなたのような可憐で美しいお嬢さんがわざわざ車の運転なんてしないと思いましたから」
話を聞く女性の顔は赤くなり、目は潤んでいる。
「はい、おっしゃる通りです。私はワーテルローからこちらに来ました。非常に恐ろしいことが起こりました。助けてくれる人はいません。しかし、友人のマクダーモットさんからホームズさんのお話を聞きまして……」
「なるほど、少々お待ちください」
ホームズは手元の端末から事件を検索する。
「マクダーモット……ああ、そうそう、オパールのICチップに関する事件でしたね……ご安心ください。ご友人の時と同じように力をお貸ししたいと思います。それでは、事情をすべて話してください」
「ああ、神様!」
女性は手を組み神に祈る。しばらく祈った後、彼女は話し始めた。
「私の名はエレン・ロイロットと申します。義父とサリー州の外れの屋敷に暮らしています」
「サリー州のエレナさん! しかもロイロットですか!」
ホームズは大きく身を乗り出す。その顔は喜びと驚きに満ちている。
「あの?何か問題でも?」
「いえいえ、大丈夫です。申し訳ない。続きをお願いします」
彼女は長い髪をかき上げ、冷静を装うが明らかに興奮している。
「はい、実は姉のジュリアの死に関して調査していただきたいのです。自然死として扱われましたが、あれは間違いなく何か、何か隠された秘密があるはずなのです」
エレンは泣きそうになっている。ホームズはその手をそっと握り励ます。
「大丈夫です。すべて私にお任せください」
「ホームズさん……」
エレンの顔は完全に恋する乙女の様になっている。
「しかし、それですべてですか?」
「え?」
ホームズはエレンの目をしっかりと見つめる。エレンは思わず視線をそらしてしまう。
「失礼ですが、あなたのその手首の痕……お二人暮らしだということですが、彼は力加減が下手みたいですね」
「そ、それは……」
「お父様を疑ってらしているのですね?」
ヘレンは慌てて手を離し、手首の跡を隠し口ごもる。
「ワトスン!すぐに出発の準備を!」
ホームズはその姿を見てすぐに決断する。
「今の状態は危険です。すぐに調査を開始しましょう。お父様の予定はわかりますか?」
「はい、今日は用事があって明日までは帰らないそうです」
「それは好都合。我々と一緒に帰られますか?」
「いいえ。調査していただけるとわかり、心も軽くなりました。用事もいくつかありますので、一人で帰ります」
「わかりました。お気をつけて」
エレンは部屋を出て行こうとしたしたが立ち止まり、ホームズの方を向く。
「そういえば、姉が死ぬ数日前に奇妙なことを言っていたんです。まだら模様のなにかが見えたって……いえ、見間違いでしょうけど。それでは」
エレンは軽く頭を下げると、その場を立ち去った。
「ワトスン! 聞いたかね! ああ、なんということだ!」
ホームズはひどく興奮し、部屋の中をぐるぐる歩き回っている。
「聞きましたけど、なんなんすか?」
「君は今の会話に何も感じなかったのかね?」
彼は驚きの表情でワトスンを見る。
「君は私の活躍した<まだらの紐>を知らないのか? なんて、ことだ! あんな有名な作品を知らないとは……」
「あー、自分、昔の小説とか興味がないっすから」
「ああ、実に嘆かわしい! 自分が描いた小説の内容くらいは覚えておくべきだろう」
そう、ここまでの会話を見てきた、賢明な読者の方々なら、すでにお分かりかと思う。彼女は自分をシャーロック・ホームズと認識しながら、シャーロック・ホームズの存在を認識しているのだ。
もちろん、ワトスンと呼ばれている女性も本名はワトスンではない。
「ああ、なんて事だ! こんな日が来るとは!」
ホームズは興奮しながら、ポケットから電子ドラッグがインストールされている注射器型の小型端末取り出す。そして、自分の首筋の端子に接続しようとする。
しかし、ワトスンはさりげなくそれを奪うと、自分のポケットにしまい込んだ。
「ところで、まだらの紐? でしたっけ? どんな話なんすか?」
ワトスンは電子ドラッグから意識をそらそうとする。ホームズの顔はほのかに赤く、いぜんとして興奮している。
「やっと興味を持ってくれたのか」
ホームズはワトスンの言葉に満面の笑みを浮かべながら、本棚からシャーロック・ホームズのハードカバー本を取り出す。
「さあ、これを読んで感想を聞かせてくれないか」
「いや、後で電子データで読むから大丈夫……」
「ああ、そうか……本を読むのに慣れていないのか。それなら私が読み聞かせて上げよう」
ホームズはワトスンの肩を抱き甘ったるい声で耳元でささやく。
しかし、その瞬間にドアが盛大に吹っ飛ぶ。ドアは危うく二人に直撃しそうになった。
「おい、てめぇがシャーロック・ホームズか?」
熊の様に大きな女が立っている。黒いシルクハットを被り、長い上着、両腕は義手だ。そして、体はずぶ濡れだが、蒸気が立ち上っている。
「どちら様でしょうか?」
ホームズは表情を崩さずに言う。
「グリムスビー・ロイロットだ。娘がここへ来ただろ?」
「ああ、エレナさんの……お父様と聞きまいたが?」
「うるせぇ。あいつの母親と結婚したんだから、当然だろうが。それよりも、娘と何を話しやがった? 娘と付き合ってるのか?」
ロイロットは一歩前に踏み出しにらみつける。
「いいえ? おいしい紅茶の入れ方について、英国紳士として真剣にお話をさせていただいただけですよ」
「バカにしやがって!このおせっかい野郎が!」
ホームズは小さく笑う。
「ホームズ、このごく潰し野郎!」
ホームズはさらに笑う。
「ホームズ、この三流探偵が!」
ホームズは大笑いする。
「いやいや、ボキャブラリーが豊富でいらっしゃる。でも、私も忙しいので、この辺で。お帰りの際はドアの修理をしていただけると嬉しいのですが?」
「ふざけやがって……いいか、これ以上関わったら……」
ロイロットは暖炉の火かき棒ととると、力を込めてぐにゃりと曲げる。
「こうなりたくなかったら、二度と俺と娘の前に顔を出すんじゃねぇぞ」
そして、それを投げ捨てると大股で出て行ってしまった。
「ワトスン! 見たかね!」
「すげぇ力っすね」
「そうじゃない! 名前だよ、名前! グリムズビーだ! ああ、なんてことだ!」
彼は興奮し、注射器型小型端末をポケットから取り出す。ワトスンは流れるようにその端末を再び奪う。
「グリムズビーって誰っすか?」
「事件の犯人さ! まさか、ここまで偶然が一致するとは……」
ホームズは興奮しぶつぶつ言いながらながら部屋の中を歩き回る。
しかし、急に立ち止まり、PVCインバネコートとをはおり、鹿撃ち帽を被かぶった。
「さあ! ワトスン、はやく行こうじゃないか。どんな形であれ、彼女を助けなければ。ああ、あとドアの修理も依頼しておいてくれ」
ホームズは足早に部屋を出て行った。
「ういっす」
ワトスンは曲がった火かき棒をあっさりと曲げなおすと、元の位置に戻した。
————————————
「ふむふむ、やはりか……」
ホームズは車中で端末に表示された情報を読んでいる。
「やっぱ、あの女が犯人なんすか?」
「ああ、ハッキングした結果、彼女たちが死ねば遺産はすべて彼女が相続することになっているな。経済状態も悪いらしい」
彼はポケットから端末を取り出し、ワトスンがそれを自然な流れで取り上げる。
「ハッキングとか違法行為を平気で話すのはどうかと思うっすよ?」
「何を言う、ハッキングは探偵のたしなみじゃないか」
運転手は何とも言えない顔をしている。厄介な客を乗せたと思っているのは間違いないだろう。
「しかし、惜しい……実に惜しい……」
「何がっすか?」
「これで、ロステック・ジプシーがいれば、舞台は完璧だったのだが……」
「はぁ、そんなもんすか」
ワトスンは興味がなさそうだが、ホームズはその肩を抱き寄せ甘ったるい声でささやく。
「やっぱり、君には一度、私の物語の魅力を語らないとならないようだ」
「セクハラで訴えるっすよ?」
「ははは、半分は冗談だ」
そんなことをしていると、二人を乗せた車は屋敷に到着する。
「どうも、エレンさんはいらっしゃいますか?」
「ああ、ホームズさん!どうぞ」
門が開き、二人は中に入る。あたりは夕暮れに染まっている。しばらく歩いてくると向こうから普通の人間の二倍はあるかと思われる警備ロボット……
「ピー……ガガガガ……イラッシャイマセ……シンニュウシャハ、ハイジョシマス!」
警備ロボはホームズへ向けていきなりの銃撃を開始!彼女の活躍も、ここであっけなく終わりかと思われた。しかし!
「危ないっすね」
ワトスンはホームズを抱えありえない高さに跳躍する。
「所長、ここにいてください。すぐに終わらせるっす」
ワトスンはホームズを近くの木の陰に降ろすと、警備ロボに向かって走り出す。
「ハイジョ! ハイジョ!」
両腕のマシンガンから弾丸がばらまかれる。
しかし、ワトスンは常人では考えられない速度で左右に蛇行し接近!
「チェスト!」
鋭い回し蹴り!
「ピガーッ!」
警備ロボのボディが大きくへこみ、大きく吹っ飛ぶ!
「終わりっすね」
ワトスンの突き出した腕が展開し、現れたマシンガンが火を噴く!
「ピガー!ガガガッ!」
警備ロボはなすすべもなく爆発した。ワトスンは周囲を警戒した。他の警備ロボが来る様子はない。
「ご苦労、ワトスン。いつみても君の活躍は素晴らしいな!」
ホームズが木の陰からは近づいてくる。
「所長もサイボーグ化してみたらどうっすか? いい医者紹介するっすよ」
「いやいや、私は生身の体を大事にしてるのでね」
「そんなことを言ってるっすけど、端子を埋め込んでるじゃないっすか」
「そんなことを話していると、「ホームズさん!」と叫びながら屋敷の方からエレンが走ってくる。エレンに義父と会ったことを伝えると、ひどく驚き。そして、おびえた。GPSや追跡装置の類は警戒できたが、まさか、物理的に後をつけるとは思わなかったのだ。警備ロボットも普段ならあのようなことはないが、義父が設定を変更し、家人以外はすべて攻撃するようにしてしまったらしい。ホームズたちはエレンに連れられて屋敷の中へ移動した。
「なるほど、ここが、お姉さんがなくなられた部屋ですね。少し調査させていただきます」
二人はそのままエレンの姉の部屋へと移動する。アンティーク調の落ち着いた感じの部屋だ。小物や家具なども非常にセンスのいい。
「はい、お願いします。」
「ふむ、シーツなど掛けられていますがこれは?」
「実は父が私の部屋を急に改装すると言い出しまして……」
ワトスンはアンティークな部屋に似つかわしくない。小型ブロックをいくつも組み合わせて作られた悪趣味な絵を見ている。
「なんなんすかね。これ」
「ああ、それは突然、父が買ってきて姉の部屋に飾ったんです。姉もあまり好まない絵だったのですが、父のプレゼントと言うことで断れなくて……」
「なるほど、興味深いですね」
ホームズも絵をじっくりと眺める。
「エレンさん。やはり、私たちが今日到着したのは正解だったようですね。事態は予想よりも急を要しています。私の言うとおりにしていただきたいのですが、よろしいですね?」
「はい、なんでもおっしゃる通りにします」
ホームズはエレンを見つめる。エレンの顔は見る見ると赤くなる。
「私たちが夜、こちらの部屋に伺います。もちろん、正面からは無理ですので、窓からです。そして、その後、あなたには脱出していただきます」
「はい」
「安心してください。貴方の命は必ずやこのホームズが守って差し上げます」
「はい……」
————————————
「ワトスン、本当にこっちなのかね?」
「大丈夫っす。自分の目は暗視機能もついてるからばっちりっす。所長もどうっすか?ちょっとした網膜改造で行けるっすよ……て、ついたっすね」
深夜、エレンの寝室の窓の下に二人は到着する。あたりは真っ暗だ。警備システムには細工をしてあり、見つかる心配はない。
「さて、明かりはついてるっすね。自分が先に登って……」
「キャー!」
エレンの部屋から悲鳴がする。
「所長、先いくっす」
ワトスンは壁を駆け上り、窓を破って侵入した!
「……マジっすか」
なんと!そこにはまだら模様のヘビのようなロボットが今にもエレンを襲おうとしているではないか!
「わ、ワトスンさん!」
「チェスト!」
ワトスンはヘビ型ロボ蹴り飛ばす、しかし!
「マジっすか……」
ヘビ型ロボはいったんバラバラになるも、すぐに結合しなおし元の形に復元する!
一体このヘビ型ロボはどこから来たのであろうか?そう、賢明な読者諸君にはもうお気づきであろう、あのモザイクの絵がロボットだったのである!
「シャー!!」
「くっ!」
ヘビ型ロボが何かを飛ばす!ワトスンは腕で受け止める。その正体は針……そう、このヘビ型ロボットはこの針から毒液を注入し、ジュリアを死に至らしめたのだ!
ワトスンの鋼鉄の腕には通用しない。しかし、エレンに当たれば間違いなく即死であり、ワトスンの胴体や頭など生身の部分に当たれば、それもすなわち即死である。
「シャー!」
ヘビ型ロボが針を連続発射! しかし、ワトスンはすべて受け止める!
ヘビ型ロボがさらに針を発射しようとした瞬間
「うわ!」
窓から何かが飛び込み、破裂。ワトスンの視界と四肢の自由を奪い、ヘビ型ロボットも機能停止する。
「大丈夫かね?」
「所長、電子パルス爆弾なんていつもて来てたんすか!つか、使うなら先に言ってくださいっていつも言ってるっすよね!?」
「そうだね。なぜ持っているかと言えば、英国紳士のたしなみさ。いきなり使用したのは確認する暇がなかったのでね」
「まったく、リブート完了するまで無防備じゃないっすか」
「大丈夫だ。危機は……いや、前言撤回だ!」
大きな地響きが鳴り響く! そして、門の付近、大地を割り巨大な腕が出現する。
<ホームズ! 二度と顔を見せるなと言ったはずだ!>
おお、なんということであろうか!姿を現したのは巨大なまだら模様の猿型ロボットである!猿型ロボからはロイロットの声がする。
「女性を助けるのが英国紳士のたしなみなのでね!」
<すかしやがって……ぶっ潰す!>
彼は銃を抜き射撃! しかし、巨大な鋼鉄の体にはわずかな傷しかつかない。
<グハハ! そんな豆鉄砲でどうにかなるわけねぇだろ!>
ホームズは走る! このままこの場所で戦えば部屋の二人が巻き添えになってしまう。猿型ロボの巨大な腕が迫り、玄関を破壊! ホームズはギリギリで回避!
ホームズはさらに走る! 猿型ロボットの追撃! 追撃! 追撃!
やがてホームズは壁へと追い詰められる。
<さあ、とどめだ!>
猿型ロボットが大きく腕を振り上げる。ホームズは動かない。
<ハハハ! 俺の勝ちだな!>
その長い髪をかき上げながらホームズは笑う。
「いや、わたしたちの勝ちだ」
ホームズの目に映る人影……おお、見よ! 屋根の上、月をバックに、コートをたなびかせる女……ワトスンである!
「行くっすよ」
ワトスンは眼鏡をクイッと直すと、走り出し、大きく跳躍。蹴りの態勢に入った。猿型ロボットは両腕で防御の態勢をとる。
ワトスンの足が展開!ブースターが現れる!
「チェストォォォォォ!!!」
叫び声とともにブースターが点火!そして、弾丸のごとく猿型ロボットに襲い掛かる!
猿型ロボットは腕で防御……しかし、その装甲は紙のごとく突き破られる! ワトスンは着地し、眼鏡をくいっと直すとホームズを抱えすぐさま離脱!
<ば、馬鹿な! こんなことがぁ!!>
直後、猿型ロボットは大爆発し、炎に包まれる。
「所長、これで終わりっすかね」
「ああ、そうだ。できれば平和的に解決したかったわけだが……因果応報というやつだ」
ホームズは注射器型の端末を取り出し、ワトスンはそれを流れるように奪う。
「こういうとこではやめて欲しいっす」
「ふぅ、仕方ない。どこかゆっくり二人きりの場所でやるべきかな?」
「セクハラで訴えますよ?」
~完~
自称シャーロック・ホームズの冒険 鶏ニンジャ @bioniwatori
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