第2話「仁義なきたまごボーロの戦い」

たまごボーロだった。


それはたしかに。


あの、たまごボーロであった。


最初はカリッ、口に入れるとフワッと溶けて、口いっぱいに甘さが広がり一瞬で幸せな気分に満たされる今なお数多くのユーザーから愛されてやまないあのたまごボーロだ。


良夫は自分の目を疑った。自分は何か悪い夢でもみているのではないかと。


「どりゃぁぁぁぁぁぁ」


「うわあぁぁぁぁぁぁぁ」


確かにそれは声だった。


たまごボーロと思わしき小さな生物たちはおもいおもいに叫び声をあげながらお互いを傷付けあっていた。


しかし、彼らはまだ良夫の存在には気づいていない様子。


良夫は状況も呑み込めないまましばらくその戦争をじっくりと観察してみることにした。


よくよく眺めてみると彼らにはその小さいな体に見合うだけの小さな手足が人間と同じように生えていて、各々が剣やら盾やらこれまた小さな武器を手にしている。


「かっこいい…」


思わず良夫は心の声をこぼした。


その瞬間。


「ズドォォォォン!!」


一人、いや一つのたまごボーロが両腕でかかえたバズーカを放った。ちなみに先ほどの効果音はそのたまごボーロが自分で口にしていたものである。


そして不運にもその延長線上にいたたまごボーロたちがバズーカから放たれた砲弾によって粉々に砕け散っていくではないか。


なんたる醜悪!!


しかしこれが戦争なのだ。現実はあまりにも辛い。


そして何やら遠くの方で動きがあった。


目を凝らしてみれば、1つの大きく透明なビニールパックを数十人のたまごボーロで持ち抱えながら敵のたまごボーロを一網打尽にしているではないか!(正直良夫にはこの時点でどれが敵か味方かとかチーム分けという概念は全く区別できなかった。)


「助けてくれぇぇぇぇぇ!!!」


そう叫ぶたまごボーロたちの声もむなしく、捕らえられたたまごボーロたちはすでに透明なビニールパックに閉じ込められてしまった。


そして次の瞬間。


良夫は目を疑った。


さきほど敵(と思われる)たまごボーロたちをパックしたたまごボーロたちが、今度は大きな麺棒を持ち出してその中にいる捕らえられた捕虜たまごボーロたちを慈悲もなく何度も粉々に叩き潰していくではないか!!!


なんたる外道!


ゲスの極み。


人として。いや、たまごボーロとしてあるまじき行為だ!。


粉々に砕け散っていくたまごボーロたちの叫び声は虚しくも麺棒によって叩きつける音と無情なまでにそれを楽しむたまごボーロたちの笑い声にかきけされていく…。


「ひどい…こんなことって…」


良夫がそう呟く間もなく、仕打ちはまだ続くのだった。


「…!!」


今度はその粉々になったたまごボーロだった残骸たちが入ったビニールパックの中にどんどんミルクと思われる液体が流し込まれていく。


良夫は口を手で覆った。思わず目をそらしたくなる光景だ。


「このままオーブンで焼き上げればお前らも立派なクッキーさ!!はははは!」


そいつらの理屈はよく分からなかったが、良夫は悲惨なたまごボーロ戦争の現状を目の当たりにして声を失った。


そうして思うのだ。


「マジでここどこなんだ…」

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